⒊彼女の願い、彼の苦悩
彼女は人間さん。
彼は××さん。
この二人に大きな違いはありません。
近い何かもありません。
今日はー ー月ー ー日。
会社見学のイベントが行われる日。
そしてイヴが私の仕事を見に来る日。
イヴに情けない姿は見せられない。
頑張って仕事をしよう。
・・・今日は課長が静かで助かる。
待ちわびた今日という日。
このイベントをどれだけ楽しみにしていたか。
これでカベルの”目”の原因がわかる。
この前は寝言で”かちょう”って言っていた。
おそらくそれが諸悪なのだろう。
××としてなんとかしなくては。
はい、わかりました課長、、、てめぇがやれよ。
すいませんでした、、、なんでお前なんかに。
すぐにやり直します、、、やったんだから目を通せよ。
この世の中は嘘で塗り固められている。
私だってそうだ、最初の頃は。
だが考えてみればそこからかもしれない、心が壊れ始めたのは。
ここが会社…?
すごく大きな建物だ。
ここの、8階がカベルの仕事場らしい。
さて”かちょう”を探そう。
僕にはやることがある。
僕には××の使命がある。
あ、イヴが来てる。
ここでヘマするわけにはいかない。
私だってできるってことをイヴに教えなきゃ。
まずはこの書類片付けて、次はデータ整理かな。
ん、でもあれほんとにイヴ?
なんか…彼であって、彼じゃない?
どうやら”かちょう”というのは偉いらしい。
中でもこの会社の”かちょう”はひどいらしい。
カベルにとっては苦痛だったのだろう。
早急に排除しなければ。
いた、カベルだ。
その近くにいるのが…あいつかな。
またダメ出しを受けた。
あいつは自分では何もできないくせに人のことをバカにする。
要するにダメ上司だ。
自分にできないことを他人に押し付ける。
でもそれができなかったら散々怒る。
全く、イヴにはこんな大人にならないでほしい。
あのことはカベルには内緒にしている。
いつも一緒に暮らしてきたカベルでも言えないことだ。
つまりぼくは彼女を裏切っているのかもしれない。
おかしいことといえばおかしい、居候の身で隠し事など。
殺伐とした路地で捨てられたぼくを拾ってくれた。
すごく奇跡的で不幸の始まりだったのかもしれない。
今日、ー ー月ー ー日の午後1時ごろに
ー ー区のとある会社に勤めている三十代の男性が
急な発作を訴え、死亡しました。
親族によると過去に持病はなかったとのことです。
解剖の結果、目立った外傷はなく急性心不全ということです。
では次のニュースです・・・
挨拶は省略します。
みなさまお気付きでしょうか。
この話の中に隠された暗号があることを。
会社員の男性はなんで死んでしまったんでしょうね。
わかってしまった人は…相当”勘”がいいのですね、、、