表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死の獣  作者: 明日香狂香
6/65

復活の儀式

 二人は、そっと神殿へと忍び込んだ。幸い、神官たちは、復活の儀式で忙しかった。儀式の最中は、神殿に近づくものなどいない。さらに、視察に出た皇帝に同行して多くの衛兵が留守だった。そのため、警備は手薄だ。吹き抜けの2階へ静かにあがると柱の陰に隠れながら、近づけるだけ祭壇へと近づいた。部屋の奥に、ハデスの巨大なむくろがが横たわっている。その両脇には獣の屍。一体は熊。もう一体は鹿。そして、中央には人の子ぐらいの大きさはあろうという黒い巨大な鳥の卵が置かれていた。


「あの卵は、まもなく孵化する。その時、獣達の力をその身に宿す。」

 宰相はアキにそっと耳打ちをした。不思議な香の香りとともに、神官たちの祈祷は続いていた。三体の獣たちから赤い血が細い溝の中を卵に向かって注がれている。ハデスの体には巨大な黒い鎖が巻き付いていた。神官たちはそれらを解くと、卵の周りにかける。やがて、鎖の色が薄くなり、半透明になった。

「鎖はやつが生まれると術によってその心臓を縛り付ける。完成すれば、見えなくなる。その前に助け出すしかない。騒ぎになれば衛兵たちが駆けつける。わしは、表で彼等を引き止めよう。」

 エダはそういい残すと、神殿の外へ向かった。


 卵は獣達の血をすって、下から徐々に赤みを帯びてくる。やがて、その赤が頂点に達すると、神官たちの声が大きくなった。

「コツ、コツ。」

 卵の脇に、黒いとがったものが中から突き出した。くちばしだ。卵の表面にひびが広がり、黒い毛のようなものが穴から見え隠れする。

「今だ!」

 アキは二階の柱に賭けたロープに捕まると、祭壇の中央へと飛び出した。そのとき卵のからがわれ、なかから真っ黒な毛に覆われた鳥のヒナが現れた。彼は、生まれたててずぶぬれのヒナの前に降り立った。普通の鳥ならまだしばらくは目を開かぬであろうが、そのものはゆっくりと両目をあけ、自分の前にすっくと立つ男を見つめた。

「キョエアー」

 するどい鳴き声を発するとゆっくりと立ち上がった。みるみるうちに体が乾く。成長が桁違いに早い。


 神官たちは、一体何が起こったのか戸惑った。本来であれば、鎖を締め付けるはすである彼等は、腰を抜かしわれをわすれて呆然としていた。ヒナはまだうっすらと見える鎖をすり抜けると、段の下へと降りた。神官たちは、逃げ惑う。ヒナは動くもに興味をもち、その鋭いくちばしで突っつく。


 逃げ惑う神官たちを尻目に、アキは出口へと走った。そして、ピーと鋭く口笛を吹いた。その音に、ヒナは気付き急いでアキのほうによろけるように進んできた。それを見るとアキは神殿を飛び出し街とは反対の砂漠のほうへとヒナを従えかけていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ