身分
昼食をはさんで、午後の試合方法が発表された。午前で残ったものと、シード選手4人による多人数試合。そのなかにアキの名前はなかった。協議の結果、落選になったようだ。他人の試合を見ても仕方がない。帰りかけた彼を一人の老人が呼び止めた。
「残念じゃったな。おぬしの腕なら優勝も夢ではなかったのじゃがな。」
アキは慰めはいらないというように首をうなだれて横に振った。
「ほっほっほっ。正直な男よ。今日は、将軍がご覧になる試合。ロウムではどうだか知らんが、キリシエでは剣闘士というのは英雄でな。元とはいえ奴隷のものを御前にだすことには抵抗があったようじゃな。もっとも、全員での乱打戦では、結託されて最初につぶされておったじゃろう。」
この時代、どの国へいっても奴隷というだけで、満足な待遇は期待できなかった。失望したアキはとぼとぼと城門へと向かった。涙がこぼれた。
「くやしいか。」
老人は、後をついてくる。
「ならば、わしについてこい。」
老人について城の中の小さな小屋に入った。
「わしは、城のしがない庭師じゃ。もし、手伝ってくれるというなら雇ってやろう。」
アキは次の日から老人のもとに通った。庭師の仕事は涼しい午前中で終わる。昼食をたべ、昼寝をすると、老人は一本の木の剣を彼に手渡した。
「お主に、武道としての剣を教えてやろう。まずは、素振りじゃ。剣というものはただなぐりあう道具ではない。剣の道を理解すれば、おのずと人生も変わるだろう。」
アキは老人にいわれるまま、毎日2時間ほどの素振りを続けた。




