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二話 寡黙な先輩

副会長の沖蛍介おきけいすけは全く喋らない先輩だ。

 この生徒会はわりと居心地が良いけど、その中でおそらく一番好意に値するかもしれない。

「先輩、何してるんですか」

 こちらに向かって背を向けていた蛍介先輩は僕の声に気付いてくるりと振り向くと、手に持っている道具を見せてくれた。

 それは黒板に直線を引くための大きい一メートル定規にガムテープで包丁をぐるぐる巻きにして固定したもので、使用用途はわからないけど槍か何かだろう。

 何に使うのか、とか、意外なもの作ってるなとか困惑していると、蛍介先輩は立ち上がって僕にその槍もどきを渡すと生徒会室から出て行って……荷物は置いたままだから多分戻ってくるな。

 渡された槍もどきをくるくる回してみたり突き刺すまねとかをして遊んでみると、真ん中に持ち手があるから使いやすいと言えば使いやすくて、でもぶるぶるふるえるからそうでもないな……多分戦えるタイプの人との戦闘にはむかないし、あくまでもあんまり近づきたくないときに刺すために使う用っぽくて……使い方はわかったけどなんに使うつもりだあの人。

「動物でもいじめるのかな」

 その辺にいる動物や虫なら、やったとばれなければなにやっても許される気がするし。遊ぶのにも飽きたので机の上に置いておこう。

 椅子に腰掛けて窓の外で行われている部活動の様子を観察してみたけれど、似たような動きしかしていないからあんまりおもしろくない。やっている人たちはおもしろがっているのか作業としてこなしているのか……考えてはみたけど馬鹿みたい。

 運動とかチームワークがどうのとか言われる類いは好きじゃないし。

「わっ」

 肩をたたかれて慌てて振り向く。

 冷めた考え事をしていたら、いつの間にか蛍介先輩が戻ってきたことに気付いていなかった。

「ん」

 蛍介先輩は泥水と、もう一つは丸い石と水が入った二つのマグカップを差し出してきた。

 飲み物を持ってきてくれたらしくて、この二つからどちらか選べと言うことらしい。

 選んだとしても、何に変わるかわからないからなぁ。

「じゃあ、石の方でお願いします」

 蛍介先輩はこくりと頷くとこちらに背を向けて僕の選んだ方を先に能力で飲み物に変えていく。

 先輩は無機物と液体の組み合わせを何かしらの飲み物にしたり、あるいはその逆をすることもできるアリスのマッドハッターみたいなちょっとおもしろい能力だ。

 喋らないから特別説明はなかったけど、目の前で見せて貰ったからそういうことなんだろう。

「ありがとうございます」

 後ろ姿をみていたら、蛍介先輩がくるりと振り向いてマグカップを渡してくれた。

 紫色で炭酸っぽい泡……ブドウの炭酸かな。真ん中に浮いている白い丸い物体は、アイス……アイスって飲み物だっけ。

「いただきます」

 飲んでみると炭酸なのは当たっていたけど見た目に反してブドウの味はしなくて、イチゴとかそのあたりの味に近い。

「……イチゴフロート?」

 当ててみると蛍介先輩は満足そうにうなずいて、自分の分の飲み物を一口飲んだ。

「アイスも作れたんですね」

 そういう飲み物だから出来るには出来るということを、先輩はどこからともなく取り出したスケッチブックに描き込んで教えてくれた。

「いや、そこは喋ってくださいよ」

 そういうと、あらかじめ描かれていたらしいバツマークのページが開かれてしまった。

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