無知の選択
キリシエと諸外国の国交が盛んになると、ある噂が広がってきた。
「キリシエには超兵器シジュウというものがあるらしい。そのようなものを持つ国と交易をしてよいものか。」
貿易大国アベリカは、シジュウを放棄しないなら制裁が必要だと声高に叫んだ。
「死獣は死んだことになっているではないか。なにをいまさら言いがかりを。」
将軍は怒ったが、まやかしの視察程度でごまかせるものではない。
「アキンドロスを使節団団長として海外にやり、その間に死獣を始末してはどうか?」
「いやいや、失敗すれば国が滅びる。いっそ、両者とも国外退去にしてはいかがか。」
将軍もミックもアキをかばったが、アベリカの制裁の前に、ついに経済が疲弊し始めた。腹が減っては、民衆もだまってはいない。
「アキよ。残念じゃが、まだこの国はよそものに寛容ではない。やつを連れて密かに出国するのだ。」
ミックは、交易船に乗せてアキと獣を国外へと逃がした。
こうして、シジュウという脅威が消えたことで、やがてアベリカに侵略されるまで、人々は一時の太平に酔うのであった。
その後、アキと死獣ハデスは海を渡り、アシフトに入った。巨大な石が何層にも平積みされたヒラツミドウという建物のある国だ。
「おれに似た像があるな。」
半人半獣の像が彼らを出迎えた。この国では、これらの半獣が、神の使いとも、冥府の番人ともいわれてあがめられていた。ハデスを見た人々はかれらを神の使いとして丁重に扱った。
しかし、それも長くは続かない。キリシエから出た彼らはロウムから追われる身にもどってしまっていた。ロウムのアシフト進攻がはじまる、ほんのひと月前のことだった。




