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261 ステフの修行

前話のあらすじ:魔導士ギルドと喧嘩する準備に入った


10月に2巻が発売になります。どうぞよろしくお願いいたします。

この機会にまだ1巻を手に入れられてない方はどうぞ!


 ステフが魔導士ギルドで馬鹿にされた日の夕食後。

 俺はステフを自分の部屋に呼び出した。


「し、師匠。ステフ参りましたのです」


 緊張しているようだ。言葉遣いがなんかおかしい。

 服装もなんかおかしい。冬だというのに、露出が多い。

 寒くないのだろうか。


「まあ、そんなに緊張するな。なにも取って食おうって言うのではない」

「はい、よろしくお願いするのです!」


 相変わらずステフは緊張しているようだった。

 師匠に叱られると思っているのかもしれない。


「ちゃんと、お風呂には入ってきたのですよ」

「お、おう? そうなのか」


 叱られる前に身を清めるということだろう。

 そこまで、緊張しなくてよいと思う。そもそも俺はステフを叱るつもりはない。


 魔法を教えようと思ったのだ。

 獣人魔導士を魔導士ギルドの奴らは馬鹿にした。

 俺がステフを馬鹿にしたやつら全員を叩きのめすのは簡単だ。

 だが、それでは魔導士ギルドの奴らは、獣人魔導士を馬鹿にし続けることになる。


 魔導士ギルドの奴らの考えを改めさせる必要がある。

 それには獣人魔導士であるステフが魔導士ギルドの魔導士に勝つのが一番早い。


「とりあえず、気楽に寛いでいなさい。飲み物でも取ってこよう」

「それは、わ、わたしが……」

「気にするな。ゆっくりしてなさい」

「わ、わかりました。そういうことなのですね」


 どういうことかわからないが、俺は自室からでて台所に向かう。

 そして、コップにお茶を入れて、自室に戻った。

 俺が自室に入ると、ステフはベッドに横たわっていた。

 掛け布団までしっかり被っている。完全に眠る体勢ではないか。


 確かに、俺は寛ぐように言った。だが、さすがに寛ぎすぎではなかろうか。


「ステフ?」

「はい。全て師匠にお任せするのです」

「えっと」

「……初めてなので優しくしてほしいのです」

「なにが?」


 よくわからないことを言っている。


「とりあえず、ベッドから出てくれ」

 そうしないと、訓練ができない。


「えっ?」

 なのに、ステフは驚いたような表情を浮かべた。


「一旦、ベッドから出てくれ。そうしないとはじめられない」

「そ、そういうものなのです?」

「そうだぞ」

 なぜかステフは顔を赤らめる。


「師匠がそうおっしゃるなら……」

 そういって、ステフはベッドからでた。


「ちょ、ちょっと待て!」

「どうしたのです?」

「どうしたのです? じゃない。なぜ全裸なんだ」

「夜伽の務めを果たすには、服を脱ぐ必要があるのです」

「夜伽など果たさなくていい!」

「ですが! 夜寝室に呼び出す、つまりは夜伽なのです」

「まったく違うぞ!」


 俺は服を着るようにいって、部屋を出た。

 本当に驚いた。


 俺の懐の中に入っていたシギショアラが楽しそうに「りゃっりゃ」と鳴いた。

 しばらくしてから部屋に戻ると、ステフは服を着ていた。


「驚いたぞ」

「お見苦しいものをお見せして」

「見苦しいことは全くないが、俺は夜伽を命じたりはしない」


 ステフは顔を真っ赤にしていた。

 そんなステフの顔を、モーフィがべろべろ舐める。


 ちなみに、ずっと部屋の中にフェムとモーフィはいた。

 訓練するから邪魔するなと言っておいたので、部屋の隅の方で大人しくしていたのだ。


 そして、俺は本題に入る。


「ステフには魔導士ギルドの奴らの鼻を明かしてもらわなければならない」

「師匠。つまり、どういうことなのですか?」

「ステフに魔導士ギルドのエリート連中を倒してもらう」


 その理由は、魔導士ギルドの奴らにステフが馬鹿にされて悔しいというだけではない。

 そもそも、魔導士ギルドは獣人を馬鹿にしているのだ。

 精霊王を召喚し使役した獣人がいると言っても信用しないだろう。

 だからこそ、獣人魔導士に関する認識を改めてもらう必要がある。


 それに、今はルカとユリーナも、それぞれ情報収集してくれている。

 だが、その結果が出るにはしばらくかかる。

 それまでの間、ステフを鍛えることは充分にできるだろう。


 だがステフは不安そうに言う。


「そんな、私には難しいのです」

「今の実力なら難しいかもな」


 俺が正直にそういうと、ステフはしょぼんとした。

 耳と尻尾がへたっとなる。


「だが、俺が鍛えたらすぐにできるようになる」

「本当にそんなことが可能なのですか?」

「ちなみに、ミレットとコレットに魔法を教え始めたのは夏の終わりだ」

「姉弟子たちは、それまで独学で学ばれていたのですか?」

「いや、全く魔法を使ったことも学んだこともなかった」

「…………」


 ステフは絶句している。

 ステフはミレットとコレットは魔法の多重展開ができることを知っている。

 だからこそ信じられないのかもしれない。

 魔法の多重展開は一流魔導士でも出来ないものの方が多いぐらいだ。


「本格的な訓練は明日から行うが……。今も室内でできる練習を教えよう」

「…………」

「ステフ?」

「は、はい。失礼したのです。頑張るのです!」


 俺はステフに魔法のコツを教えていく。


「こうなのです? 師匠!」

「そうだぞ! その調子だ!」


 ステフは真面目に訓練する。

 ステフは強い魔導士になりたいと、俺に弟子入りした。

 だから訓練を嫌がらない。教えがいがある。


 もともとステフは基礎ができている。それに筋もいい。

 伸びしろが大きい。


 ステフは、ルカやティミショアラと試合して惨敗した。

 だが、たとえ、一流の魔導士であったとしてもルカやティミ相手には惨敗するだろう。


 ステフの実力は、俺に弟子入りした時点でかなりのものだった。

 少し鍛えるだけで、魔導士ギルドのエリートどもには勝てるようになるだろう。


 俺はステフを一週間みっちり訓練した。

 ミレットやコレットも修行したがったので、一緒に訓練をした。


 一週間後、ステフは飛躍的に魔法の腕を上げていた。

ステフはもともと筋がよかったようです。

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