第二話〈信仰の村クローナ〉(0)信仰の村クローナ
第二部第二話の始まりです。
ここからこの物語の主題に入っていきます。
現在修正第二稿目(2008/10/27)
信仰の村クローナ。この村を語るためには、魔法ギルドの存在を欠くわけにはいかない。
魔法ギルド、この名を知らぬものはこの世界にはいないだろう。遙か昔、魔術が全盛を誇っていた頃、魔法ギルドは魔法都市の名において世界を統治していたと言われている。その組織は、人が生きる上で欠くことの出来ない魔術の歴史と秘蹟を守り受け継ぎ、管理してきたと言われる。永遠を約束されたと思われた魔法都市は、かつての英雄、黄昏の魔法戦士と冥竜王の間に引き起こされた大戦争において衰退の運命をたどることとなった。彼の英雄は唯一無二の聖剣をもって、彼の闇の権化を討ち滅ぼすことに成功したが、その代償としてこの世界から魔術が消失することとなった。魔術の消失は、そのまま魔法都市の崩壊を意味した。
それより千年、精霊使いアルファ・ディナ・スレイアが精霊をもって世界に魔術を復活させ、竜騎士クレア・ラインズ・フォントによって復活した冥竜王が滅ぼされるまで待つ必要があった。クレア・ラインズ・フォントの命をとした活躍の後、世界に訪れた安息と同時に二人の魔術師によって魔法ギルドは再建される。その再建の祖と呼ばれる二人の魔術師の名は、今更記す必要もないであろう。彼の大師父ルーヴァン・ヘウンリークと現在も生きる伝説と称される彼の大導師ベルディナ・アーク・ブルーネスである。
そうして、魔法ギルドは多くの偉人達の活躍によって今日にあり、あらゆる国の影響を受けることなく一国として独立をはたし現在にある。
そして、変則的ではあるが一国として独立をはたしている以上、隣接する他国とは領土の問題が常につきまとうようになった。特に、魔法ギルドにとって最友好国である神聖スリンピア王国とはもっとも多くの問題を共有することとなった。
元はスリンピア王国領であったかつての魔法都市が独立したために、その境界線をどうするかということであるが、双国はその当時、魔法ギルドとスリンピア王国を繋ぐ街道の中間にあったクローナ村を両国とも領土の主権を主張し合わない緩衝地域と定めた。
故に、信仰の村クローナはどちらの国も所属せず、どちらの国からも保護を受ける、奇妙な村となってしまったのである。
また、信仰の村という言葉が示すように、元々この村は神竜を崇拝するサイリス教の巡礼者によって作られた村であり、その長を代々村の中心に立てられた教会の神父が務めるという一風変わった習慣も存在する。
ともあれ、一度この村に訪れたものはこの村に住む人々がいかに敬虔なサイリス教徒であるかを知り、自身の信仰に対して大きな影響を受けさせられるであろう。
(魔法ギルド出版『現代論』、コラムの一部抜粋、著者アルバート・レティーザ・ホーキング準導師)