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268 古代竜のお茶会

前話のあらすじ:試合が終わったのでお菓子を食べる。


10月15日に二巻がGAノベルから発売になります。

 試合で魔力を使ったので、甘いものが身に染みる。とてもうまい。

 古代竜のお菓子を選ぶセンスは中々なものらしい。


「もぉぅ」

 モーフィはテーブルにあごを乗せている。

 そんなモーフィにコレットやヴィヴィがお菓子を食べさせていた。


「モーフィ、おいし?」

「もぅ!」

「どんどん食べるといいのじゃ」


 コレットもヴィヴィも楽しそうだ。

 自分で前足をテーブルの上に乗せて、お皿からお菓子を食べればいいと思う。

 確かに行儀が悪いかもしれないが、牛にマナーを求める人はあまりいないだろう。


 実際フェムはそうしている。


「これは気付かず、申し訳ございません」


 古代竜の一人が、お菓子をフェムとモーフィの食べやすい位置に移動させた。

 テーブルのふちにお菓子があれば、フェムもモーフィも椅子に座ったまま食べられる。


『ありがとう』

 フェムはお礼を言ってお菓子を食べた。

 だが、相変わらずモーフィはおやつを食べさせてもらっている。

 食べさせてもらうのが、好きなのだろう。


 そして、俺はシギショアラにお菓子を食べさせる。

 それをティミショアラは楽しそうに見ていた。


「りゃあ」

「シギショアラ。うまいであろう?」

「りゃっりゃ!」

「そうかそうか。シギショアラが好きそうなおやつを用意させたのだ」


 シギが喜んでいるので、ティミショアラも機嫌がよい。

 一方、ステフはどこか真剣な表情で考え込んでいる。


「ステフどうした? 試合で気になることでもあったのか?」

「い、いえ……」

 少しためらった後、ステフは俺とティミを見た。


「あの……。私自身の試合よりも、師匠とティミさんの試合が気になったのです」

「うむ。確かにあれは気になるのじゃ!」


 モーフィに菓子を食べさせながら、自分もむしゃむしゃ食べていたヴィヴィが言う。

 モーフィもこの話題に興味があるのかもしれない。


「もっ」

 テーブルに顎をのせたまま、こちらに来た。

 俺はモーフィの頭を撫でてやる。

 モーフィが近づいてくると、つい頭を撫でてしまう。

 これは、おそらくモーフィの不思議な能力に違いない。


 俺がモーフィを撫でていると、ステフが真剣な表情で言う。


「正直、何がどうなっているのかすら、私にはわからなかったのです」

「やっていることは単純なんだけどな」


 互いに魔法で攻撃して、防いでいるだけだ。

 ティミがこちらを見ながら言う。


「確かに普通の魔導士と比べれば、使う魔法の種類が多かったかもしれぬな?」

「古代竜のティミショアラを相手にするんだ。出し惜しみは出来ないからな」

「そうか!」

 俺がそういうと、ティミは嬉しそうに微笑み、シギの頭をなでる。


「りゃありゃあ」

 シギも嬉しそうにティミの指をぺろぺろ舐めた。


「私も師匠みたいになれるでしょうか……?」

「そうだなー」


 なんと答えていいのか難しい。

 正直、難しいのではないかと俺は思う。だが、絶対に不可能とは言い切れない。

 人の限界がどこにあるのかは、誰にもわからない。

 当然俺にもわからない。


 俺が答えに困っていると、ヴィヴィが胸を張って言う。


「あれは普通の人間には到達できぬ水準じゃぞ」

「そうなのです?」

「もちろんそうじゃ」

「魔族のヴィヴィさんでもそうなのです?」


 その問いで、俺はやっと理解した。

 ステフは自分が獣人だということを気にしているのだろう。

 自分と俺との違いが、種族的なものなのか、知りたいのだ。


「魔族のわらわでも当然そうじゃ。魔王軍四天王という、魔族の中のエリート中のエリートであるわらわでも無理じゃ」

「ミレット姉さんや、コレット姉さんでも無理なのです?」

「ミレットとコレットは、エルフの中でも才能は群を抜いておる。それでも、まず無理じゃ」


 ヴィヴィは断言した。

 俺はステフに向けて言う。


「ステフ。魔法において、種族の差がないとは言わない。だが、個人差の方が大きい」

「はい」


 近くで話を聞いていたコレットが俺のひざの上に乗る。


「コレットは、そのうちおっしゃんを抜こうとおもってるんだー」

「おう、頑張れ!」

「えへへー」


 実際に抜けるかどうかはわからない。それでも努力することは無駄ではないだろう。

 それに、魔導士ならば、そのぐらい野心があった方がいい。


 コレットに比べて、ステフは少し自信が足りない。


「客観的に評価して、ステフの魔法の実力は相当高い」

「そうなのでしょうか」

「魔導士ギルドの魔導士ぐらい倒せるだろう」

「そんな、私ごときが……」

「ステフは俺の弟子だからな。自信を持て。そこらの魔導士には負けないぞ」


 俺のひざの上に座ったコレットが見上げてきた。


「コレットはつおい?」

「コレットも、かなり強いぞ」

「えへへー」

「私はどうですか? アルさん」


 ミレットが横から聞いてきた。


「ミレットもかなり強いぞ」

「そうですか。嬉しいです」


 そこにヴィヴィが言う。


「よいか、ひよっこ魔導士ども!よく聞くのじゃ! 戦闘だけが魔導の道ではないのじゃ!」

「そうなのー?」

「うむ。コレット。お主も見てきたはずじゃ。アルが開墾や大工仕事に魔法を活用していたのを!」

「そうだった!」


 そして、コレットは俺を見る。


「コレットも、かいこんとかがんばる!」

「おお、がんばるといいぞ」

「えへへー」


 俺はコレットの頭を撫でた。

魔法には色々な使い方があるようです。

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