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262 試合の準備

前話のあらすじ:魔王、弟子を鍛える。


10月15日前後にGAノベルから2巻が刊行されることになりました。

どうぞよろしくお願いいたします。


 一週間、努力を続けたステフを俺は試験することにした。

 その日の訓練の終わり、それをステフに告げる。


「ステフ。明日俺と試合するぞ」

「し、師匠となのですか? 勝てるわけないのです」

「勝たなくてもいい。そもそも俺は本気は出さないから安心しろ。どのくらい強くなったか知りたいだけだ」

「了解したのです」


 それを聞いていた、コレットが俺の腕にぶら下がる。


「いいなー、コレットも試合したいなー」

「別に構わないぞ。ミレットはどうする?」

「じゃあ、せっかくなので、私もお願いします」

「それならば、三人とも今日はもう魔力を使わずゆっくりしておきなさい」

「了解なのです」「りゃ」

「おっしゃん、わかった!」「もっも」

「わかりました」「わふ」


 真面目な顔で弟子たちは返事をした。

 なぜか獣たちも真面目な顔をしている。まるで自分たちまで試合するかのようだ。


 訓練の最中、シギショアラ、モーフィ、フェムはずっとそばに居た。

 そして、見よう見まねで訓練に参加していた。

 弟子たちが魔法体操を始めたら、獣たちも一緒にやっていた。

 弟子たちが魔法発動の練習を始めたら、一緒に魔力弾を撃っていた。

 だから試合したいのかもしれない。


「言っておくが……フェムとモーフィとは試合しないぞ?」

「わふ?」「も?」

 二頭とも「なんで?」と言いたげに首をかしげる。


「だって……」

 とても面倒だからだ。

 フェムもモーフィもとても強い。そんな彼らと俺が試合をすれば地形が変わる。

 手加減すればいいのだろうが、強者相手に手加減するほど、大変なことはない。


 だが、期待に目を輝かせているフェムとモーフィに向けて、面倒だからとは言いにくい。


「今回は弟子たちの修行の成果を調べるためのものだからな」

「わふぅ」「もぅ」

「りゃぁ」

 シギまでがっかりしている。


「シギはまだ赤ちゃんだから、試合とかしなくていいんだぞ」

「りゃっりゃ!」

 赤ちゃんでも戦えると言いたげに、シギは俺の顔をペシペシした。


 その時、ティミショアラが声をかけてくる。


「なんじゃ。シギショアラは試合しないのだな」

「ティミ。いつからいたんだ?」

「割と最初の方からだぞ。シギの魔法体操は可愛いから、見逃したくない」

「それには同意だ」

「りゃあ?」


 弟子たちの真似をして、一生懸命体を動かすシギはとても可愛い。


「シギショアラはまだ赤子ゆえ、試合しなくてもよいと思うが、フェムとモーフィとは試合してやればいいのではないか?」

「も!」

 モーフィがそれを聞いて、嬉しそうに尻尾を振る。

 フェムは無言だ。だが、尻尾がビュンビュン揺れている。


「場所がないしな」

「それならば、極地に来ればよい」

「極地か」

「古代竜に合わせて作ってあるゆえ、試合ぐらいできるであろう」

「なるほど」

「もっも!」

 モーフィは俺のお腹辺りを鼻先でつんつんする。

 余程試合したいと見える。


「じゃあ、明日、フェムとモーフィとも試合しようか」

「わふぅ!」

「もぅもぅ!」

 フェムとモーフィは嬉しそうだ。


「それがよいのだ。我とアルラの試合も、シギショアラに見せたいしのう」

「え?」

「腕がなるのう!」


 ティミは張り切っている。

 そういうことで、俺はステフと試合したあと、ティミと試合することになった。


「まあ、シギの教育のためにも、試合しようか」

「うむ。そうこなくてはな!」

「りゃっりゃ!」

 ティミとシギはとても嬉しそうだ。


 弟子たちが休憩に入ったのを見て、ティミが言う。

「ところで、この一週間、アルラは弟子たちに、どんな特訓をしたのだ?」

「ミレットとコレットはいつも通りだ。だが少し魔法の実践を多めにした」

「ふむ?」

「基礎さえ固めておけば、後でいくらでも応用は効くから基礎ばかり教えてきたのだが……」

「そういうものか?」

「魔法はそういうものだ。とはいえ、実際に一度使ってみておいた方がいいのも確かだからな」

「なるほどのう」


 そういいながら、ティミはシギを抱きかかえて、頭を撫でている。

 シギの教育について考えているに違いない。


「ステフの場合はどうなのだ?」

「ステフはもともと魔導士としていい腕を持っていた」

「そうなのか?」


 ティミは意外そうな顔をする。

 俺やユリーナと比べたら、それは当然未熟だが、魔導士全体としては上の方だ。

 最初の師匠、つまり俺の兄弟子の教育がよかったのだろう。


「だから、ステフはミレットたちとは逆に基礎固めを多めにした。魔力の扱いをよりうまくなってもらわないと、実践的な魔法を教えることも出来ないからな」

「ふむ?」

「あとは、戦闘で魔法を使う場合の基本的な考え方とかだな」

「なるほどのう。そんなに特別なことをしていないのだな?」

「画期的な方法で、あっという間に強くなれるなら、苦労はない」

「それは、もちろんそうであるな。シギショアラ、地道な努力が大切なのだぞ」

「りゃあ?」


 シギは首をかしげる。

 シギはほとんど何も教えていないのに、空を飛び、魔力弾を口から出せる。

 才能に溢れすぎだ。努力しなくても、あっという間に強くなれるだろう。

 とはいえ、慢心しても困る。


「シギは明日、俺の魔法をよく見ておくんだぞ」

「りゃあ!」


 シギは嬉しそうに鳴いた。

シギの教育のためにもがんばらなければなりません。

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