表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死の獣  作者: 明日香狂香
11/65

信念

「はあ、はあ。さすが、死獣を倒したというだけある。もし、お前がこのまま死獣とともに都にもどるというなら、お前の命を救うよう皇帝に進言するが、どうだ。」

 タマリは、肩で息をしながら、アキに問いただした。

「無駄なこと。やつが、反逆者と決めたのだ。するわけがない。それに、我が祖国と同胞の命を奪ったやつに忠誠をつくすなどできぬ。」

 アキもまた、おおきく肩を上下させながら、タマリをにらみみつけたまま答えた。


「お前は、太刀筋がいい。剣の師匠は何と言う。」

「タケサリヌスだ。」

 その答えに、タマリは構えていた剣を降ろした。

「かつて、国内一の名将とうたわれたタケ殿であったか。すでに現役を退き、後進の育成をしていると聞いた。奴隷というので、おぬしを少々見くびっておった。では、改めて全力で仕留めにまいろう。」

 タマリの構えが変わった。剣を斜め下に向け、半身に構える。そして、そのまま矢のようにまっすぐ突っ込んできた。彼は次の瞬間、大きな剣を下から上に振り上げると、勢いそのままに体を回転させ、アキの腹部めがけて水平にはらった。

「ガチン。」

 それは、アキが胴に添わせた剣にぶつかると、真っ二つに折れた。二人は離れて間合いをとる。

「なぜ、反撃せぬ。」

 タマリは不服そうだった。

「我が剣は、殺しのためのものではない。」

 アキは重い剣を引きずりながら返した。

「いつまで、そういっていられるかな。万一、俺に勝てたとしても、そんなことでは、この先、いつか死ぬぞ。」

「かまわん。己が生き延びるために、相手の命を奪うことはできぬ。どちらの命が尊いかなど、人が計れるものではない。だが、お前が仲間にまで手をだすというなら容赦はしない。」


 タマリはクルリと反転すると、

「この剣では、もはや戦えぬ。わしの負けだ。サムマルクには気をつけろ。やつには道理は通用せん。」

 そういって、山を下っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ