同志
ひと月が過ぎ、公演が終わった。このころにはアキもタロットカードを狙った的に当てられるまでに上達していた。獣も十分な食事が取れたので、アキの倍ほどの大きさになっていた。
「もう、檻にはいれておけないな。」
団長は別れを惜しんだ。
「食いぶちに困ったら、いつでも来いよ。」
団員達も本当は泣きたかったろうが、最後はあかるく振舞っていた。
アキと獣はレニホが用意した郊外の空家に住んだ。馬小屋があり、獣が隠れるにはちょうど良かった。
しばらくすると、見覚えのある黒い顔がひょっこり現れた。
「元気なようじゃの。」
ヨワネが数名の仲間とともにたずねてきた。
「わしらは、みな同じ釜の飯を食った仲間よ。師匠のもとから離れて散り散りになったがな。みな、エイブラハムに追われている。おぬしが、あの独裁者と戦うというのなら、われらも師のかたきを討ちたいと思う。」
ツヨキ、マテイ、シバク。3人はほぼ同期に弟子入りした、ヨワネの後輩だった。ツヨキは猟師の息子だったが埋め立てによって漁ができなくったそうだ。マテイは金貸しの息子だった。何人もの評議員に選挙資金を貸し付けたところ、一部の商人と政治家との癒着が問題となり、皇帝が政治家への金銭の貸付を禁止する命令を出した。借金は棒引きとなり、まったく回収できずに廃業となってしまった。
シバクはキヨの姪で、主に身の回りの世話などの雑用を行っていた。門前の小僧なんとやらで、彼女もいくらかの術は使えた。
ツヨキは魚に詳しく、魚毒と料理術に精通していた。マテイは算術。シバクはハーブで香りを操った。ツヨキとマテイは少し離れた海辺の近くで暮らした。シバクはレニホの家で家政婦として住み込んだ。ツヨキとシバクは獣のための食料をよく届けてくれる。ヨワネはまた旅に出た。獣はしだいに人の言葉を理解し始めている。アキも獣がもう少し大きくなって分別がつくようになるまで、どこかで働こうと考えていた。




