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373 エルケーの治安の悪い地域に向かおう

前話のあらすじ:孤児を保護しに治安の悪い地域に行くことにした。


3巻が2月に発売決定です。

同時に「ここは俺に任せて~」の1巻も発売されます。

 一応治安の悪いエリアに行くのでトムとケィ、タントはお留守番だ。

 トムは恐らく連れて行っても問題ないだろう。しっかりしているし、かなり大人だ。

 だが、ケィとタントを連れていくのは少しためらわれた。


 ヴィヴィが少し考えてから言う。


「子供たちだけで留守番させるのは不安なのじゃ。わらわが残ろうではないかや」

「やったー、してんのー遊んでくれるの?」

 ケィが嬉しそうにヴィヴィに抱き着いた。


「む? まあ、遊んでやらぬこともないのじゃ!」

 ヴィヴィが機嫌よく言う。タントも嬉しそうだ。

 だが、トムは申し訳なさそうにする。


「心配してくれるのはありがたいけど、おいらたちだけで大丈夫だよ?」

「まあ、一応念のためにな」


 恐らくトムの宿屋に手を出す愚か者はいないだろう。

 それぐらい狼商会の名は売っておいた。

 だが、代官が赴任し治安が完全に回復するまでは油断できない。


「ヴィヴィ、留守番を頼む」

「わかっておるのじゃ。気楽に待っているとするのじゃ」


 そう言ったヴィヴィの腕にしがみついたままケィが言う。


「してんのー。まほうじんおしえてー」

「魔法陣かや? 難しいから無理だと思うのじゃ」

「えー」

「仕方ないのじゃ。代わりに簡単な魔法を教えてやるのじゃ」


 ケィは魔法に興味があるようだ。

 タントもケィの隣で目を輝かせている。魔法へのあこがれがあるのだろう。


 俺とクルス、フェム、モーフィ、そしてシギショアラと一緒にトムの宿屋を出た。

 クルスは相変わらず獅子の被り物をかぶっている。

 その上、今日のクルスはモーフィの背中に乗っている。とても目立つ。


「ふんふーん」

「もぅ、もっもー」


 クルスとモーフィはご機嫌だ。それをエルケーの人々は少し怯え気味に見つめていた。

 モーフィは可愛いので怯えさせる要素がない。やはり獅子の被り物が怖いのだろう。


 しばらく歩いて、治安の悪いエリアについた。


「ひっ」

 歩いていたチンピラがクルスを見て息をのむ。


「あの、ちょっと……」


 クルスはにこやかに語りかけた。

 だが、チンピラは気付かないふりをして、足早に走り去っていった。


「聞こえなかったのかな?」

「もぉ?」

「モーフィ、追いかけよっか?」


 クルスが追いかけようとする。一応止めたほうがいいだろう。

 過剰に怯えさせてもあまりよくない。


「まあ、クルス待ちなさい。聞こえたけど、忙しかったのかもしれないぞ」

「確かに、アルさんの言う通りかもですね。トイレを我慢してたのかな。そんな顔してたし」

「……そうだな」


 さらに少し歩くと、遠くにダミアンの姿が見えた。

 ちなみにクルスはダミアンとは面識がない。


「あっ」

 俺たちに気付いてダミアンは慌てて走り去ろうとする。


「フェム頼む」

『任せるのだ!』


 フェムが矢のような速さで駆けだした。すぐにダミアンに追いつく。

 ダミアンの背中の服を咥えて足を止めさせる。特に転ばそうとはしていない。

 だが、慌てすぎたせいで、ダミアンは勝手に転んだ。


「がう」

「なにも! なにも! 悪いことしないから、ほんとにしてないから!」


 怯えたダミアンが手足をバタバタさせている。

 俺たちもすぐに追いつく。


「ダミアン、久しぶりだな」

「へ、へい。今日は何の御用で? あ、誓って最近は悪いことしてませんよ!」

「じゃあ、なんで逃げたんだ?」

「獅子が怖くて……つい」

「なるほど」


 気持ちはわからなくもない。

 怯えるダミアンにクルスが顔を近づけて言う。


「君がトムいじめで有名なダミアンだね。顔は覚えた! これからよろしくね!」

 クルスは露骨に脅している。トムをいじめたということに腹が立っていたのだろう。


「ひぃ、ごめんなさい、ごめんなさい」

「怯えなくていいよ―。トムをいじめたりとか、悪いことしなければ特に何もしないよー」

「はい、二度といたしませんから!」


 俺は怯えるダミアンの肩に手を乗せる。


「ダミアン。この辺りに来たのは、聞きたいことがあってだな」

「へ、へい! な、何でも聞いてください」

「この辺りに孤児が住んでたりするのか?」

「へ? 住んでると思いますが、俺は特に何もしてませんよ?」


 それを聞いてクルスがにこやかに言う。

「それはなによりだよ。悪いことしてたら、ただじゃすまなかったよー」


 明白な脅しだ。ダミアンは顔を引きつらせた。

 怯えるダミアンに俺は優しく尋ねる。


「で、孤児たちがどのあたりに住んでるとか知らないか?」

「俺も完全に知っているわけではないんですが……」


 そう言いつつもダミアンは色々教えてくれた。

 最近、孤児たちが残飯を集めている場所や寝床などだ。


「そうか。今度孤児にあったら、優しくしてやれ」

「へ、へい! 肝に銘じます」

「もし孤児たちを見かけたら、お菓子をあげるからトムの宿屋に来るように伝えてくれ」

「わ、わかりました」

「子分たちにも、しっかり言い含めておけよ?」


 ダミアンは何度もうなずいた。

 これで、もし俺たちが孤児を見つけられなかったとしても大丈夫だ。

 ダミアンやその子分たちが伝言してくれるはずだ。


 それから俺たちはダミアンから教えてもらった場所へと向かった。

最近のダミアンはとりあえず悪いことはしていないようです。

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