369 冒険者ギルドに一旦戻ろう
前話のあらすじ:牢屋を整備し子供を保護した。
3巻が2月に発売決定です。
同時に「ここは俺に任せて~」の1巻も発売されます。
最終チェックをしてみると、ヴィヴィの魔法陣の凄さがわかる。
「それにしても、断熱効果がすごいな。ここで暮らせそうなぐらいだ」
ヴィヴィの魔法陣の腕前の向上のおかげだろう。
タントのような家のない子供じゃなくとも、ここで暮らしていけそうだ。
「残念ながら居住性が向上してしまったのじゃ。もう少し隙間風吹かせておいた方がいいかや?」
「いや、大丈夫だ。居住性は向上しても、人間関係がしんどそうだからな」
ならず者七人。監守なしで狭い場所に閉じ込めるのだ。快適ではないだろう。
いや、快適ではないどころではない。少しまずい気がしてきた。
喧嘩で死人がでてもおかしくない。
「……冒険者にご飯運びだけじゃなく監守も頼むしかないか」
「……そうじゃな」
俺はちらりとタントを見た。タントに頼むことも考えたがやめたほうがいいだろう。
監守を子供に任せるのはまったくもってよくない。
「冒険者が滞在してもらうなら、さらに居住性を上げたほうがよいのじゃ」
「頼む。その間、俺は掃除をしておく」
「おれも、て、手伝います!」
「ありがとう」
もともと監守用の部屋はあるのだ。それにヴィヴィが魔法陣を刻んでいく。
俺とタントは一緒に掃除をした。
加えてヴィヴィに頼んで、牢屋の喧嘩を止めるための魔法の仕掛けを作っておく。
「ここを操作すると雷撃が出るのじゃ! 死ぬことはないがしばらく動けなくなるのじゃ」
「おお、素晴らしい。これで大丈夫だろう。一旦冒険者ギルドに戻るか」
「よし、タント。わらわたちと一緒に来るのじゃ」
「はい」
だいぶタントは落ち着いたように見える。
牢屋の外に出ると、吹雪いていた。
「こんなに吹雪くのは久しぶりだな」
「そうじゃな! 冒険者ギルドに急ぐのじゃ」
「あ、あの。上着おかえしします」
タントが俺が与えたローブを返してこようとする。
「それはタントにやる。着ておきなさい。寒いか?」
「い、いえ、暖かいです。ありがとうございます」
「ならばよかった」
ローブには耐魔、耐衝撃、耐熱に加えて、耐寒耐暑などの魔法がかかっている。
だから、充分暖かいはずだ。
タントを抱えて、ヴィヴィがモーフィの背に乗せる。
「アルも乗るのじゃ」
「三人はどうかと思う」
「もっ!」
モーフィが乗れと言ってくる。自信があるのだろう。
「わかった。頼む」
「もっもー」
俺が乗ると、モーフィは元気に走り出した。
「りゃあ」
タントを警戒してか、静かにしていたシギショアラが小さく鳴いた。
モーフィが走ってくれたおかげで、俺たちは冒険者ギルドにすぐ到着した。
俺たちが、モーフィの背中から降りていると、クルスが駆け寄ってくる。
いつものようにクルスは獅子の被り物をかぶっていた。
「アルさん! お疲れさまです! どうでした……。む? その子は?」
「牢屋の先客で、タントという子だ」
「そうでしたかー。タントちゃんよろしくねー」
「は、はい、よよろしくおねがいします」
明らかに怯えている。獅子の被り物を喜ばない子供は初めてかもしれない。
「変わった格好をしているが、危ない奴じゃないから安心しなさい」
「はい」
「わふわふ!」
「ひぃっ」
フェムにも怯える。フェムは大きいので怯えるのは仕方がない。
それからみんなにタントのことを紹介しておいた。
タントは相変わらず怯え気味だった。そのうち慣れるだろう。
「お菓子でも食べなさい。あったかいお茶もあるわ」
ルカがタントを椅子に座らせて可愛がっている。
タントがお菓子を食べ始めたのを見て、ルカは安心したようにこっちに来る。
「タントちゃんのことは、とりあえず置いといて……。牢屋の準備はできたのかしら?」
「ヴィヴィのおかげで牢屋の準備は完了だ」
「さすがヴィヴィちゃん!」
「もっも!」
「大したことではないのじゃ! アルの力も大きいのじゃぞ」
クルスはヴィヴィの頭を撫でまくっていた。
モーフィも嬉しそうにヴィヴィの手を咥えている。
そして、俺はルカに尋ねる。
「尋問はどうなった?」
「みんな素直に話してくれたわよ。フェムのおかげね」
「わふぅ」
フェムは誇らしげに、尻尾を振りまくっていた。
「さすがフェムだな!」
『当然なのだ!』
俺はフェムを撫でまくる。
フェムは尻尾をビュンビュン振りながらも、誇らしげだ。
ルカによると、一人ずつ順番に全員から話を聞いたとのことだ。
尋問されていない者たちは、ユリーナが監視し会話させないようにしていたらしい。
「で、なにがわかったのじゃ?」
「御用商人は、ただの悪徳商人みたい」
「黒幕みたいなのはいないのかや?」
「いないというか、自称魔王と魔人が黒幕みたいなものよね」
「それもそうじゃな」
特に何もないのなら、その方がいい。
「ゾンビに関しては何て言ってた?」
「魔人から受け取ったと言っていたわね」
「儲けた資金に関しては?」
「それが少し面倒なのよね」
ルカが聞きだしたところ、王国の大都市に預けてあるらしい。
没収するには色々な手続きが必要だ。代官に任せるしかないだろう。
財産の没収は代官に任せた方がよさそうです。
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