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ショートショート4月~3回目

心霊写真の撮り方

作者: たかさば

 スマホ・デジカメが一般的となりました昨今、思うように心霊写真が撮れないとお嘆きのあなた!!

 本日はとっておきのテクニックを教えて差し上げようと思いまして、伺った次第でございます。


 どうもどうも、私、心霊写真の撮り方を伝授しております、名もなき者です。


 怪しいですか?すみませんねえ、私、人ではないので、仕方がないんですよ。

 あーあー、驚かなくても結構ですよ、私別に驚かせたいと思っておりませんので!

 まあ、気軽に聞いてってくださいよ、きっとあなた、満足されると思いますよ!


 本物のオカルト体験、したかったんでしょう?

 本物のおばけ、見たいんでしょう?

 本物の心霊写真を撮って、世間をアッと驚かせたいんでしょう?


 まあ、まあ…、そう硬くならずに…硬くなるのは死後だけで十分ですから。

 ええ、ええ…、リラックスしてお聞きください、魂が抜けない程度に。

 お時間は取らせませんから安心してください、ちょっぱやでお話させていただきますね。


 そもそも…心霊写真が衰退してしまった背景をお知らせしなければなりませんね。


 一時期あれほどまでにブームになった心霊本、今や古本屋ですら見かけない有様です。

 一時期あれほどまでにテレビで特集していた心霊番組、今や動画チャンネルですら再生回数が伸びない有様です。


 なんでこのような悲劇が起きてしまったのかと言いますと、ひとえにカメラの性能が上がりすぎてしまったという事に尽きるのであります。


 文明の利器というものは、大変に便利ではありますが、写さなくてもいいものまで写してしまいますのでね。


 おかげで、ぼんやりとしか見えていないものが、くっきり写るものの影に隠れてしまうようになりまして。

 ああ、ちょっと理解し難いかもしれませんね、実は幽霊というものは、ピントが合わないからこそ捉えることができる代物なんですよ。


 そうですね…例えるのであれば、ボトルキャップアート、アレに近しい感じですね。

 ボトルキャップの模様にピントを合わせると、大きな絵が見えてこないような。

 ええと…モザイクアートって言うんでしたっけ?

 多数の写真をモザイクのように組み合わせて作成した巨大な絵画ってあるじゃないですか。

 ああいった、ピントを合わせる微妙な匙加減がねえ…心霊写真を撮る唯一の方法だったんですけれども。


 今は自動で、きっちりと被写体にピントを合わせてしまうでしょう?

 そうすると、ただでさえ薄い存在が完全にスルーされてしまって、全然画像として捉えられなくなってしまうんです。


 まあ、だいたいからして、写るわけないんですけどね、そこら辺の貧弱なカスなんかが。

 そもそも自分なんか誰にも認識されてね―しって腐ってますからね、本来ならば写るはずもないんですよ。


 だから写真に写れた時、喜ぶような程度のひっくいのがわんさかいてねえ…。

 昔はわりかし、こういうところで不満を解消して消えちゃうのもいたんですけどね。

 お祓いなんかしてもらった日には、ヒャッホウ構ってくれたー、俺見捨てられてない、うれしーよーってね!


 まあ、とにかくですよ、このところ、自分を見て怖がってくれるという喜びを得ることができない輩が増えましてね。


 あっちにフラフラ、こっちにフラフラ、中途半端な乗り移りなんかして、生きてる人に取り込まれちゃって、わけのわかんない人格形成の一端を担っちゃってんだから世話ないですよ。

 微妙なところで毒された人間がこれまた中途半端に世を恨むようになっちゃって、でもってへっぽこ悪霊の爆誕ですよ、たまったもんじゃありません。

 ま、悪いスパイラルを少しでも減らせるのであればと思いましてね、心霊写真愛好家の皆様にお伝えしようと思ったのです、はい。


 まあ、四の五の言ってるのも面倒ですよね、撮り方をさくっと教えますね。


 まずは、デジカメをぶっ壊しましょう。

 ピント合わせ機能を働かせないように細工します。

 そしたら次に、そこら辺を歩いている人を撮りましょう。


 ぼんやりしてるのが写ったら、それは心霊写真です。

 くっきりしてるのが写ったら、それは心霊写真です。

 おかしなものが写ったら、それは心霊写真です。

 気持ち悪いものが写ったら、それは心霊写真です。

 なんか写ったら、それは心霊写真です。


 ふざけてなんかいませんよ!!

 確かに心霊写真は撮れるんです!!


 ただねえ、マニアの方たちが喜ぶようなものは、撮れないかもしれないですねえ。

 ここらへんにうようよしてるのは、みんなぼんやりした腐れ幽霊ばかりなんでねえ。


 くっきりはっきり見えるような高尚な霊はね、もうとっくの昔に立派な悪魔になってたり天使になってたり、己のゆく道を自覚して生まれてったりしてるんでねえ、いないんですよ、ええ。


 昔から本物の心霊写真って、蔑ろにされてきたんですよね。


 写りが悪いとか、フィルムが痛んでたとか、薬剤が古くなってたとか、光が入ったとか…おかしな理由を付けられて、ぽいぽい捨てられてましたからねえ。


 でもって、全然意味のない細工写真ばかりが崇められてねえ。


 おかしなものですよ、偽物ばかりが求められて奉られて。

 まあ…人間って、そういうものなのかもしれないですけどね。


 人間って、偽物ダイスキじゃないですか。


 偽物の砂糖、偽物の肉、偽物のエサ、偽物の造形、偽物の記憶、偽物の友達、偽物の世界、偽物が本物とされる常識。

 食べ物のふり、薬のふり、生物のふり、学びのふり、正義のふり、弱者のふりに、分かったふりという諦め。


 本物なんてね、意外とつまんないもんなんですよ。


 あなたも怨霊になったらしみじみと思うはずですよ。

 こんなはずじゃなかったってね。


 ああ、あなた今死んでもすっからかんのスケスケのぼんやりとも写らないみじめな感じになるんで、早まるのはやめた方が良いですよ?

 まっとうに生きて最後まで頑張らないとめちゃめちゃ後悔する事になるんで、…ええ。


 まあまあ、そう落ち込まずに、前向きにいきましょうよ。


 偽物の方が持て囃されるんだから…画像加工アプリとか学んだ方が良いと思います。


 今だったら、めちゃめちゃ怖い画像とか動画、作れるじゃないですか!


 大丈夫ですよお、生きてればパソコンもカメラも使えるじゃないですか!


 嘘なんてついてなんぼ、人なんて誤魔化してなんぼですから!!


 私ね、すごくいいアプリ、知ってるんですよ。


 どうです、インストールしてみません?


 すごくいい心霊写真が撮れること請け合いですよ?


 大丈夫ですよお、誰にでもできますから!


 このアプリはね、いい加工ができそうな場所を検索して、教えてくれるんですよ。


 …ほら、あのがけの所なんか、良さそうな写真が撮れそうだって、出てるでしょ?


 もう少し近づくと、臨場感あふれる写真が、撮れますよ……?


 あと一歩前に…、ええ、大丈夫ですよ・・・


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― 新着の感想 ―
[一言] あと一歩前に進むんですか、はい。わかりました。 じゃあ、進みますね……。あっ……。
[良い点] 私と知人が同じ被写体をスマホの内蔵カメラで撮りました。 なぜか知人のスマホで撮ったものには、奇妙な白い影が映りこんでいます。 恐ろしいことに彼はスマホを買ってから内蔵カメラのカバーフィルム…
[一言] ひとつ、経験に基づくアイデアを提供します。  まず、周囲に漂っている怨霊を思念します。そして、右手人差し指の先端に思いっきり怨念を込めます。次はそこに、べろべろの舌で舐めます。さらに、その部…
感想一覧
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