表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

227/455

226 冬の狩り

前話のあらすじ:狩りに行くことにした。


GAノベルから1巻が絶賛好評発売中です!

 フェムは背中にシギショアラとチェルノボクを乗せて歩いていく。

 少し村から離れたところで、巨大化した。


「りゃっりゃー」

「ぴぎっぴぎ」

 シギとチェルは大喜びだ。


「うわ!」

 初めて巨大化したフェムをみたステフは驚いて腰を抜かした。


「フェムは魔狼王にして魔天狼だからな。こっちが本来の姿だ」

「すごいのです」

「わふ」

 フェムはぶんぶんと尻尾を振っている。


「ステフとコレットはモーフィに乗せてもらうといい」

「もっもー」

 モーフィはステフに鼻を押し付けていた。


 それから、ステフたちはモーフィに乗り、俺はフェムに乗って走り始める。

 ちなみにクルスは自分の足で走っている。


 走りながら、俺はフェムとクルスに声をかける。


「シギも狩りに連れて行ってくれる予定だったんだろ? ありがとうな」

「りゃあ!」


 シギもお礼を言うかのように鳴いた。


『気にしなくてよいのだ』


 シギは狩りとか好きそうだ。

 面倒見のいいフェムのことだ。シギに狩りを教えてくれる予定だったのだろう。


「シギちゃんも狩りしたいもんねー」

「りゃっりゃー」


 クルスは教えるというより、一緒に遊ぶという感覚の方が強そうだ。

 狩りは遊びではないが、やらなければならないことなら楽しんだ方がいい。


「チェルも狩りとか好きなのか?」

『むらにおにくあげるの』

「なるほど。冬だもんな」


 死神教団も今は冬だ。村建設もゆっくりとしか進まない。

 死神教団はまだ牧畜を取り入れてないので、肉が不足しているのだろう。


 しばらく走って、フェムが止まる。

 獲物の痕跡を発見したようだ。周囲の臭いをしきりに嗅いでいる。


「わふ」

「りゃ」


 フェムはシギにも声をかけ、臭いを嗅がせる。

 色々教えているのだろう。


『あっちなのだ』


 そして、フェムはまた走り出した。


「獲物はなに?」

魔猪まちょなのだぞ』

「魔猪か。久しぶりだな」

『冬になって毎日の咆哮も控えているのだ。だから戻ってきているのだぞ』


 冬は農作業がお休みだ。だから魔獣や獣を追い払う必要が夏に比べて少なくなる。

 だから咆哮を使わず、獣たちが近くに来るようにしているらしい。

 そのほうが魔狼の食糧事情的には助かるのだ。


『夏から秋にかけて、追い払い続けているのだ。だからまだ猪の餌が残っているのだぞ』


 冬は猪たちも餌が不足しがちだ。

 だから、狼の脅威にもかかわらず、村の比較的近くまで寄ってくるのだという。


「猪たちも大変なんだなー」

『そうだ。大変なのだぞ』


 フェムと話していて、俺は少し心配になった。


「昨日ティミが鳴いてたけど大丈夫か?」

『あまり大丈夫じゃないのだ』

「そうか。大変だな」


 古代竜の咆哮は周囲の魔獣や獣たちに大きな影響を与える。


『だから、ティミが鳴いたのとは逆方向にいくのだ』


 本気の咆哮ではなかったので、逆に走ればなんとかなるのかもしれない。

 それを聞いていた、クルスがいう。


「暴れ竜とか暴れユニコーンとかが出たらいいんですけどねー」

「それはそれで、面倒だぞ」


 しばらく進むと、またフェムが止まる。


『すぐ近くにいるのだ』

 そう言って伏せる。モーフィも伏せた。

 俺たちも獣たちから降りて伏せる。


『あっちの方にいるのだぞ』

 フェムが鼻で示す方向を見てみると、魔猪がいた。

 立派な魔猪だ。普通の牛ぐらいある。

 かなり距離は離れているが、フェムの狩りの常識ではすぐ近くなのだろう。


「魔法で倒してもいいか? それともフェムが狩る?」

『魔法でよいのだ』


 フェムから許可が出たので、俺は魔法の矢を放つ。

 まっすぐ飛んで眉間に刺さる。すぐに倒れた。


「さすがアルさんですねー」

『見事なのだ』


 クルスとフェムに褒められた。

 その後、魔猪のもとに急いで向かい、必要な処理をする。


 俺が魔法で吊るすと、クルスがテキパキ血抜きなどの作業をしてくれる。


「シギちゃん、ここから血を抜くといいんだよー」

「りゃあ!」

「毛皮も大切だから、慎重に解体するんだよー」

「りゃっりゃ!」「ぴぎぃ」


 シギもチェルも興味深そうにクルスの解体を見ていた。

 一通り解体を終えると、魔法の鞄にしまい込む。


「もっも」

「モーフィどうした?」

『むこうにいる』


 そう言って、俺の袖を咥えてぐいぐい引っ張る。


「向こうにいるって、狩りの獲物が?」

『そう』

「フェムは?」

『確かに変わった臭いはするのだ。でも、何の臭いかわからないのだ。少なくとも猪ではないのだぞ』

「フェムでもわからないのか」


 コレットが、モーフィに尋ねる。


「モーフィちゃんは何がいるのかわかるの?」

『わかんない』

「そっかー」


 クルスはそんなモーフィの頭を撫でる。


「とりあえず行ってみようか。アルさんいいですか?」

「構わないぞ」


 しばらくモーフィを先頭に進んでいく。

 走りながら、俺はモーフィの背にのったステフに声をかける。


「ステフ、どうだ? 寒くないか?」

「大丈夫なのです」


 ステフの尻尾がぶんぶんと揺れた。


「私も地元では狩りをやっていたのです。次は任せて欲しいのです」

「別にいいぞ」

「ありがとうなのです」

「ステフねーちゃん、がんばー」

 コレットもステフを励ましていた。


 しばらく走ると、とても大きな鳥が見えた。馬三頭分ぐらいある。

 クルスが小声で尋ねてくる。


「アルさん、あれは何ですか?」

「ロック鳥だな」

「へー。あれがーそうなんですね」


 クルスも名前は知っているらしい。


「ステフいけるか?」

「いけるのです!」

「じゃあ、頼む」

「お任せください!」


 ステフは力強く返事した。

ステフは狩りに自信があるようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ