十二話 虚構の日常
またあの場所に潜入をした。今回は道具を揃えてちゃんと使いながら。それでもそのときの記憶はどこかに消えてしまったが、他に行ったことのある生徒に聞くとどうやらそれは共通事項のようである。
記録は残っていたので改めて歩いていたあの場所の動画と数枚分の写真を見る。
時間でもとまっているかのように花はずっと生けられていて、甘いような匂いすらただよっている。小石だと思っていたのは、よく見てみれば細かくなってはいるが、人間の骨だった。
敷かれていたその上を通るから、細かくなったっておかしくないのに、けれど人だったものの上を歩いたのかと思うと背筋が凍る。骨になっている人間はのめり込みすぎた犠牲者なのか、それ以外のものなのかまでは判断が出来ないが……どうしてそんなものが……。
「記録したら記録したで、しないほうがよかったな」
それから、ホール内での出来事。
フードで顔はよく見えなかったが、赤い髪の女がなにか話しているときの映像には必ず砂嵐が混ざりこまかい内容はわからない。
「あれ……砂時計だよね?」
瞬が気づいて指をさした場所を見ると、確かに大きな砂時計があって、なぜか肝心の砂は入っていない。
綺麗な色の液体がいくつもの硝子容器の中に注がれていったと思ったら、いきなり画面は真っ暗になり、しばらくしてからまた動画は再開して後は元来た道を戻って家に帰るための道を歩いていまに至る。
「記録しても意味がなかったな」
「……また失敗だよね。これ」
「ああ」
お互いに黙り込む。
「でも、実はこれで良いんじゃないかな」
俺も薄々たしかにこれくらいでいい気はしていて、瞬も同じことを考えていたらしい。
「普通に学校に通えているからな」
「ちょっと変わってるけど。俺達にはこれが普通じゃないかな」
軽く文章を打って動画とともに朝霧にメールで送った。
「お前って……願い事有るのか?」
なんとなしに瞬にたずねる。
「……普通の生活。でも普通が分からないや」
俺も似たような考えがあるから、いや、この潜入調査で過ごす日常が…………どこか虚構じみてはいるが、平均的な普通に近いもののように感じるな。




