数字の扱いが雑すぎるひとの話。
反社会学講座という本をご存知でしょうか。社会学を皮肉で語ってる本なんですけど、その本によると社会学者は自分の思いつきを真実だと言い張るべくそれっぽいデータを集めて本を書いて金を稼ぐみたいなところがあるらしいです。こんな形であの本に納得はしたくなかった。
ラノベ衰退していたらしいですね。あまりにも根拠の出し方が雑すぎてびっくりしましたが。
ラノベは15年ずっと同じとかも納得はしにくいですが、そこは個人の感性ですからね。美少女が出て主人公の周りに異性が沢山みたいな点は変わってないよねみたいな話でしょ?
何を言いたいかって、データをあまりにも恣意的に持ってきているように見えることです。
あまりにも数字の力にこだわり過ぎてて、肝心の数字の解釈や出し方が滅茶苦茶だという点では所謂社会学者よりなお良くないと言えるかもしれない。社会学って現象の結果として出る数字に解釈をつけてくみたいな学問の面もあると思うんですけど。
例として。ラノベ業界は96年には700億円規模だったのが2015年350億、理由は出版市場が半減してるから、あと少子化。よって今の市場は衰退しているということらしいです。これは本当に酷い、無茶苦茶な論理だと思います。
何が酷いかって、まず96年と15年の売り上げを比較した場合出版市場全体で見てすら半減はしてないです。多分2018年と比較してます。紙だけで見ても半減とまでは15年当時はいってないですし、電子も見たらなおさらです。
次に、書籍だけで売り上げを見た場合減少率はより下がります。出版不況で雑誌がすごい勢いで減ってるって聞いたことあると思いますが、その通り売り上げの減り方は雑誌の方が上です。ラノベは一般的には書籍に含まれると思うんで、書籍の減り方でもって96年の売り上げを出すべきでは無いでしょうか?なんなら文庫が一番売れたのは06年なんでラノベを文庫本として定義した場合06年がピークだったとも書けます。
で、そもそも減り方ないし増え方は全体の動向に引きずられるとは限らないってのも無視してるか理解してないんですね。例えばビジネス書はプレジデントオンラインによると04年からの平均の減り方以上に落ち込んでますし、ガジェット通信さんによると児童書は06年から17年にかけて12%増えています。これはまた少子化にも関わらずという事ですので、少子化や出版全体の落ち込みがジャンルの売り上げを推定するのにあんまり役に立たないという事はよくわかると思います。児童書も少子化で対象の読者となりうる数は減っていると書けるはずですからね。この間に出版業界が再拡大したとか日本が少子化を克服したって話を私は聞いたことがないです。
と言うわけで、多分ですけど96年のラノベ的なもの業界の規模は誰もわからないってのが正解でしょうし、そう書くのが誠実でしょう、どう考えてもね。
じゃあラノベは衰退してないの?と言われるとそれはまた微妙で、96年強かった説自体は案外馬鹿にできなかったりもします。なんでかって言うと06年の日経BPにおいて当時の電撃の前編集長がラノベは10年前が一番勢いがあったと述べていたり、昔の方が一冊あたりの部数は多かったみたいな事も述べているからです。
06年の時の話なんで現在と比較するとまた違うんですが、一つの山が96年頃にあったことは確かなんだと思います。スニーカーの人は06年でも今の方が売れてると言ってたみたいですが、ハルヒがあったからなんとも言い難いし。でもそうだとするとこよなく愛す90年代ファンタジーは一回世間に見捨てられたことになるのでは……?90年後半はタケノコのようにできたファンタジーレーベルが淘汰されたみたいな時代でもあったようですし。あ、でもこの歴史は韻を踏みそう。
で、こう言う根拠を出せばいいのに数字を無駄にこねくり回してそれっぽく見せるって言うのははっきりいって私は嫌いですね。でもこの場合90年代後半からどん底を見たラノベは復活しつつはあるって結論になる気はするけど。
まぁ、彼の場合数字をなるべくインパクトの高いように出す仕草にあまりにも染まってるのはあると思います。
軽自動車は89年乗用車扱いは50万台で商用車が100万台だったのにいまは乗用車が圧倒的だといってるエッセイもありましたが、4ナンバー、つまり商用車扱いで税金とか安く済むし二人乗りならそんなに苦じゃないと言うことで大流行してたボンネットバンは現実には乗用車として使われてたんだから50万台しか乗用車として使う軽が売れてないわけでは無いと思う。そもそも100万から20万台って推移の数字がわかんないし。全軽自協のページで89年に100万超えてる項目は一つしかないけど、その項目今も50万くらいあるからなぁ。グラフをご覧くださいって書くならどこのグラフを見ればいいかも書くべき。
中国では反日だから日本車より韓国車が売れるんだ、それ10年前の話で去年はトップ3はVW、ホンダ、トヨタの順だろとか、300万台は中国が現代優先すれば簡単に埋まる台数ってトヨタの分全部現代にあげても届かねーよとか、去年貿易赤字が出た時中国が物買ってくれないからだからってその期は対中貿易は好調だっただろとか。探すとまだまだありそうだけど面倒でしかない。今年は対中も減少っぽいから現実が合わせに来てよかったね。
社会学徒ってそう言う風になっちゃうところあるんですかね?社会に起こってる現象の原因のほとんどを日本の国力低下に結びつける、あるいは数字を作ったり解釈を適当にして理由をつけるのが社会学的考察なんでしょうか。そうじゃないって思うし、信じたいけど。もう少し数字に真摯になっても良いと思うな、せっかく大学出たんだし尚更ね。
反社会学講座はホームページに昔のバージョンが読めるからググると面白いかも。