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【web版】最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる  作者: えぞぎんぎつね
6章

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188 精神力を鍛える方法

前話のあらすじ:みんなが特訓した


7/15GAノベルから発売になります。よろしくお願いいたします。

 その後、クルスたちも帰ってきて、夕食になる。

 ヴァリミエは、ヴィヴィのことが心配なのだろう。しきりに話しかけている。


「ヴィヴィ、大丈夫かや?」

「大丈夫じゃ」

「無理をするでない」

「無理してないのじゃ」


 ヴィヴィは笑顔を浮かべているが、疲れ切っているのは明らかだ。

 ヴァリミエはティミショアラに言う。


「まずは礼を言おう。わが妹の訓練に付き合っていただいて、感謝するのじゃ」

「気にするでない」

「じゃが……、一体何をしたら、こんなに疲れ切ることになるのじゃ」

「なにも特別なことはしておらぬぞ? 普通のことだけだ」

「その普通のことの内容が知りたいのじゃ」

「内容と言っても、我の咆哮をぶつけているだけじゃぞ?」


 ヴァリミエは顔をひきつらせた。


「な、なんと、古代竜の咆哮をぶつけるじゃと……」

「もちろん、全力ではないがな」

「当たり前じゃ!」


 そして、ヴァリミエはヴィヴィの肩をつかむ。


「本当に大丈夫なのかや? 古代竜の咆哮など、命を落としてもおかしくないのじゃ」

「わらわは大丈夫じゃぞ」

「そうだぞ。全力の咆哮ではないのだ。耐えられるギリギリぐらいを狙っているからな!」

「りゃっりゃ!」


 ティミはどや顔をする。

 俺の懐の中でシギも鳴いている。シギは大丈夫だと言っているのだろう。


 シギは食事中もずっと、俺の懐に入っていた。

 最近では、自分でお皿から食べていたのに、今日は俺の手からご飯を食べたがった。

 きっと、甘えているのだろう。


 一日離れていたのが、よほど寂しかったのかもしれない。


 ヴァリミエは結構強めの口調で言う。


「古代竜の咆哮を何度も浴びる訓練なんて……そんな危険なことさせられないのじゃ」

「わらわは大丈夫じゃ」

「いやだが……」

「それに、わらわがティミに頼んだのじゃぞ」

「……むむぅ」


 悩むヴァリミエに向けて、ティミが言う。


「いや、もう特訓は一段落だぞ」

「そうなのかや?」


 ヴァリミエは少しほっとした様子だ。


「うむ。古代竜の咆哮に耐えられるようになるには、一朝一夕ではいかないからな」

「それはそうじゃろうが……」

「あとは、基礎的な精神力を鍛えねばならないからな。それは咆哮を浴びているだけではな」


 それを聞いていたクルスがうんうんとうなずいていた。


「精神を鍛えるのは大変ですからねー」


 まるで、自分も鍛えたかのように言うので、すごく気になる。

 鍛えるという言葉は、クルスとは対極にあるような言葉だ。


「もしかして、クルスも、鍛えたりしたの?」

「当たり前ですよー。ぼくは修行が大好きですからね!」

「へー。どうやって鍛えたんだ?」


 俺の問いは、みんなも聞きたかったことなのだろう。

 全員の視線がクルスに集まる。


「それは過酷な訓練でした。……まずお風呂をいつもより熱めにします」

「……うん?」

「そして、熱いのを我慢して入り、100を数えるのです。そしたらもう出たくなります。しかし、そこで出てはだめです。さらに100を数えます」


 クルスはどや顔をしている。

 火炎耐性がめちゃくちゃ高いのがクルスだ。熱いお風呂が何だというのだろうか。


「ね?」


 みんなの反応が乏しいからか、クルスが同意を求めるように言う。


「えっと、クルス。どのあたりが過酷なんだ?」

「熱いお風呂とかすぐ出たくなりますからね。そこを我慢すると精神力が鍛えられるのです」

「へ、へー」


 全く参考にもならない特訓だった。

 あきれた様子のルカが尋ねる。


「で、その特訓とやらをした結果、なにか鍛えられたの?」

「えっとね、その特訓のあと、ドラゴンの咆哮とかが全く効かなくなったよー」

「その前は効いていたの?」

「その前は鳥肌立ってたけど、それからは立たなくなった」


 最初から大して効いていないようだ。

 おそらく、風呂の特訓は関係なく、咆哮自体に慣れただけだろう。


「ヴィヴィちゃんも、熱いお風呂に入る修行しよう!」

「い、いや。わらわは……」

「遠慮しないで!」


 ヴィヴィが困っている。


「えっと、クルス。熱いお風呂はあまり体に良くないからやめとこうな」

「わかりました!」


 元気に返事をすると、クルスはヴィヴィに向き直る。


「ごめんね。アルさんに止められちゃったから……熱いお風呂訓練はできないや」

「お、おう。構わないのじゃぞ。まったく構わないのじゃ」

「なにか健康に訓練できるのがあればいいんだけどなー」


 そんなクルスに向けてルカが言う。


「そう簡単に鍛えられるものじゃないわよ」

「そうなのかー」

「過酷な環境にいるから鍛えられるってものでもないし」

「ふむー。難しいんだねー。アルさんはどうやって鍛えたんですか?」


 クルスに尋ねられて、改めて考える。

 特に精神力を鍛えようと思ったことはない。

 だが、精神抵抗は昔に比べてずっと高くなっているのは確かだ。


「冒険者を続けている間に、自然と鍛えられた気がする」

「そんなものですか」

「うむ。魔力を高めるのとは、また別だけど少し似ている気もしなくもないし……」

「アルにもよくわかってないのじゃな」


 ヴィヴィがそういって笑う。


「そうだな。難しい。だが、冒険者の方が一般人より精神抵抗が高いということから考えると……」

「冒険というか、魔獣とかと戦った方が鍛えられるってことじゃな?」

「恐らくな」


 敵と戦うと緊張する。死の恐怖に襲われる。

 戦闘に勝利するには、その緊張と恐怖に耐えて冷静にふるまわなければならない。

 その結果として精神抵抗を成長させるのかもしれない。


 それから、夕食の間中、精神力はどうやったら鍛えられるかという話題で盛り上がった。

 だが、最後まで、結論は出なかった。

精神力を鍛えるのは難しいようです

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