ロウムの怒り
近づく者がいなければ、次第に怒りもおさまるだろう。そのもくろみは外れた。土偶の目が赤く光り出し、島の周囲に赤い帯が広がる。
「ロウムの怒りじゃ。口先だけの心のこもってない歌では、かれらの怒りは鎮めることはできん。」
アメリカの先住民であるホピ族の老人が語った。
土偶達が進軍を始めた。彼らは都心に向かって真っ直ぐ進んでくる。東京湾の入り口である、横須賀では自衛隊と米海兵隊が待機している。海上を近づきつつある土偶軍に、都心の人々は逃げまどった。あるものは、関西へ、あるものは東北へ。
しかし、それだけで安心でるるものでもなかった。都心の機能停止は、日本の株価を下落させた。日銀がかいささえるのもすでに限界に来ていた。政府がひた隠しにしていた経済の実態が世界にさらけだされた。
「原発事故で大地を汚したことへの、たたりじゃないのか。」
「おごれるものも久しからずや。」
ついに、自衛隊は、
「威嚇砲撃用意!」
との、指示をだした。これ対し、米海軍は、
「砲撃用意!日本が撃ったら、かまわん、なぎはらえ!」
と、異なった指示がでていた。
そのころ、世界中のメディアで流れ始めた不思議な映像があった。それは、色々な人々の祈りの光景が混じっていた。アイヌ、琉球、チャモロ、マサイ、アボリジニ、ハワイ、チェロキーなど様々な国の先住民族たちの祈りの映像だった。それに、あの死海でみつかった歌が添えられていた。
だれが始めたのかはわからなかった。世界の終わりと思った者の仕業だったのか、それとも差別による迫害を抗議するためのものだったのか。ただ、祖国をなくした彼らだからこそ、あの歌詞が生きてくるのだろう。
それは見る人々の涙を誘った。
「おお、彼らの怒りが消えていく。」
土偶の目から赤い光が消えた。歩みを止めた彼らは海の中へと沈んでいった。
「ただ、春の夜の夢のごとし。」




