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435 ダンジョンの意図 その2

 ベルダが胸の前で腕を組みながら言う。


「ふむ。勇者伯よ。なぜバランスの悪いパーティーを排除したがっておるのだろうか?」

「うーむ。なんでだろう」

「バランスの良いパーティーを排除したいのならばわかるのだ。強敵であろうからな」

「それこそ製作者に聞いてみないとわからないかもー。アルラさんはどう思います?」

「そうだな……」


 俺が少し考えこむと、

「ちょっと! 話すのはいいけど、話し込んだらまた毒が出てくるのだわ!」


 ユリーナの言う通り、このダンジョンには時間経過で毒が吹き出る罠まであるのだ。

 ゆっくり考えさせないつもりのようだ。

 誰が造ったのかは知らないが、厄介なダンジョンを作ったものだ。


「あ、そうだった! アルラさん、歩きながら話しましょう!」


 そういって、クルスは歩き出す。

 話しながら歩いているが、まったく油断していないので大したものだ

 俺も魔法で罠や敵がいないか探りながら、歩いていく。


「それで、アルラさんはどう思いますか?」

「そうだな。ただの推測に過ぎないが……ダンジョン製作者は倒して欲しいんじゃないか?」

「アルラさま。ダンジョン製作者は魔人の不死者を倒してほしいということでございまするか?」

「俺はそう考えている」


 このダンジョンの奥にいるのは魔人の不死者だという。

 それは、この前エルケーで倒した不死者の王(ノーライフキング)が言っていたことだ。

 死神の使徒、チェルノボクも不死者の臭いがすると言っていたし、恐らく正しい。


「そう言われたらそうかも」

「ルカもアルラさんと同じ意見なの?」

「考えてみて。ダンジョン製作者は、ダンジョンに封印を施した人の可能性が高いのよ」

「つまり、魔人の不死者を封印した者がダンジョンを作ったってことなのじゃな?」

「そうそう、エルケーの防御のためのいろいろな仕掛けも作ったのだと思うわ」


 エルケーの防御のための仕掛けとは、エルケーを守るために現れた障壁などだ。

 そして、障壁の中心にあったのは、クルスとケィがかっこいいといった金属像。


「折角封印した魔人の不死者だ。そう簡単に解放されたくないのは当然だ」


 トラップ解除の天才、魔法陣解析の学者。そういった一芸に秀でた天才もいる。

 だから多様な罠を立て続けにぶつけることで、パーティー全体の総合力を測っているのだ。

 俺はそう考えた。


「さすがはアルラさまでございまする。そのご慧眼にベルダ、感服いたしました」

「お、おう」


 ベルダは感動しているが、俺は大したことは言っていない。

 初めての本格的なダンジョンということで、ベルダはテンションがおかしいのだろう。


「つまり試験ということですね! がんばりましょう!」

「りゃっりゃ!」

「もぅも!」


 クルスが張り切ると、なぜかシギショアラとモーフィまで興奮し始める。

 もしかしたら、シギもモーフィも張り切っているのかもしれない。


「みんな、そんなに張り切らなくてもいいのだわ」

「そうだ。試験をクリアできそうもなければ、脱出すればよいだけである」


 ユリーナとティミショアラは落ち着いたものだ。

 ティミは、いざとなれば力づくでダンジョンを破壊すればいいと考えているのだろう。

 それができるのが、成長した古代竜の貴種の力だ。


「シギショアラは安心して、この叔母に頼ればよいのである」

「りゃあ!」


 シギは特に緊張した様子もなく、楽し気に鳴いていた。



 その後も解除難度が高く殺意の高い罠を解除し、強力なゴーレムを倒しながら進んでいく。

 数が多いときは、ルカやエクスもゴーレムを倒す。やはりエクスの剣の腕は非常に優れている。


 ゴーレムを倒した後、ルカが言う


「結構長いわね」

「そうだねー。ルカはお腹すいたの?」

「そういうわけではないのだけど。長引きそうだし歩きながら軽く何か食べた方がいいかもね」


 シギには俺が合間合間に、肉を食べさせているので大丈夫だ。

 大人たちは我慢できる。とはいえそれにも限度はある。

 それに睡眠もとらなければならない。


 それを聞いていた、ベルダが尋ねる。

「このように長いダンジョンの場合、通常、食事や睡眠はどうしているのだ?」

「うーんと、普通に安全そうなところで交代交代で寝るんだよー」

「……安全そうなところか。そのようなところあるのか?」

「ベルダの懸念はもっともだ。毒罠のせいでひとところに留まれないからな」

「はい、アルラさま。睡眠をとれなければ活動の質を維持するのが難しくなりますれば」


 食事は移動しながらとればいいが、睡眠はそうはいかない。

 移動しながら睡眠をとる方法を考えなければならないだろう。


「順番に互いを背負って、背負われた者が寝るしかないか」

「うーん。それは出来ることなら避けたいわね」

 ルカが苦笑いしながら言った。


「まあな。俺もやりたくはない」

「背負っている間、戦闘力もがくんと落ちるし」

「それに、背負われながら、眠りにつけるとも思えないのだわ」


 それは極限まで疲労していれば大丈夫だろうとは思う。

 だが、そこまで疲れているのなら、背負っている方も相当疲れているだろう。

 背負いながら眠ってもおかしくない。


「スカウト技能持ちも足りないのだわ」


 ユリーナの言うとおりだ。罠解除のことを考えると、俺とクルスは眠れない。

 クルスはともかく、最悪俺は眠らずに行くしかないかもしれない。

 このままでは睡眠対策が、最大の問題になりそうだ。

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