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336 エルケーの冒険者ギルドに行こう

前話のあらすじ:魔王城に出かけようという話になった。


2巻がGAノベルから発売中です。

 ダミアンから自称魔王に連絡が行く可能性がある。

 ダミアンにとっては失態なので、すぐに報告しないかもしれない。

 それでも、自称魔王の手のものはダミアン以外にもいるだろう。


「さて、なるべく急いで魔王城に行くか」

「そうね、あたしもついて行くわね」

「私も行くのだわ」

「りゃっりゃ!」

「当然わらわも行くのじゃ!」

「もっもー」


 ルカ、ユリーナ、シギ、ヴィヴィ、モーフィが同行を表明する。


「私も連れて行ってください」

「そうだな。お兄さんがいるかもだしな」


 レアも同行したほうがいいだろう。

 それを聞いていた、ティミショアラが言う。


「ふむう。ならば我は残ろうかのう」

「りゃ?」

「シギショアラと一緒に行きたいのはやまやまなのだが、戦力的には充分であろうし」

「まあ、戦力は足りているな」

「それにこっちの方に自称魔王の配下がくるかもしれないしのう」

「そうしてもらえると助かる」


 ティミがトムたちと一緒にいてくれるならば安心だ。

 ダミアンたちが襲う可能性は低いだろう。

 だが、自称魔王がどのくらいトムの宿屋に執着しているのかわからない。

 ダミアン以外の自称魔王の手のものに襲われないとも限らないのだ。


 俺は我が弟子ステフに尋ねる。

「ステフはどうする?」

「ステフ、我の方に残らぬか?」


 ティミが留守番組に勧誘しはじめた。


「人手が足りないのです?」

「うむ。足りないというほどのことでもないのだが、一人だと不便であるからな。買い物とか」

「なるほど、それもそうなのです」


 ティミしかいないと、トム、ケィ、ティミがひとまとめに動かないとならない。

 それに、買い物に出ると、宿屋が無人となる。

 誰かが残っていた方が安心だ。


「では、私もお留守番しますね」

「すてふねーちゃん! ケィとあそぼ!」


 ケィはステフが残ることが嬉しいようだ。

 ステフの立派な尻尾に抱き着いている。それをみて、ティミは少し寂しそうだった。

 ティミはとても強いので、子供に懐かれにくいのかもしれない。

 だが、ティミは面倒見がいいので、すぐに懐かれるだろう。


 班分けがおわったところで、ヴィヴィが言う。


「魔王城に行く前に冒険者ギルドに顔を出すのはどうじゃ?」

「情報収集?」

「そうじゃ」

「それがいいかもな」

「交渉などは、私に任せて欲しいわ!」


 一応冒険者ギルドの幹部でもあるルカが、交渉してくれるなら心強い。

 俺たちはまず冒険者ギルドに向かうことにした。


「じゃあ、行ってくる」

「うむ。気を付けるのだぞ。ギルドに寄った後、そのまま魔王城に向かうのだな?」

「何事も無ければそうだ」


 ティミは名残惜しそうにシギを撫でていた。


「師匠、ご武運を!」

「いってらっさい!」

「気を付けておくれよ!」


 ティミ、ステフ、ケィ、トムに見送られて、宿屋を出る。


「冒険者ギルドはこっちね」

 ルカが先頭で歩いていく。


「うーむ。人は多くて活気はあるように見えるけど」

「皆、貧しそうじゃな」


 街の中の様子を観察しながら歩いていく。

 衣服などが、みすぼらしい。

 冬だというのに家から立ち上る煙もほとんどない。

 暖房に使う燃料を買う金も足りないのかもしれない。

 

「たまにまともな服装の奴がいると思えば、チンピラなのじゃ」

「ネグリ一家のダミアン一派以外にも、チンピラはたくさんいそうだな」

「ふむー。代官は本当に何をしているのじゃ」


 ヴィヴィは少し怒っているようだ。


「あとで、代官ともお話し合いをしたほうがいいかもな」

「ちょっと待つのだわ。アルのお話し合いは不穏だから、代官とのお話し合いは私がやるのだわ」

「不穏にするつもりはないが……。まあユリーナがしたいならユリーナに任せる」

「それがいいと思うわ。安心だし」

 ルカまでそんなことを言う。


 道中、一度チンピラに絡まれたが、ルカがはり倒した。


「本当に治安悪いわね」

「王都の八番街よりずっと悪いのだわ」

「王都はなんだかんだで、隅々まで行政が機能しているからな」


 そして、無事冒険者ギルドに到着した。


「本当にここがギルドなのかや?」

「看板にはちゃんと冒険者ギルドって書いてあるな」

 冒険者ギルドの建物は、トムの宿屋より更にぼろくて小さかった。


「お邪魔するわ」


 ルカが、ためらわずに、まっすぐ入って行く。

 ルカにくっついて、俺たちも中へと入る。

 建物の中にはカウンターがあり、その奥に一人の男が座っている。

 おそらくエルケーのギルドマスターだろう。


「な、なんだお前たちは」

 ギルドマスターは少し怯えたような表情を見せる。


「私たちは冒険者なのだけど。随分と寂しいわね」

「そうか。冒険者か」


 ギルドマスターは、あからさまにほっとする。

 普段の客層がわかるというものだ。

 おそらく、日常的にチンピラたちに因縁をつけられているに違いない。


「新規の冒険者など久しぶりだ」

「辺境の冒険者ギルドのギルドマスターとは思えない物言いね」

「あんたらも、はやいうちに他の街に行った方がいいぞ」

「どういうことなの?」


 ルカが尋ねると、ギルドマスターはぽつぽつ語りはじめた。


 エルケーの街は依頼にかかる税率が、異常に高いのだという。


 基本、冒険者の依頼にかかる税率はどの街、どの領も一定だ。

 とはいえ、王国法などで決まっているわけではない。

 税率は領主が決められる。

 だが、領主は冒険者ギルドの有効性を理解しているので、低く抑えてくれるのだ。

 それは、冒険者のことが嫌いな領主でも、基本変わらない。


「ずいぶんと代官は冒険者が目障りなようね」


 ルカは深刻そうにつぶやいた。

冒険者ギルドは閑古鳥が鳴いていました。

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