表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

336/455

335 トムの宿屋を調べよう

前話のあらすじ:冒険者ギルドもあまり動いていないらしい。


2巻がGAノベルから発売中です。

 真面目な顔で聞いていた、ヴィヴィが言う。


「ルカ、何かしらんのかや? 冒険者ギルドのお偉いさんなのじゃろう?」

「あたしは冒険者ギルドのお偉いさんと言っても、王都管区長よ。この辺りはあたしの管轄外になるの」

「そうじゃったか」

「だから、詳しいことはわからないわ」


 それは仕方のないことかもしれない。

 ルカは頑張っているが、冒険者ギルドの管区長は本来名誉職なのだ。


 俺はユリーナに尋ねる。


「ユリーナ。エルケーでは教会はどうなっているんだ?」

「一応小さな教会はあって、司祭が一人いるのだわ」

「信者は?」

「まあ……そんなにはいないのだわ」


 ユリーナがいうには信者はほぼ皆無らしい。

 布教のために若手聖職者がたまに来るだけのようだ。

 エルケーは旧魔王領における布教の中心地となっているらしい。

 だから、一旦若手聖職者はエルケーに来てから、各地に散っていくとのことだ。


「さすがの教会も、旧魔王領での影響力は限定的なんだな」

「そう言わざるを得ないのだわ」


 俺たちがそんな会話をしている間、幼女ケィはモーフィの背に乗っていた。


「きゃっきゃ」

「もっも!」

「りゃ!」


 シギショアラもモーフィの背に一緒に乗って楽しそうだった。

 ケィが喜んでいるのを見て、兄のトムも嬉しそうにしている。

 子供が喜んでいるのを見るのはとても嬉しい。


「エルケーの街にも当然子供はいるし、善良な民が暮らしているんだよな」

「当たり前なのじゃ」

「代官はなにをしているんだ?」

「気になるけど……。今は自称魔王を何とかしたほうがいいんじゃないかしら?」


 ルカの言うとおりだ。


「とりあえず、自称魔王から何とかするか」

「そうね!」

「念のために聞くが、代官は魔王城にはいないんだよな?」


 代官は何もしていないようだが、王の代理人だ。

 喧嘩を売ると面倒なことになる。


「そうね、教会の近くの屋敷が代官所になっているみたいなのだわ」

「それなら安心だな」


 俺がそういうと、ティミショアラが身を乗り出した。


「お、アルラ。魔王城に乗り込むのだな?」

「その予定だ」

「我が上空から舞い降りようか? 吠えてもいいし一発ブレスをかましても良いぞ」

「……いや、それはやめておこう」

「えー……」

「りゃあ……」


 ティミと、モーフィの背の上にいるシギはがっかりしている。


「魔王城はエルケーの街と距離が近いからな……」

「ふむー」

「ティミの咆哮が響いたら、街が恐慌状態に陥るだろう」

「たしかに、そうよね。やめておいた方がいいわ」

「アルラとルカがそういうのなら、咆哮はやめておこうではないか」


 それからティミは言う。


「……ブレスも駄目なのか?」

「魔王城が壊れるしな。それにティミのブレスなんて食らったら、自称魔王一派まるごと死んじゃうだろう」

「そうなのだわ。死んだらどういう集団なのか、精霊事件とは一体何なのかわからなくなってしまうのだわ」


 その時レアがおずおずと言った感じで、手を挙げた。


「あの……」

「レア、どうした?」

「兄が、魔王城にいるっていう可能性はないのでしょうか?」

「あっ、あるのである」


 ティミが今気づいたという表情になった。

 両手で口元を抑えていた。


「すまぬ。我の考えが至らなかったのだ」

「い、いえ」

「我のブレスが降りそそげば、もし、レアの兄がいたとしても亡くなってしまう」

「その可能性は高いだろうな」

「ブレスはやめておこう」

 そういうことになった。


 俺はトムに尋ねる。


「ところで、この建物に何かあるのか?」

「なにって?」

「ダミアンたちが欲しがる何かないか?」


 なぜか自称魔王がダミアンにこの家を手に入れろと命じたのだ。

 その理由が知りたい。


「うーん。ないと思うんだけどなー」

「もともとこの場所に何かあったとか聞いてないか?」

「うーん。死んだ父ちゃんなら知っていたかもしれないけどー」

「そうか」


 ヴィヴィが言う。


「調べてみたほうがいいのじゃ」

「確かにな。トム。調べていいかい?」

「もちろんいいぞ!」


 トムが快諾してくれた。


「モーフィも鼻で協力してくれ」

「もっもー」


 モーフィは背中にシギとケィを乗せたまま、鼻をクンクンさせる。

 俺とヴィヴィは魔法で探査だ。

 慎重に調べていく。


「魔法陣的なものはないのじゃ」

「そうだなー」

「アル。魔法的な何かありそうかや?」

「今のところなさそうだけどな……」


 ルカは魔法探査中の俺の近くを歩いていた。

 手元を興味深そうに確認してくる。


「これは? ちょっと古そうに見えるのだけど」

「これは遺跡の痕跡だな。エルケーの街自体、遺跡の上にできた街だからな」

「自称魔王は遺跡に目を付けたのかしら?」

「うーん。エルケーの街全体が遺跡の上にあるしな。トムの宿屋が特別というわけではないから」

「ふむー」


 ルカもよくわからないようだ。


「アル。やはり魔法的な何かはないのじゃ」

「そうだな」


 俺とヴィヴィが調べた結果、特に魔法的な何かがあるようには思えなかった。


「じゃあ、どうして自称魔王が欲しがっているのかしら」

「自称魔王に直接聞いてみるか」

「それが早いかも」


 俺たちは魔王城に出向くことに決めた。

懐かしの魔王城です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ