三人の英雄
ロウム帝国がまだ地方の小国であったころ3人の英雄が国に現れた。彼らの活躍で国は巨大になり、人々の生活は豊かになった。
老齢で冷静なタケサリヌス、戦いの神に愛された男タマリクトス、若く狡猾なサムマルク。
かれらは、名将タケ、剣豪タマリ、知将サムマとよばれ、年は違えど、たがいにひけをとらない働きぶりだった。
やがて、彼らも年を重ねると、タケサリヌスは現役を退いた。タマリクトスは剣闘士に、サムマルクは将軍として皇帝エイブラハムに仕えた。
「まだ、始末できんのか。」
皇帝は側近達に当り散らした。
「タマリクトスが山で戦ったが、逃げられたそうです。」
兵士の一人が顔をこわばらせながら報告をした。
「ヤツの師匠はタケサリヌスです。彼を捉えれば、やつも姿を現すやも。」
別の兵士が言った。
「あかん。国外からも圧倒的信頼を得ているタケに手えをだせば、反乱がおこるかもしれまへんで。」
細身で長身の男が口を開く。サムマルク。数々の知略と巧みな交渉力で、いまや軍のトップとして宰相につぐ地位を得ている男だ。
「彼がいるから、周辺諸国も素直に従っているのです。」
宰相のエダが付け加える。
「わしよりもあんな老いぼれのほうが人気があるとでもいいたいのか?」
エイブラハムは少々不機嫌そうだった。
「んなわけ、ありますかいな。あんたが一番。」
すかさず、サムマルクが持ち上げる。
「さようです。」
彼にうながされ、兵士たちも口々に皇帝をたたえた。