迎撃
「戦が始まった。ワシは軍の指揮を見る顧問とになった。お主とはしばらくお別れだ。」
老人の言葉に、アキは
「まだ、剣の真髄は見えておりません。できれば、修行を続けたい。」
そういって、城の中に残った。戦となれば城への出入りは自由にはできない。獣の世話はシバクたちに頼んだ。
「ミック顧問。敵は、鉄の箱で武装しております。歩みはのろいですが、矢も剣も歯が立ちません。」
隊長が老人に報告をした。
「ご苦労。敵が拡散し、少しすけさえすればよいのだがのう。」
手渡されたスケッチを見て、顧問となった老人は考え込んだ。
「ロウムの軍は、奴隷が多い。彼らは、太鼓の音にあわせて行動します。」
アキは昔のことを思い出していた。
すぐに城へつづく街道にいくつもの太鼓を配備した。
「ドン、ドン、ドン。」
ロウム軍が近づくに連れ、一定のリズムで太鼓が響いてくる。
「ドン、ドドド、ドッドドド、ドン、ドドド、ドッドドド。」
キリシエ軍が、別のリズムをたたき始めた。
街道をふさぐように、前後に横一列で進んでいたロウム軍が停まった。鉄の箱の中では、どちらの太鼓の音か区別がつかなかった。
ロウム軍の隊列が乱れる。キリシエ軍は、その隙間を塗って内部の密集地帯へと突入した。突然のことに、ロウムの兵たちは剣を抜くことさえ満足にできなかった。
「右ウィングはそのまま敵の後方へ回り込め。左ウィングは横から敵をくずせ。」
前線部隊の隊長が指示をだす。『疾風』と呼ばれた、俊足部隊である。きっちりと並んだロウム軍は戦うスペースがない。戦車隊を残し、あっという間に退却していった。
「引け!」
疾風の隊長が叫ぶ。そして、戦車隊だけが、その場にぽつんと取り残された。
「次!瑶林隊、前へ。」
大量の丸太が戦車隊の回りに並べられる。足止めのつもりだろうか?辺りはまるで、木場のような光景に変わった。かれらは、重いものを運ぶためのコロの扱いに長けていた。そのたた、常に多くの丸太を携行している。
戦車は木のはさまれ、身動きができない。
「火を放て!」
隊長の掛け声で、丸太に火がつけられた。乾燥した丸太は、次第に勢いよく燃え始めた。炎に包まれた鉄の箱は、温度があがり、中はまるで焼き釜のようになった。
「アチ、アチ!」
戦車の中から声が聞こえる。しかし、戦車はゴトゴト音を立てて揺れるだけで動かない。それもそのはずで、いつのまにか、うずくまって停まっていた戦車の上にはいくつもの投石用の重たい石がのせられていたのだ。
「降参すれば、捕虜として助けてやる。抵抗するなら、このまま蒸し焼きにする。」
隊長の言葉を兵士が伝える。残されたのは、もともと奴隷として集められた連中だ。ロウムに義理立てして、死を選ぶ理由も無い。ほとんどの兵士が捕虜として生きる道を選んだ。




