レニホ
アテナイに着くと、レニホという女性を探した。しかし、簡単には見つからない。せめて住所か旦那の名前でもわかれば早いのだろうが、ヨワネもキヨもそこまでは知らなかった。
「ロウム人のレニポなら知ってるが。」
レニポという有名な議員がいるらしい。同一人物なのだろうか?しかし、議員となれば簡単に会うこともできない。聞けば、政権を握っている軍と対立しているという。
「あせりは禁物だ。出会うべき運命にあれば、必ず出会える。」
団長がアキをさとした。
「この地で一か月ほど公演をする予定だ。暇つぶしに、なにか芸でも覚えるといい。」
さすがに猛獣使いや空中ブランコといった曲芸はできない。かといって綱渡りのようなものでは準備に手間がかかる。
「即興でできるものなら、ナイフ投げ、コマやこん棒のようなジャグリング、カード飛ばしならカード一枚でできる。」
団員のジャグラーに相談した結果、ナイフは警戒されるのでカード飛ばしがいいだろうということになった。
カード飛ばしの基本はまっすぐ飛ばすことだ。それができたら、手元に戻す。より高度な技は片手連続飛ばし。
さほど器用ではないアキにはこのぐらいが限界だろう。色々やるより、一つ一つの技の完成度を上げるほうが、より団員らしくなる。
半月ほど経った、ある昼下がり。団員は夜の公演に備えて、昼寝をしている。そこへ、一人の女の子が走りながら入ってきた。
「すみません。この子ったら夜まで待てずに、入ってしまって。すぐに出ますので。」
「ははは、今は昼寝の時間だから危なくないですけど、練習中はとっても危険ですからね。」
ロウムの衣装を身に着けた、清楚な女性に団長は笑って答えた。
「ほら、危ないんですって。さあ、ショーが始まるまで出てましょうね。」
「私のしたいことすぐ禁止にするから、レニホ嫌い。」
女の子はふくれっ面をして座り込んだ。




