南海の攻防戦
「これは日本の生物兵器による、わが国に対しての戦線布告である。」
真っ先に中国から抗議があった。
「野生生物との接触事故でしょ。」
「住民登録されているということなので、日本人のしわざということになる。」
「東京都の住民というわけで国籍があるわけではないので、日本人とはいえません。」
事故で片付けた政府との意見が対立する。そうなると、普段は仲の悪いアメリカとロシアも黙っていない。
「国連の調査団の派遣が必要ですな。」
「いや、日本国内に基地のあるアメリカなら領海侵犯にならずに活動できます。」
こうなると韓国も
「隣国の日本の有事。黙ってみているわけにはいきませんよ。」
と、いつもの隣のドロドロな関係は微塵もない。
「アメリカこそファースト、一番乗りだ!」
「そうだ、今思いついたんだが、南硫黄島で北方四島について話合うというのはどうだろう。」
「わが国からの漂着物があるというなら、撤去しにいこうじゃないか。」
どの国もなかなかしたたかだ。しかし、それ以上に国会議員たちは
「日本人を危険な場所にいかせるわけにはいかない。」
「領土問題は解決します。」
「無償で、ゴミを撤去してもらえます。」
などと、国民に都合よく意訳して回った。
外国の手を借りてでも手柄がほしい政治家と、借りを作りたくない役人との攻防戦が続く中、水竜のリヴァイアサン。土竜のカメ、火竜のガルダによる竜巻が近づく船を沈めていく。雷獣はイカヅチを落とす。鉄でできている船は雷で炎上することはないが、内部の電子機器はダメージを受けた。
「若干の負傷者はいますが、いまのところ死者は確認されていません。」
各国とも困惑した。死者が出れば、色々文句のつけようもあるが、竜巻や接触によるいわゆる事故のような状況では無理ができない。
「せめて、公海上であったら。」
「なんで、よりによって日本なんて『決められない国』にいったんだ。」
日本のことなかれ主義にはばまれ、世界の苦悩はしばらく続くこととなった。




