幽閉
その後、アキは皇帝エイブラハムによって反逆者として、闘技場の地下に幽閉された。
「おまえもつくづく馬鹿だな。」
そこには、あの化け物がいた。
「わたしは、わたしの心に正直に生きただけだ。それが、愚かだというなら言わせておけばいい。」
「なるほど、勝てなかった訳がわかった。お前には恐れがない。それは、私欲がないからだろう。恐怖や欲望というものは、目をにごらせ、剣を鈍らせる。そして、われに心を食われるのだ。最後に1つ聞いておきたい。お前は、どうして戦う。」
「わたしは、自ら望んできたわけではない。連れて来られたのだ。私が死ねば、また別の誰かが連れてこられるだけだ。」
そういって、彼は歌を歌いだした。
我等の国は消ゆれども、我等の誇りは失わず。
己のために生きるより、友のために生きて行こう。
愛する者がいるのなら、
愛してくれる者がいるのなら、
君には生きていく価値がある。
両目の光は失えど、希望の光は失わず。
意地を張って生きるより、家族のために生きて行こう。
したう者がいるのなら、
したってくれる者がいるのなら、
君には生きていく意味がある。
体の自由はきかずとも、心の自由は失わず。
命の炎がつきるまで、心のままに生きて行こう。
信じる者がいるのなら、
信じてくれる者がいるのなら、
君には生きていく理由がある。