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【web版】最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる  作者: えぞぎんぎつね
9章

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330 ダミアンの家にいこう

前話のあらすじ:ダミアンは悪い奴だった。


2巻がGAノベルから発売中です。

 トムから聞いた事情をみんなに話す。

 皆真面目に聞いていた。


 ケィをひざの上にのせて、頭を撫でていたユリーナが言う。


「それは、問題なのだわ」

「とてもじゃないけど、普通の子供が返せる額ではないのじゃ」

 ヴィヴィも深刻そうにうなずいた。


「何とかしたほうがいいわね」

 ルカがそうつぶやくと、レアとステフもうんうんと頷いている。


 そして、俺はトムからダミアンの家を聞いて出向くことにした。


「ルカとユリーナは待っていてくれ」

「まあ、いいけど。どうしてなの?」

「大勢で押し寄せてもな。それに、留守中に何か来ても困るし」


 ユリーナはうんうんと頷く。

「大勢で向かって、怯えられて逃げられても困るものね」

「逃げるってことはないと思うけど……。すぐに駆け付けられる範囲で適当に散歩でもしているわ」

「土地勘を得るのは大切なのだわ!」

「みんなはどうするの?」


 ルカに尋ねられて、ヴィヴィは言う。


「わらわはアルと一緒に行くのじゃ」

「我も、せっかくだし、アルラについて行くかのう」

「もっもー」

「りゃっりゃー」

「師匠、私も同行させていただくのです!」

「じゃあ、レアは私たちとくるわね」

「はい」


 そんなこんなで、チーム分けが決まった。

 俺に同行するのは、ヴィヴィ、ティミ、シギ、モーフィにステフだ。

 ルカとユリーナ、レアは周囲を観察して回るという。

 それも大切な仕事である。


「お兄さんたち、お願いだよ!」

「大船に乗ったつもりでいていいぞ」

「いってらっさい! シギちゃんもいってらっさい!」

「りゃっりゃ!」


 トムとケィに見送られて俺たちは出発した。


 しばらく歩いて、ヴィヴィが言う。


「結構なボロ屋だったのじゃが、ダミアンはなぜ欲しがっておるのじゃ?」

「トムたちの家は結構大きかったからな」

「大きくてもボロ屋なのじゃ」

「ダミアンが欲しいのは土地じゃないか?」

「土地かや?」


 ヴィヴィは真面目に考えている。

 大きな家に住んでいるぐらいだ。

 トムたちの両親はそれなりに財産を持っていたのかもしれない。


 古いうえに手入れがされていない。だからボロボロだ。

 それでも、大きいし立地も悪くない。

 それこそ宿屋でも建てれば、儲かるかもしれない。


 そんなことを、ヴィヴィに説明した。

「問題は、エルケーの街に訪れる旅人の数が少なそうってところだな」

 いい立地でも、そもそも街に旅人がこなければどうしようもない。


「師匠。エルケーの街に冒険者ギルドはあるのですか?」

 そう聞いてきたのはステフだ。


「多分あると思うぞ」

 エルケーの周りには魔物がたくさんいるはずだ。

 だから、冒険者ギルドは、きっとあるに違いない。


「詳しくは後でルカに聞いてみよう」

「あるのならば、一度顔を出しておきたいのです!」

「そうだな。一回見てみたいな」

「りゃあ?」


 シギは俺の懐から顔だけ出す。そして、きょろきょろ街の様子を眺めている。

 シギにとっても、魔族の街は新鮮なのかもしれない。


「さて、アルラよ。どういう方針で行くのだ?」

「どういう方針とは?」

「脅すのか、下手に出るのか、とかそういうやつだ」

「そうだなー」

 俺は少し考える。


「基本、脅す方向でいいかな」

「師匠、初手から脅されるのです? 話し合いから入らなくていいのです?」


 ステフが驚いている。常識的な冒険者の反応だ。


「相手は、悪党のネグリ一家だからな。大金を積むか、脅すかしないと情報は得られまい」

「なるほど……そういうものなのです?」

「多分な。脅し気味の話し合いだ」


 情に訴えるとか、道理を説くとかは意味がないだろう。


「脅すのであるな。得意である」

「ティミ、吠えるのは控えてくれ」

「む?」

「む? じゃないぞ。大騒ぎになるからな」

「……そうか」

「……りゃあ」


 ティミとシギがしょんぼりする。

 そうこうしている間に、ダミアンのアジト前に到着した。

 アジト前にはチンピラ風の男が二人談笑していた。

 見張りを兼ねているのかもしれない。


「じゃあ、まずは俺が行こう」

「任せたのじゃ。わらわたちは眺めておくのじゃ」


 そして、俺はアジトに向かって歩いていく。


「あ? なんだ、てめえは」

「ここがダミアンさんの家であってますか?」

「てめえ、こっちの質問に答えろよ」

「いやあ、ダミアンさんの家じゃなかったら、迷惑かけちゃうかなって」

「なに言ってんだ、てめえ」


 とりあえず、最初が肝心だ。

 俺はチンピラ一人のこめかみ辺りを、左手で掴む。

 親指を左のこめかみに、小指を右のこめかみに当てて、五本の指にぐっと力を入れる。


「いで、いでええええ」

 チンピラは俺の左手を両手で必死に握りながら、ひざをついた。


「で、ここがダミアンさんの家であってますか?」

「てめえ、ふざけんじゃねえ」


 もう一人のチンピラが、殴り掛かってきた。

 そのチンピラを右手で首を掴んで持ち上げた。


「ぐぐ、ううう」

 苦しそうに呻く。


「で、ここがダミアンさんの家であってますか?」

「あ、あってる、あってるから……」


 こめかみを握られている方が、答えてくれた。

 俺は二人とも解放する。地面にぐしゃりと崩れ落ちた。


「もう、面倒だから、さっさと答えてくれよ」

「……てめえ、何者なんだよ」

「ダミアンさんはご在宅かな?」

「……」

「まただんまりか」


 そう言って俺がチンピラに手を伸ばすと、

「い、いる! いるから!」

「人間、正直なのが一番だよ」


 そう言ってほほ笑むと、俺はダミアンの家の中に入って行った。

ダミアンは中にいるようです。

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