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十一話 楽しいところ

そういえば小さい頃遊園地に遊びに行ったとき、鏡と硝子の迷路に入ったことがあって、いくつも自分の姿が映っていたと思う。

 そんなことに気付いて不思議な気持ちになるよりも、たしかあのときは透明な硝子があるにもかかわらず何故だか進めると思って衝突したり、かと思えば鏡にもぶつかったりで散々だった。ゴールには行けたかまではよく覚えていないけど、一緒に来ていた……あれ?ほかにだれだった……?でも、すごく呆れられたんだったよな。

 秋以外霞がかったように全く思い出せないから、これ以上無理に思い出さない方がいい。

 きっと、また頭が痛くなる。

 迷路の建物の中は薄暗くて、他に挑戦しているような誰かは自分以外いなかったと思う。

 人為的に作られてるとは言え不思議で、おばけ屋敷とはまた違った不気味な空間で……今あそこにはいったとしても、きっと同じ動きをして今度は割ったりして……。

「あ」

 目の前に鏡があったから思い出したのかな。鏡に映った自分をみていたようで、記憶を遡るあまりどこもみていなかったように思う。

 困惑したようなとまどったような表情の自分の顔がそこにあった。

 そのあとなんとなく秋の部屋に入ると、秋は椅子に腰掛けこちらに背を向けていて机の上をみてみると布と裁縫セットを広げているのがわかった。綿があるから、多分ぬいぐるみだろう。

 秋がぬいぐるみを作る頻度的には定期的ではなく、忘れた頃だったりそうでもなかったりで、ともかくまた今回も作り始めた。

「やっぱり、好きで作ってるの?」

 種類や布の柄は幅広く、おもちゃ屋や雑貨屋に並んでいそうなくらいのかわいいものを作っている。

「平和な趣味だから作ってんだよ」

 出来た物は棚に飾って、埃をかぶらないようにタオルを掛けていて、ぬいぐるみの数はおそらく今後も増えていくことだろう。

「そう」

「……ついでに綿のはみ出たようなのもぬっとくか」

 飾ってるだけじゃなくてちゃんと使ってるには使ってるみたいなんだけど、その用途的には多分気にくわなかったことがあったときになにかを壁や床にたたきつけてるらしい音が聞こえてくるから……まぁ、ちょっと察したよね。

 果たして本当に平和な趣味なのか…………俺が言えたものじゃないんだけど……。

「売ったりはしないの?」

「八つ当たりするのに使ってるから駄目だな」

 ああ、やっぱり。

「可愛くする意味ってなに」

「は?ぬいぐるみだから可愛くしないとだろ」

 そう言うこだわりがあるからか、呪いとか使いそうなタイプの不気味なクオリティのぬいぐるみは無い。

 なんとなくタオルを外して目についたクマのぬいぐるみを手に取ると、ふかふかしていてさわり心地が良い。

「こんなにかわいいのに」

「いっとくけど、無機物は無機物だからな」

 現実的で味も素っ気も無い。

「心が宿る。なんてのはそうそうねぇし、いくらかわいいからって結局最終的には処分しないといけなくなるだろ」

 自分が部屋に飾っているフィギュアのことがよぎる。そうなんだよな……なにをどう思っていても劣化とかは免れないしどんなことで破損するかなんてそうなってみるまでわからない。それでいつかは……わかりたくはないけどわかってる。

「……なに着せっかなぁ」

 三毛猫のぬいぐるみを作っているらしい。

「海賊の服は?」

「たまには悪っぽいのもいいな」

 なんだかんだ楽しそうに作っている秋を見てから自分の部屋に戻ることにした。

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