表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/47

6


「ここどこだっけ」


初めて見る天井。

今まで意識してみたことなかったけど、天井の模様って色々あるんだなぁ。


「ここ、どこ?」


私の横には、黒い大きな塊がある。

これ、なんだっけ?

触るとあったかくて、とても気持ちがいい。

顔を寄せる。

あー、気持ちいい。

触り心地最高!

一生触っていられる。

ふいに、もぞりと黒い塊が動く。


「え!なに!」

「にゃあ」


黒い塊だったものに、手が生え、耳が生え、目ができて。

あっという間に、巨大な黒猫になった。


「あ、クロだ」

「にゃあ」


クロを撫でながら周りを見渡すと、少し離れたところに人が立っていた。


「ろ、ロイ・マクスウェルだ!」

「気分はどうですか?」

「気分?」

「館に戻られてすぐ、ぱったりと倒れてしまわれたのです。具合が悪いときは、おっしゃってください」

「はい、すみませんでした」


何だろうこれ。

夢だよね?


「あの、これは夢ですか?」

「いいえ。現実ですよ」

「うそだー。だって、あなたはロイ・マクスウェルですよね」

「はい」

「コスプレの方?」


ロイ様は小さくため息をついた。


「これでも夢だとおっしゃいますか?」

「あだっ!」


ロイ様は私のおでこにデコピンを放つ。

ぱんっ、といい音が響いた。

もしかして割れたんじゃないだろうか?


「ごめんなさい」

「元気なようなので、先に食事を済ませてください。食事が終わりましたら、ゴーレム作成に入りましょう」

「はい」


ロイ様は部屋を出ていってしまった。

これって、さっきの続き?

今どこなのか、ご飯はどこで食べるのか、ちゃんと聞いておけばよかった。

クロは、にゃあと鳴く。

そうだね、クロに案内してもらえばいいんだね。

夢かうつつか幻か。これが現実?よくわからん。

ほっぺたをつまんでみたが痛いだけで、さっきデコピンされたところも、ジンジンと痛む。

クロは、自分の体の下に手帳を隠していたらしく、それをくわえて渡してくれた。

どこに置き忘れたかと、一瞬焦って損した。

中を確認する。


「あれ?更新されてる。すごい謎技術!」


この手帳ってば、じつは、ものすごいやつだったんだ。

私のページに、項目が増えていた。


「名前  ユーリ

 職業  ゴーレムマスター



 体力  ※※※/※※※

 魔力   ―∞/―∞

 

  菴ソ蠖ケ縺吶k閠

  諢帙☆繧玖?



               」


なんだろう?

この文字化けのところ。

すっごく気になるけど、解決する方法がわからないから、とりあえず放置するしかない。

ロイ様は、相変わらず執事のままで、変化はない。

問題はクロのページだった。


「名前  クロ

 職業  猫

 所属  ユーリ

 

 練度  15

 体力  B

 魔力  C

 筋力  B

 知力  B

 機動  B

 運   C      

                」


練度がレベルだとするならば、いきなり10以上も上がったことになる。

すごい!

あの魚、本当はすごいやつだったんじゃないのか?


「やったね、クロ!」


私はクロを思いっきり褒めてあげた。

クロは、嬉しそうにしている。

よきかな、よきかな。


「さて、そろそろ行かないと怒られそうだ。ロイ様がどこにいるか知ってる?」


クロはにゃおんと鳴き、私をロイ様のところへ案内してくれた。

うちのでっかい黒猫、優秀すぎる!

黒猫に案内されるがまま、ついて行ったら、こじんまりとした部屋にたどり着いた。

そこは、どうやら食糧庫のようで、ぎっしりと保存食が詰まっていた。

そこを抜けると、キッチンになっていた。

隣り合っていたのか。

厨房を通り、部屋に抜ける。

部屋に入ると、準備万端という感じで、一人分の食事が用意されていた。

お魚の料理だった。

あたたかくて、とってもいいにおいがする。

夢って、こんなにもリアルだったかな?と思い、もう一度、ほっぺたをつねってみる。

痛い。

頭を軽く叩いてみる。

痛い。

ちょっと待って。

これって夢じゃなくて、現実?

本当のことなの?

夢だと思ってたから。

夢だと思ってたから、自由に振舞えてたのに。

もう無理。

ロイ・マクスウェルが存在する世界なんて耐えられそうにもない。

推しじゃないけど、顔がいい、声が良い、見た目が最高。

やばい、死にそうだ。

さっき触っちゃったし。

生意気な口聞いちゃったし。

これって、あのロイ・マクスウェルが用意してくれたの?

ロイ・マクスウェルが、私の執事?

これはいけない。

やばいよ、絶対。


「まだ気分がすぐれませんか?」

「ぎゃあああああ」


後ろから声をかけられ、思わず声が出た。

振り向くことができない。

意識してしまって、まともに顔を見ることができない。


「お気に召しませんでしたか?」

「滅相もございません!とてもおいしそうだと思います」

「それはよかった」


私は、急いで席に座る。

めっちゃおいしそう。

白身魚のソテーに、サラダとパン、スープもある。ちょっとしたランチみたい。

しかし、ロイ・マクスウェルがそこにいるかと思うと、正直、喉を通りそうにない。

まず、テーブルマナーとか、全く自信がないし。


「あの、頂いてもよろしいでしょうか」

「はい。マスターのために作りました。お口に合うといいのですが」


あー、声がいい!

間違いなく、おいしいやつだと思います!


「あの、ロイ様は」


自分で言っておきながら、ロイ様だなんて、ものすごく恥ずかしい!

けど、先に進まないので言うしかない。


「ロイ様は食べないんですか?」


すると、予想外の答えが返ってきた。


「私は食べることができません」

「どうしてですか?」

「ゴーレムは食事を必要としませんので」

「は!?」


思わず、ロイ・マクスウェルの姿を見てしまった。


「ロイ様って、ゴーレムなの?」

「はい」

「まじ?」

「はい。私はマスターのために作られました」

「でも、普通の人と変わらないけど」

「そのようにあれと作られました」


ええええ。

まさかのゴーレムだったなんて。

私の先人は、ものすごいゴーレムマスターだったんだろうな。


「料理が冷めてしまいます。詳しいお話は、食事の後にいたしましょう」

「わかりました」


とりあえず、ごはんだ。

腹が減ってはなんとやらだもんね。

話を進めるためにも、目の前のご飯を食べることにした。

ロイ・マクスウェルの正体が分かってしまうと、不思議なもので、あまり緊張しなくて済むようになった。

本物じゃなくて、偽物。

人間じゃなくて、作り物。

でも、本当に存在していたら、こうなんじゃないこと思わせてくれる姿。

ちょっと安心したかも。

彼が作ってくれたお魚料理は、とてもおいしかった。

何より気になっていたテーブルマナーについては、注意されることもなく、とても気が楽だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ