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412 エルケーの街並み

 みんなが俺のひざの心配してくれる。とてもありがたいことだ。


 俺のひざの呪いはチェルノボクに解呪してもらった。

 チェルノボクの先代の死王を倒したあとのことだ。

 それからは、激しく痛むということは無くなった。


「ぴぎっ」

 チェルノボクは、いつのまにか俺のひざの上に来ていた。

 そして、フルフルしはじめる。


『のろいはだいじょうぶ』

「ありがとう」

 チェルノボクは念のために呪いの具合について調べてくれたようだ。

 不死殺しの矢については、死神の使徒であるチェルノボクはとても詳しい。


「じゃあ、みんなは休んでいてくれ。ダンジョンの調査には俺が行ってこよう」

「え?! アルラさん一人で行くつもりですか?」


 クルスが驚き、ガタッと大きな音を立てて椅子から立ち上がる。

 すかさずモーフィがクルスに寄っていく。


「ああ、とりあえず軽く見てくるだけだからな」

「えー、ダメですよ! せっかくのダンジョンなのに、一人占めですか!」

「もぅ」


 そういうクルスの股の間からモーフィが顔を出している。かわいいのでつい目が行ってしまう。

 ベルダもモーフィをじっと見てほほを緩ませていた。


 モーフィのことは置いといて、俺はクルスに返答する。


「軽くだけだから大丈夫だ」

「そんなこといって、不死者の魔人まで一人で倒すつもりでしょう!」

「そ、そんなことないが……」


 クルスに図星を指されて、少し焦った。

 どうやら、クルスはダンジョンの調査を楽しみにしているようだ。

 ダンジョンに入るのも久しぶりだから気持ちはわからなくはない。

 そういうことならば、一日待つべきだ。


 いつも、クルスは頑張っている。たまにはダンジョンで羽を伸ばしてもいいだろう。


「わかった。ダンジョンに入るのは明日にしておこう」

「よかったです!」

「とはいえ、放置しておくのもなんだからな。一応転移魔法陣には封印の魔法をかけておくか」


 転移魔法陣から魔物がわいたら大変だ。

 この前、出てきたのは魔鼠だったが、それ以上に強力な魔物が出てくる可能性はある。


「それがいいのじゃ!」「もっも!」

「それなら、我も協力しよう」「りゃあ!」

 ヴィヴィとモーフィ。ティミショアラとシギショアラが協力してくれるようだ。


「転移魔法陣を点検した後、昨日の復興作業を手伝おうと思うのだが」

「大丈夫ですわ。アルラさま。大体の作業は終わりました」

「昨日の今日で、もう終わったのか?」

「はい。勇者伯やルカどの、ユリーナどの、ティミショアラの協力がありましたゆえ」

「そうだったのか」


 どうやら俺が寝ている間に、復興を進めておいてくれたらしい。


「残りは職人たちの領域ゆえ、アルラさまのお手を煩わせることはありませぬ」

 エルケーは貧しい。職も充分にあるわけではない。

 職人たちに対する雇用の提供も兼ねているのだろう。


「そういうことなら、わかった。もし人手が必要になったら気軽に言ってくれ」

「ありがとうございます」


 それから昼食が終わり、解散となった。

 ベルダは代官の屋敷に、ほかの者たちもそれぞれの持ち場に戻っていった。



 そして俺はヴィヴィ、ティミと一緒にジールの竜舎に向かう。

 ベルダの騎竜ジールの竜舎には転移魔法陣があるのだ。


 シギとモーフィ、フェム、チェルノボクも一緒だ。


「ベルダは働き者であるな」

「そうだな。頑張っている」

「若いから、おっさんとは体力が違うのじゃ」


 そういって、ヴィヴィがくすくす笑う。

 ベルダは二十代、ヴィヴィやクルスたちは十代だ。


「確かに徹夜がだんだんきつくなってきた気がする」

「アルラでもそうなのだな」

「人間はどうしてもな」

「ふむう」


 ティミはまじめな顔で何かを考えている。


 そんな会話をしながら、エルケーの街の中を歩いていく。

 ベルダの言う通り、大まかに復興は終わっているようだった。

 多くの建物は壊れたままだが、石畳の道はほぼ修復済みだ。がれきも取り除かれている。


「随分と仕事が早いな」

「うむ。ティミやモーフィが、すごく働いていたのじゃ」

「クルスもルカも大活躍であったぞ」


 ティミは古代竜。人の姿をしていても当然力は人間の比ではない。

 モーフィも小型化していても、本来の姿は巨大な牛だ。力は普通の牛の数十倍は優にある。

 クルス、ルカも普通の人と比べて、はるかに怪力だ。

 がれきの除去などはお手の物だろう


「壊れたままの建物も多いな。壊れた家に住んでいた民はどうなったんだ?」

「エルケーには空き家が多いのじゃ」

「そうじゃぞ、アルラ。空き家はあるから、そっちにみんな住んでおる」


 代官の権限があれば、空き家を利用することも可能なのだ。


「住む家が無いものはいないのか。それなら良かった」


 今は冬。家がなくなれば命にかかわる。

 これまでのエルケーの過疎化が、今回ばかりはいい方向に作用したのだろう。

 ベルダの言う通り、急がなければならない仕事はもうなさそうだ。


「それにしても活気があるな」

 ベルダの指示を受けた大工や石工たちが、建物をどんどん建て直している。

 職人たちのふるうハンマーの音がリズミカルに響いていた。


「うむ。物資もミリアの狼商会のおかげで、充足してきたのじゃ」


 不死者の王と魔人の襲撃があったものの、エルケー自体は確実に良い方向に進んでいるようだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ベルダ様、有能ですね…アルラ達が頑張ってくれているとは言え、領主が無能ではここまで復興(復旧?)が進む事もなかったでしょう(微笑) [気になる点] 徹夜がキツくなってくる…んですよねぇ(苦…
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