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死の獣  作者: 明日香狂香
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詭弁

 ロウムでは、港の新設のために、大掛かりな埋め立て工事が始まった。西のヘヤコと東のタナコ。今度は猟師たちの抵抗が始まった。ヘヤコの海は暖かく、人魚が住むという伝説があった。一方のタナコは遠浅で、豊かな干潟が沖まで続く。どちらにしても、難工事であった。予算は青天井に膨れ上がる。喜んだのは、工事の事業者である。国からは言い値の支払いが、労働力はキリシエと停戦によって余った兵士が軍から提供される。


 皇帝の短気のせいで、急遽きまった港の建設のために、宰相をはじめとする役人たちは説明に追われた。

 ヘヤコでは、埋め立て反対の大規模な抗議運動が起こった。タナコでは、海をせき止め干潟から水を抜くための水門工事が行われた。

 タナコでは住民の意見がまとまらなかった。それは、遠浅の海は豊かではあるが、津波の危険があったからだ。水門が防潮してくれれば、安心して暮らせる。底の深い場所に港ができれば、大型船が入ってこれるようになり、街が繁栄する。推進派と反対派がぶつかり、政府批判にはつながらなかったのである。

 タナコでは着々と工事が進行していた。ヘヤコでも一部の推進派の住人は焦った。港ができたとしても、開港が遅れれば、主な交易はタナコに取られてしまうのではないか。

 ヘヤコの領主ヤヌスは決断を迫られた。

「投票によって民意をしめそう。」


 投票結果は半数近くは棄権したが、7割が反対だった。

「反対は、多くみても6割うちの7割ですから住人の4割ですね。これでは、民意とはいえないでしょう。いやむしろ、反対していない6割のほうが民意というべきでは。」

 役人は屁理屈を並べる。算術にうとい村民は、

「そうなるべか。」

 といって、ころっと騙される。

「地方の民意と国の民意とでは違います。政府は地方に人々によりそい、国の民意にしたがって、粛々と工事をすすめてまいります。」

 狡猾な役人達の詭弁によって、工事は止まることなく続けられた。

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