(4)夢
(2008/10/25)変更前の(3)を(4)としただけのものです。
内容は以前の(3)と同じですのでよろしくお願いします。。
サブタイトル『レミュートの夢』から『夢』に変更。(2008/10/27)
私は夢を見ていた。たぶんこれは夢なのだと思った。そうじゃないと、納得できない。
空虚な空間だ。見渡す限り存在するのは何の仕切りも見あたらない白い空間。
広大に、ともすれば無限に続くとも思われるこの世界の中心にただ一人たたずむ私は、その風景に違わずとても空虚な瞳でそれらを見渡していた。
これが私の深層を映し出す鏡なのだとすれば、私の本性は空っぽだということなのだろうか。
目を閉じれば、その先には闇が広がるはずだった。しかし、まぶたをおろしたとしてもその視野が変貌することは無かった。気がつけば、私の身体は世界にとけ込みただ、私の意識のみがここに浮いているだけのように感じられた。
とても気持ちが悪い。だけど、何故か私はここが酷く居心地が良いもののようにも感じられた。不快だ。私はこんなものを望んでいるというのか。違う、私が望む私の世界はこんなものではない。
『ならば、其方は何を望む』
未来を。光に満ちた安息を。
『ならば、其方はそのために何者となる』
誇り高きものに。自らを誇りとできる存在に。
『ならば、其方はそのために何をなしてきた』
私は、まだ何も成し遂げていない。だから、これからそれをなしていく。
『ならば、其方はそのために何をなす』
それは・・・。分からない。そのために旅に出た。何かを成し遂げるため、その方法を探すため。
『ならば、其方は何者か』
それは・・・。 私はいったい何者なのだろうか?
『其方は何をもって自らとする』
私が私として認識する私は、いったい何を根拠にこの世界に存在するのだろうか。
私は私であると知る理由は、私の周りの人間が私を私だと教えてくれるから。
『ならば、其方を認識する者達は何をもって其方を其方たらしめる』
私が私だとする根拠が、私以外の人たちが私を認識していると感じ取れるだけに過ぎないのだとすれば、私が私であるという確たる根拠は何処にも存在しない。
もしも、私以外の人たちが認識する私というものが、私が認識する私とは異なるものであったとしたら、私が私である根拠は脆く崩れ去るのか。
『重ねて問おう。其方は何者か』
私はどうして私として存在しているのか。一人称でしか認識できないこの世界が確かにここに存在している確証は何処にあるというのか。
私は、それが知りたい、私が私としてここに在る根拠、そして、私が私としてこの世界に存在する理由を。
『ならば、知るがよい。其方が何者か。其方が何をなさんとするか。我らは其方を見守ろう。其方の命の潰えるその時まで。覚えよ、我らは常に其方と共に在らんことを。心せよ、其方の行く末には暗雲の広がりたるを。願わくはその末に希望の在らんことを』