模擬試合
その日、アテナイ城の広大な庭には、数十人の剣士と数百人の見物客が集まった。
「今日は、見物客がおおいなあ。」
「ああ、年に一度の御前試合。もしかすると、軍の指南役になれるかもしれないからな。」
「むりむり。すでに、決まってるって。そうゆう連中は、午後からのシード選手だよ。」
「いいよな。おれたち、一般参加は午前だけでくたくただよ。せめて日を変えてほしいもんだ。」
参加者のなかには常連も多いのだろう。試合前だということでわきあいあいとしている。
「いったい、何人が午後まで残っていられるのだろう。」
アキは初めてのことに不安でいっぱいだった。せめて、剣でも振って落ち着きたいが、御前試合ということもあって、ことさらに武器の携帯は禁止されていた。
「これより、模擬試合を始める。将軍様は午後の武闘からご覧になられる。」
係員の説明に
「やっぱり、俺たちは期待されてないってことだな。」
参加者たちは、半ばあきめ顔に変わっていた。
模擬試合は、受付順に二人一組になって、模擬剣をつかっての寸止め。といっても、故意なければ当たっても反則ではない。盾と防具の使用は自由だが、相手が組手をしてくると不利になるので、ほとんどの参加者は盾しか使わない。
アキは盾を使うと視界が制限されるので、剣しか使わない。彼の相手は2メータ超の大男。彼より頭2つほど大きい。
「おれは、運がいい。こんなちび助が相手だなんてな。」
大男は、周囲に聞こえるような大声で笑った。
試合が始まった。制限時間内に、参ったといったほうが負け。さらには、会場を巡回している審判たちが、肩をたたき負けを宣告する。いわゆるTKOがあった。
大男は、剣を大振りする。寸止めなどする気がないようだ。しかし、小柄なアキにはかすりもしない。が、逃げてばかりでは勝てない。とは言っても、力の真っ向勝負では分が悪い。アキは相手の背後へと素早く回り込み続ける。大男はいらつく。そして、しだいに冷静さをうしなっていった。
「ガチン。」
大男の剣が庭木の幹に当たる。相手は雄叫びをあげると剣を投げ出した。
「もともと剣より組手のほうだとくいなんだ。」
そういって、相手はアキにつかみかかった。かれは、大男の腕をつかむと、いきおいのまま後ろへと転がった。大男は、そんまま前へとつんのめり、アキの体をきれいに飛び越えて行った。その瞬間、審判が相手の肩をたたいた。
こうして、何度か試合を繰り返すうちに、人数は5人程度に絞られた。その中アキも残っていた。




