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263 ステフ対魔王

前話のあらすじ:みんなと試合することになった。


10月15日に二巻がGAノベルから発売になります。

 次の日の朝食後、俺はシギショアラの宮殿に向かう準備をした。

 一応、フェムとモーフィにも、防寒具代わりに馬着を着せる。

 クルスから貰ったものだ。


「極地の宮殿は暖房入ってるから、必要ないかもだがな」

『暑ければ脱げばよいのだ』

「もっも」


 それから俺はシギにも防寒具を着せる。

「念のためだぞ」

「りゃあ」

 ヴィヴィの作ってくれたコートだ。とても可愛らしい。


 それから、準備を終えた弟子たちとティミショアラと一緒に宮殿へと向かう。

 小屋を出たところで、厚着をしたヴィヴィと出会った。外出する気満々である。


「試合をするそうじゃな。とても興味深いのじゃ」

「ヴィヴィも来るか?」

「うむ。ぜひわらわも見せてもらうとするのじゃ」

 そういってついてきた。


 転移魔法陣を通過して、極地のシギショアラの宮殿に到着した。


「シギの宮殿も久しぶりだな」

「りゃあ」

 シギも嬉しいのか、羽をぱたぱたさせながら周囲を飛び回る。


「暖かいな」

『暑いくらいなのだ』

「皆が来るのは知っていたからな。暖房はあらかじめつけておいたのだぞ」


 ティミがどや顔で言う。


「りゃ!」

「シギも暑いか。コート脱ごうな」

「りゃあ」


 シギのコートや、フェム、モーフィの馬着を脱がしてやる。

 ミレットやコレット、ヴィヴィも防寒具をそれぞれ脱いでいた。


「我が主。お待ちしておりました」


 転移魔法陣部屋を出ると、謎の女性が待機していた。

 女性はシギに向かって深々と頭を下げた。

 外見は人族の普通の若い女に見える。だが、全身から魔力があふれていた。

 只者ではないのは間違いない。恐らく古代竜だろう。


「外套は私がお預かりいたしましょう」


 女性はそういって、みんなの脱いだ外套を受け取っていく。

 俺がコートを渡すとき、女性は笑顔で言う。


「アルフレッドラ閣下もお久しぶりでございます」

「…………」


 俺には出会った記憶が全くない。とりあえず笑顔を浮かべて誤魔化す。

 そうしながら一生懸命思い出そうとしていると、ティミが笑った。


「男爵。アルフレッドラ閣下にその姿を見せるのは初めてであろう?」

「失念いたしておりました。閣下には、大公殿下が践祚なされたときにお会いいたしました」


 つまり、シギが大公になった日。挨拶に来た古代竜の一人なのだろう。


「我一人では、色々大変であるからな。数人に交代で宮殿に来てもらっておるのだ」

「そうだったのか」

「はい。アルフレッドラ閣下。私の名はコヴァス。今後ともよろしくお願いいたします」

「よろしくお願いいたします」

「りゃ!」

「もったいないお言葉!」


 シギが一声鳴くと、コヴァス男爵は素早く平伏して地面に頭をつけた。

 シギは、ねぎらいの言葉をかけたのかもしれない。

 俺には全くわからないが、きっとそうなのだろう。


 その様子をみて、ステフはポカーンとしていた。

 ステフにはシギが古代竜の大公であることは言ってある。

 だが、実際に宮殿や古代竜の臣下をみて、驚いたのだろう。


 一方、ティミはすたすたと歩いていく。

「試合する場所はこちらに用意してある。ついて来るがよい」

 宮殿自体が古代竜に合わせて、巨大に作られている。

 宮殿内を移動するだけだというのに、三分ほど歩いた。


「ここである」

 ティミが用意していたのは、だだっ広い部屋だった。

 調度品は全くない。壁と床は不思議な材質で作られている。


「ここならば、多少暴れても問題あるまい」

 そういって、ティミは笑う。


 一方、ヴィヴィは壁と床を真剣な表情で調べていた。

 俺も一緒になって調べる。どのくらい耐えられるか知っておきたいからだ。


「これは複雑な魔法陣じゃな」

「そうであろう。壁自体が、神代より伝わる魔道具のようなものじゃ」

「確かに。魔法で壊すのは容易ではないな」

「そうであろう」


 容易には壊れまい。だが、万一がある。


「だが、壊れなくもないだろう?」

「ふふふ、さすがのアルラでも難しいと思うぞ」

「そうだろうか」

「心配せずともよい。壁自体が魔道具といったであろう? 相当に広い範囲を破壊し、がれきを粉にして海に流すなどしなければ自動で修復される」

「それはすごいな」

「であろう? まあ、そういう機能でもなければ、いくら頑丈でも神代から今まで残るまいよ」


 ティミは笑顔で言った。確かにそういうものかもしれない。形あるものは壊れるのだ。

 修復機能がなければ、風化してしまう。


 確かに、そういうことならば多少壊れても大丈夫だ。全力を出せる。


 俺たちが、会場を調べている間、ティミはシギを抱きながらニコニコしていた。

 楽しみで仕方がないといった表情だ。


「誰からやろうか? まず我とアルラの手合わせからするべきか?」

「いや、そういうのは最後に取っておくべきだな」


 万一、会場が壊れても困る。

 いくら自動で修復されるとはいえ、それなりに時間はかかるに違いないのだから。


「まずはステフ、コレット、ミレットの順で俺と試合だ」

「師匠、了解なのです」

「おっしゃん、わかった」

「緊張しますね」

 弟子たちはそれぞれそんなことを言う。


 ステフの準備運動が終わると試合開始だ。


「いつでもいいぞ」

「胸を借りるのです!」


 ステフは無詠唱かつ連続で火球を飛ばしてきた。

 火球の軌道も不規則だ。

 火球は対人戦においては最も効率がよい。軌道も読まれないほうがいい。

 そう指導したのだ。俺の指導をよく守っている。


「いい感じだぞ。その調子だ」


 俺は一歩も動かずに、火球を防ぎきる。

 防ぐだけでは実戦の訓練としては不十分だ。

 俺は適度に攻撃を挟む。もちろん、ステフがぎりぎり防げるように手加減してだ。


「くぅ!」

 ステフは攻撃から防御に魔法を素早く切り替える。


 そして俺の攻撃がやんだと見るや、ステフは氷の槍を飛ばしてきた。

 氷の槍は弾かれた後、溶ける。地面を濡らすことができる。

 そうなれば、地面を凍らせたり色々と戦略の幅が広がるのだ。


「いい連射速度だ」


 俺はほめながら、氷の槍をあえて自分の近くに弾いていく。

 近くに弾くのは、ステフが次の魔法につなげやすくするためだ。


 弾きながら、適当にこちらも弱い魔力弾をステフに飛ばす。

 攻防は一体の物。同時にできなければ話にならない。

 死角になりがちな場所から攻撃したり、いろいろやった。

 ステフは防御しながらも、攻撃を忘れない。


 ステフは魔法を巧みに組み合わせ効果的に攻撃してくる。

 そうしている間に、部屋の暖かさで氷が溶け、俺の周囲が水浸しになった。


 ステフが叫ぶ。


「炎の矢!」

「おぉっ」


 ステフは矢のように鋭く速い火炎を右手から放った。

 同時に左手で雷撃を放つ。多重展開である。

 言葉で俺の意識を炎の矢に集中させておいてからの雷撃だ。

 それも、俺を直接狙ったものではない。俺の足下、ぬれた地面を狙ったものだ。


 普通の魔導士ならば、対応できまい。


「見事」


 俺はそういうと、雷撃が地面に届く前に、魔法障壁で防いだ。

 その後もステフは色々と試行錯誤して攻撃してくれた。


 俺にその全てを防ぎきられて、魔力が尽きてステフは負けを認めた。

ステフもなかなかやるようです。

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