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5.「導きの勇士」~試練のダンジョン~

今回は第三者視点です。

 「導きの勇士」――タルカー司教によってそう名付けられた〝勇者〟パーティは、目下思わしくない状況に直面していた。


 案内人の不手際――註.勇者パーティ視点――からゾンビとスケルトンの集団に襲われる羽目になり、ささやかな犠牲――註.これも勇者パーティ視点――を払って脱出できたのはまだしも……



「ここがどこだか判らないと……」

「闇雲に走ってきましたからねぇ……」



 ――世俗的にはこういうのを「迷子」と言う。



「まぁ、このダンジョンは下に行くにつれて難度が上がってくる仕様です。魔力の濃度を確認すれば、上の階なり下の階なりへの通路は発見できる筈です」



 したり顔でそう述べるのは「聖魔術師」のジョス・ゾールマン。大局的には彼の言うのも間違いではない。

 だが、ここ「試練のダンジョン」は、その名のとおりダンジョンである。魔力の(よど)みなどあちこちにあるし、強い魔力を発する魔物も少なくない。

 そういった局所的な魔力の偏在と、階層全体としての魔力の濃度勾配を区別するためには、本人たちの経験値もしくは経験を積んだ助言者が不可欠なのだが……今現在彼らに足りていないものが、まさにその二つなのであった。



・・・・・・・・・・・・・・・・



「畜生っ! また罠か!」



 飛来する毒矢を剣で叩き落とした「勇者」ことバーク・チェタラーズが、さも忌々しげに罵る。身体能力に最も優れた彼がパーティの露払いを務め、作動する罠を力任せに解除して進んでいるところである。……()(かい)ではこういうのを、「(おとこ)解除」と呼ぶらしいが。



「それにしても罠が多い……と言うか、()くもそれだけ引っかかるものね?」



 やや高飛車な中にも呆れを(にじ)ませてコメントしたのは、「聖女」ことシヴィア・タルカーである。ちなみに、高飛車なのは彼女のデフォルトであり、特に悪意や(そこ)()があっての事ではない。



「そう言えば……そもそものきっかけは、バークが警報トラップに引っかかった事だったな」

「【気配察知】のスキルは使えないんですか?」



 「聖騎士」ことエイブラール・ノルキンズと「聖魔術師」ことジョス・ゾールマンの指摘に、勇者バークは不機嫌そうに答える。



「あ? 仕方ねぇだろ。【気配察知】は罠相手には効かねぇんだよ。そう言うジョスこそ、魔力か何かを感じ取れねぇのかよ?」

「魔力を使った罠であれば、【魔力察知】に反応がありますけどね。単なる機械的な罠だと反応しないんですよ」

「それでも、魔物の存在は感知できるのだろう? 奇襲を受ける事は避けられるのではないか?」

「これでも間欠的に【魔力察知】を使ってるんですよ。これ以上の頻度で使用すると、万一の時に魔力切れという事態になりかねません」



 「勇者」と「聖魔術師」のスキルが警戒に向かない事を知り、「聖騎士」はやや(いら)ついたように鼻を鳴らした。――が、それ以上の非難をしなかったのは、この方面では自分も同じように無力である事を理解しているからである。



(……あのコソ泥を始末したのは早まったか。さも容易(たやす)げに進んでいたから、簡単だと思っていたんだが……)



 死霊術師(ネクロマンサー)だという若い男が、少し前までパーティの斥候役を努めていた。何のトラブルも無くスイスイと進んで来たのだが、どうやら魔物や罠との不要な遭遇を、徹底的に回避していたらしい。「試練のダンジョン」などと呼ばれているにしては、随分と(ぬる)いダンジョンだと思っていたが……忌々しい話だが、あのコソ泥がそれなりに有能だったのは認めざるを得ないようだ……


 四人は(しばら)く四階層を彷徨(さまよ)っていたが、往きにエルメントが残した目印を偶々(たまたま)見つけた事から、残念だがこの場は撤退しようと話が(まと)まる。



「……俺たちだけで五階層に行くのは無理か……」

「……初依頼は失敗という事になりそうね……」

「仕方ありません。ダンジョンの攻略には斥候職が必要だという事を確かめられただけでよしとしましょう」

「そうだな。次はもう少しまともな案内役を雇って、再度挑戦すればいいだろう」

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