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426 神々の使徒

カクヨムで一話先行公開中です。

 俺は一緒に観戦中のチェルノボクに声をかける。


「チェルノボクは侯爵閣下に勝てるか?」

『かてない!』


 チェルノボクは戦闘自体が苦手なので仕方がない。


「そういえば、チェルノボクの死神の権能は、壊せる感じなかったな」

 それどころか、権能の存在自体関知出来なかった気がする。


「ぴぃぎ」

「そういえば、そうですね。感じなかったです」


 俺だけでなく、クルスも感じなかったようだ。

 チェルノボクの権能はアンデッド特効だ。

 それゆえ生者の俺たちには効果がなく、効果がないゆえに気づかないのかもしれない。


「クルスとユリーナは侯爵閣下に勝てそうか?」

「勝てると思います!」

「うーん。相当手ごわいけど、なんとかなると思うのだわ」


 そんなことを話していると、ベルダが言う。


「エクスは、まだ十五になったばかりの子供ゆえ……」

「そうだな。若い分伸びしろがあるな」


 ルカは十七歳で二歳も年上なのだ。

 だが、クルスとユリーナも十五歳だ。子供という理由は通じない。

 とはいえ魔王討伐の旅を経た経験の差は非常に大きい。


「最近の十五歳は恐ろしいな」

「あ、終わりましたよ」


 そう言ったクルスはとても楽しそうだ。

 予想通りルカの勝利で試合は終わった。


「二人ともいい試合だった」

「ありがと。エクスも強いね」


 ルカは額に汗して、肩で息していた。

 ここまで疲れているルカを見るのは久しぶりだ。


「手合わせ。ありがとうございます」

 エクスはルカに深々と頭を下げた。


「やはり、剣聖さまと私の間に、大きな差を感じました」


 エクスは、何か吹っ切れたような、どこか清々しい表情をしていた。

 なんとなくエクスの気持ちはわかる。


 エクスの剣からは、ずっと鍛錬を続けてきたことが伝わってきた。

 そして、エクスは剣の才能にあふれている。神童と言われたことだろう。

 才能にあふれた自分が、量も質も厳しい鍛錬を続けて、なおはるかに高みにいる剣聖。

 しかもその剣聖は自分とほぼ歳の変わらない少女なのだ。


 勝つにしても、負けるにしても、手合わせせずにはいられない。

 そうしなければ、自分が費やした時間に折り合いをつけられない。


 ルカと戦うことで、エクスは先に進めるのだ。

 これから剣を極めるにしても、剣の道から離れるにしてもだ。


「侯爵閣下。もうよいのか?」

「はい、お時間をとらせていただいて、申し訳ありません」

「いや、構わない。こちらとしてもいい勉強になった」

「ありがとうございます」


 そして、エクスはおずおずと言う。


「あの、竜の摂政閣下」

「ん?」

「ぜひ、お話したいことがあるのですが」

「ふむ。ここではない方がいいのか?」

「ここでも構いませんが、長くなりますので……」


 エクスがそういうと、ベルダが前に出る。


「それでは、アルラさま。代官所にいらしてくださいませ」

「では、そうさせてもらおう」



 俺たちは代官所に向かうことになった。

 クルス、ユリーナ、ティミなども一緒だ。


 代官所に到着すると、ヴィヴィやステフ、子供たちはいなかった。

 竜大公が押し寄せるという異常事態だったので、子供たちを連れて宿屋に戻ったのだろう。


 俺はジールの竜舎を覗いてみる。


「がぁ……」


 ジールは部屋の隅っこに頭を向けて、両手で頭を抱えていた。

 尻尾は股に挟まり、床は漏らしたもので汚れている。


「……ジール。よほど怖かったんだな」

「りゃあ」


 パタパタ飛んでシギがジールを慰める。

 ティミもシギと一緒に慰め始めた


「竜大公六柱が上空を飛んでいたのだ。そりゃ怖かろう。もうどっか行ったから安心するのだ」

「がぁ」

「心細い思いをさせてすまなかった。ジール」


 ベルダも加わり一生懸命慰めて、やっとジールは元気になった。

 そして初めてジールはエクスに気が付く。


「があ!」

 ジールは頭をエクスにこすりつける。

 どうやら、ジールはエクスに懐いているようだ。


「ジール、久しぶりだね」

 エクスも嬉しそうにジールのことを撫でていた。



 ジールと別れたあと、俺たちは代官の応接室へと向かう。

 そこで皆が椅子に座ってから、俺は尋ねた。


「エクス。話? ってなんだ?」

「実は神託が降りたのです」

「神託というと、破壊神のか?」

「そのとおりです」

「そういえば、チェルノボクも神託を以前受けたな」

『うけた~ぴぎぃ!』


 正確にはチェルノボクと死神教団の司祭に神託が下ったのだ。

 死王がチェルノボクであることと、前死王を殺すようにという内容だった。


「シギは……どうなんだろうか?」

「りゃあ?」


 魔王の俺や聖王のクルスは神託を受けたことは無い。

 神によって神託を下す方針が違うのだろう。


「その神託の内容なのですが……」

 そこまで言って、エクスは俺たちを見回した。


「勇者伯閣下は聖神の使徒、聖王ですよね」

「そだよ、よくわかったね」

「……破壊神が、近いうちに神の使徒が集まると言っていたので」

「へー。破壊神が、そんなこと言ってたんだ」

「はい。それでアルラさんは魔神の使徒、魔王ですよね?」

「えっ? エクスよ、何を言うのだ。アルラさまに向かって魔王などと!」

「ですが、そうとしか考えられません」

「それに魔王は勇者伯閣下が討伐されたのだ!」


 そういって、ベルダはこちらの方を不安そうに見た。

カクヨムで一話先行公開中です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] これでこの世界に現存する神々の使徒は全員この場に集ったのでしょうか?
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