戦闘国家の弱点
サムマルクは前線から退却してきた兵を前に激怒した。
「何してんねん。新型とかぬかして。まったくの役立たずやないか。どないしてんれんねん。」
強烈な、なまりのせいで、兵たちは怒られる恐怖より、笑いをこらえるのに必死だった。
彼は一人テントにもどった。
「どうだ、敵の弱点はわかったか?」
サムマルクはテントの外で控えているニロクにたずねた。
「いえ、ですが面白い話を聞きました。わが国から逃げた奴隷が巨大な熊を飼っているという話です。」
「今は、熊にかまっている場合ではない。ほかにないのか!」
サムマルクは少しイラつき、きつくあたった。彼の強烈ななまりは人前だけの作られたものだった。それが相手を油断させる彼なりの処世術だ。
「術士プラトの弟子達が密かにアテナイに集結しているという噂を聞きました。キリシエは戦闘国家のため、われらのような術士はいないと聞いております。われらの進軍に備えて術士を取り込もうとしているのではないかと思われます。」
「くんくん。それは臭うな。そんなん言うてる場合か。それなら先制攻撃や。」
落ち着きを取り戻した彼は、知将サムマにふさわしく不敵な笑みを浮かべていた。
「すぐに、本国から神官どもを呼べ。」
「かれらには兵役の義務はありませんが。」
反論する兵士に
「理由はなんとでもつけろ。五日以内につれてくるのだ。」
そう怒鳴りつけて、はっと我に返った。
「皇帝ならこういう言うやろな。ほな、きばりいや。」
そういうと、彼はさっさとベッドにもぐって寝てしまった。
五日後、10人の神官たちが死獣を逃がした罰として、戦場へと連れて来られた。




