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三話 予兆じみていてそうでもない話

 京華学園の敷地を適当に歩いていて目についたものと言えば、花壇のそばやグラウンドのすみに石が山のように積まれているものだろうか。

 学園そのものには石が沢山あるようなところはないが、学園付近には石のしかれている線路だとか、少し歩けば河川敷もあるので、石そのものは手に入りやすい環境だろう。

 なんの意味があるんだ。

 購買部のお守りやその裏にある怪しい宗教とは関係があるかによっては……。

「なにしてんの」

 声がして振り向くと、軍手をしてアルミのバケツを両手で持った小柄な女子生徒が淡々とこちらを見ていた。バケツの中をみると入ってるのは石らしい。

「トトキくんだっけ」

「ああ」

 同じクラスにいたような、いなかったような。いたかもしれない。

「で、なにしてんの」

「この石なんだ?」

「賽の河原」

 あっさり終わる質疑応答だった。

 こいつ一人でやっていることなのか……とか、何の意味があるんだ?とか聞いた方がよかったのだろうが、この女子生徒は石を積み始める。

「暴動起こすときに石必要だから」

 賽の河原なのに暴動……ますますわからねぇな。なにするつもりだよ。

「凶器になる部分は否定しないが」

「だよね。いいよね石」

 いくらも色々なものからかけ離れた変な奴だな。

「あ。名前言ってなかったね。生徒会の嶋屋寧子だよ。よろしく……クラス一緒だったと思うけど、授業そんなに好き勝手でてないし、知らなくてもトトキくん悪くないよ」

「お前こそなにしてるんだよ」

 俗に言うサボり魔か。

「授業はじまるから教室行ったら」

「一人で石積み上げてるのか?」

「そうだよ。雨の日はべつのことしてるけど」

 携帯の時計を確認するとたしかに後数分で授業が始まるので、教室に戻ろう。


       *


 落とされたのかそれ以外か、なにがどうして水の中なのか。

 手かなにかが伸びてきて、更に深い方に沈めようとしてくる。見えない力に引き寄せられるってよりも、明らかに手が引っ張っている感触があって、でもそんなのホントにそうかなんて確かめたくもない。

 ただ川にむかって投げ入れられた石のようなもの。石なんて、沈むことはあっても浮かんでくることは無く、本当にただそれだけ。

 やめてくれと思った。

 水に落とされても、どうしたら良いかわからなくなって溺れるだけだから。

 溺れて死ぬのだけは嫌だ。

 他の殺され方や死に方ならまだいい。受け入れる。

 でも、これだけは嫌だ。

 みたくもない水中は、そもそも水が真っ黒いのか見えるようなものじゃなかった。

「…………っ!」

 起き上がる。

 夢だったらしい。

 嫌な汗を沢山かいて、心臓は早鐘をうっていて、わずかな類似点でしかない癖に本当に溺れたみたいだと思って、大きく息を吐いて膝を抱える。

「はー…………最悪」

 疲労だとかを回復させるための睡眠中の悪夢だなんていい迷惑だ。

 なんでこんな夢を見た?

 統堂秋ではない存在である十時六花として学校生活を送っていることへのストレスだろうか。

 なにか悪いことでも起こる予兆じゃないと良いが……。

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