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【完結】国立第5魔導研究所の研究日誌  作者: 九条美香
新人魔導師、研究発表会の準備をする
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同日、女子会

 結局、その後にカラオケにも行ってみたものの、天音には歌える曲がほとんどなかったので聞き役に徹していた。後は定期的にタンバリンを叩いていただけである。2、3曲、双子が歌っていたのを思い出して歌ってみたが、さほど高い点数は取れなかった。


 17時ごろに研究所に戻ると、由紀奈を始めとする女性陣に引きずられ、1番近いトレーニングルームに連れて行かれた。何故か恭平も別の部屋に連行されていた。


「で、どうだったの? 何したの?」


 尋問でも始まったのかと思った。天音は由紀奈、雅、葵、双子に囲まれている。少し離れたところで、夏希が申し訳なさそうにこちらを見ていた。


「悪ぃ、止められなかった」


 止められなかったとは。今のこの状況だろうか。よくはわからないが、由紀奈たちの「答えて」という圧に耐えかねた天音は、素直にゲームセンターとカラオケに行ったことを話した。


「デートプランとしては間違い」

「何普段どおりにしてるの」


 双子が何やら怒っているが、天音は楽しかったので問題ないと思う。行ったことのない場所だったので新鮮だった。だが、気になることが1つ。


「デート……なんでしょうか」

「デートじゃろ」


 雅が即答した。今朝特に何も言わなかった彼女だが、気になってはいたらしい。普段より前のめりで話を聞いている。


「このぬいぐるみ取ってもらったの? なんだか青春って感じする!」

「リトモリは服とメイク褒めてくれたッスか? え、ノーリアクション? ダメッスねー」

「おい、もうやめてやれよ……」


 他の女性陣の勢いに負け、止めようとする夏希が疲れ果てている。魔導や戦闘なら負けなしの彼女にも、苦手なものはあるらしい。


「ドキドキした?」

「恭平のことカッコよく思えた?」

「楽しかったですけど……ドキドキ、というのはよくわからなかったです」

「お前、律儀に答えなくていいんだぞ」


 質問に答えていく天音に、夏希が庇うように言った。だが、周りの女子の勢いには敵わなかった。


「また行きたいって思った?」

「手とか繋いだんスか?」

「告白はされたのか?」

「え、ええと……」


 また行きたいか。そう問われれば、答えはイエスだと思う。手は繋いでいないし、告白なんてされてもいない。次々に来る質問に、天音は疲れ始めていた。


「リトモリのコト、どー思います? 一応、顔はイケメンだと思うんスけど。才能もあるし、稼ぎもいいッスよ。あーでも、背が自分より低いのがちょっとマイナスッスかねー」

「わ、私よりは高いですし! 問題ないですよ!」


 思わず反論してしまった。すると、あちこちから朝のような生温かい視線が向けられる。ニヤニヤと笑って、楽しそうだ。


「ほうほう」

「うんうん」

「そうだね」

「くく、必死じゃな」

「18歳だもんね。まだ伸びるよ」

「お前ら、ホントにもうやめてやれよ……」


 確実に面白がっているであろう周囲を、夏希は止めようとしている。普段ならば彼女の言うことを素直に聞く由紀奈たちだが、今日この時ばかりはそうもいかなかった。


「恭平は天音のこと好きだと思う」

「ね。態度に出てるね」

「今日着てたの、前に1番気に入ってるって言ってた服ッスよ」

「なんで知ってんだよ、お前」


 もう止めることを諦めた夏希が、怠そうにツッコミを入れていた。


「しかし、帰りが早すぎはしないか?」

「あ、確かに。もっと遅いかと思ってました!」

「初デートだからかの。次はもっと遅くなるじゃろう」

「きゃー!」


 何故か由紀奈が楽しそうだ。この場のノリについていけていないのは、天音と夏希だけである。


「あ、あの、次とかはないと思いますよ?」

「いやー、あると思うッスよ? 今頃男子側で反省会してると思うッス」

「反省会?」

「今回のデートの反省ッスよ、もちろん」

「そんなことしてどうするんですか?」

「次回に活かすんじゃろ」

「次は何するのかな? 鉄板なのは映画とか?」


 あまりにも周りが盛り上がっていくので、怖くなった天音は助けを求めるように夏希を見た。そっと首を振られる。諦めろ、そう聞こえた気がした。


「次はいつ頃だろう」

「それまでに新しい服を買おう」

「化粧品も買わなきゃですよね! 天音ちゃん、最低限度のものしか持ってなかったから色々買わないと」

「水色の服にしてやろうぞ、あやつの魔力の色じゃ」

「じゃあメイクもそれっぽくしよう」

「恭平をドキドキさせなきゃ」

「いっそカラシに服作らせます? あーでも、他の男から貰った服はダメッスねー」


 会話って、こんなに大変だったっけ。天音は宙を見上げた。思考を放棄して今すぐにでも部屋に戻りたいところだ。


(次……あるのかな……)


 そう思って、次の瞬間自分自身に驚いた。何を期待しているんだろう。恭平は、天音が仕事ばかりしないように、息抜きとして誘ってくれただけなのに。他の人がデートだなんて言うから、勘違いしてしまった。


「わ、私、部屋に戻りますねっ!」


 会話が途切れたタイミングを見計らって、天音はトレーニングルームを飛び出した。仕方ないので解散となった部屋の中で、夏希がほっとしたように息をついていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 女性陣楽しそうでしたね〜 研究や戦闘で殺伐としたお話も多いので、私も楽しかったです♪ 天音ちゃんには申し訳ないですが…(;^ω^) [気になる点] 「カラシは服とメイク褒めてくれたッスか?…
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