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284 精霊王の描いた絵

前話のあらすじ:精霊王が絵を描いてくれた。


10月12日前後に二巻がGAノベルから発売になります。

 ほぼ全員の視線がルカに集まる。

 お世辞にもうまいとは言えない絵から何を読み取ったのだろうか。


「一体、何がわかったんだ?」

「それはね……」


 ルカは精霊王の描いた絵を指さしながら説明していく。


「絵をよく見て欲しいの」

「ふむふむ?」


 ほとんど全員で絵を覗き込む。まさに子供の絵である。

 ユリーナが言う。


「可愛いのだわ」

「たしかに」

 クルスも同意した。


「そんなことは今はいいの。ここに注目して」

「……獣耳じゃ」


 真剣に見ていた、ヴィヴィが言った。

 確かに、頭に三角の耳らしきものが生えている。

 上位精霊が獣人と判断したのは獣耳だったからだろう。


「そこも大事だけど、ここも」

 ルカが指さしたのは、左右の獣耳の間だ。


「これは……寝ぐせ?」

「いや、角だろう」


 クルスの言葉をティミショアラが否定した。


「なるほどー。角かー」

 クルスは素直にうんうんと頷いている。


「角というと魔族か?」

「かもしれないわね」

「ちょっと待つのじゃ。魔族には獣耳ははえておらぬのじゃぞ?」


 魔族のヴィヴィが否定する。

 クルスは腕を組んで考えている。


「珍しい魔族なのかな? ヴァリミエちゃんはどう思う?」

「わらわも見たことがないのう」

「ヴィヴィちゃんもヴァリミエちゃんも見たことないのかー」


 こういうときは学者であるルカに聞くのが一番だ。


「ルカはどう考えているんだ?」

「そうね。魔族と獣人の子供かも」

「ふむ?」


 それはとても珍しい存在だ。だがいないわけではない。


「ルカよ。その場合、魔族になるのかや? それとも獣人になるのかや?」

「生物学的な話? それとも、行政システムの話?」

「どちらも知りたいのじゃ」


 ヴィヴィの尋ねたことは俺も知りたいことだ。

 みんなもそうだったのだろう。ルカを大人しく見つめている。


「生物学的には魔族と獣人の子は、魔族と獣人の子に他ならないわ。どちらの親の形質が色濃く出るかは、その時々によって違うのだけど」

「そうなのじゃな」

「行政システム的には、村や町によって違うわね」

「ムルグ村ではどうなのかや?」


 それにはミレットが答えてくれる。


「ムルグ村では種族は記録しないことになっていますね」

「そうなの? どうしてしないのかな?」

 クルスが首を傾げた。


「クルスちゃんも知っているように、クルスちゃんの前の領主って、魔族とか嫌いだったでしょう?」

「うん」

「種族を記録してたら、村の住人に魔族が加わったときに困るから」

「なるほどー。領主からはなにも言われなかった?」

「領主が知りたいのは全体の人口と労働人口でしょ? 報告しなければ聞いてくることはまずないかも。実際クルスちゃんも種族については聞いて来なかったし」

「たしかに、そうだったね」


 クルスは納得したようだった。


「クルスちゃんに領主が替わったことだし、記録してほしいという要望があれば、記録するかもだけど」

「いや、その必要はないよ! 面倒だもんね!」

「ありがとう」


 ムルグ村は居場所のなくなった者たちが作った村だ。

 そういう経緯もあって、種族は記録しないことになっているのかもしれない。


 ユリーナがルカに尋ねる。


「ねえ、冒険者ギルドでは、種族をどうやって記録しているのかしら? 気になるのだわ」

「冒険者ギルドは、自己申告制だから。獣人と魔族どちらで登録しても構わないわ。もちろん両方書いてもいいことになってるのよ」

「そうなのね」


 俺も冒険者生活が長いが、そういう細かなシステムは知らなかった。


「ユリーナ。教会はどうなんだ?」

「教会は両親を記録するのだわ。宗派の記録がメインなのだけど、一応種族も記載することになっているわね」


 種族によって信仰の形態は異なることが多い。

 それゆえのシステムだろう。


 クルスが真面目な顔で言う。


「ところで、魔導士ギルドはどういうシステムなのかな?」

「アルやステフはギルドに入ったとき、種族を書いたのかしら?」


 ルカに聞かれて思い出す。もう十五年以上前のことだ。


「書いたような書いてないような。ステフはどうだった?」

「書いたでありますよ」

「そうか。じゃあそうなんだろうな」


 真剣な表情で、ルカがうなずいた。


「獣人がいじめられている魔導士ギルドなら魔族って登録した可能性もあるかもしれないわね」

「それはそうかも」

「クルス。明日にでも魔導士ギルドに魔族の精霊魔法使いの情報も集めるようお願いしてほしいのだけど」

「任せておいて!」


 ヴィヴィがクルスに言う。


「直接行かないで、報告書を持ってきた使者に言うだけにした方がよいと思うのじゃ。怖がられているからのう」

「えー。怖がられてるのはアルさんだよー」


 そんなことを言いながら、ヴィヴィとクルスは笑いあっていた。

 とても心外だ。俺は心優しい魔導士だというのに。


「教会の方も調べなおすのだわ」

「一から調査のしなおしかー。大変だなー」


 困った顔をするクルスの頭をユリーナが撫でた。


「そうでもないのだわ。魔族は獣人よりずっと少ないし」

「なるほどー」

「魔族の冒険者はそれなりにいるけど、獣人よりは少ないかな?」

「そうなんだ!」


 クルスは少し元気になったようだった。

一から調査のし直しです。

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