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【web版】最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる  作者: えぞぎんぎつね
6章

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185 ヴィヴィの特訓

前話のあらすじ:ヴィヴィは咆哮耐性を身につけようとしているようです。


7/15にGAノベルから刊行されます。

公式発売日が7/15というだけで、首都圏の書店さまには、12,3日ごろには並ぶかもしれません。

よろしくお願いいたします。


活動報告にイラストが見れる記事のリンクを張っておいたのでそちらもよろしくです。

 気を失ったヴィヴィのもとに俺は駆けよる。

 幸いなことに、漏らしてはいなかった。


「わ、わふ」


 ヴィヴィの気を失わせたフェム自身も心配そうだ。

 モーフィやシギショアラ、チェルノボクたちも心配そうにヴィヴィの周りに集まった。


「ヴィヴィ大丈夫か?」

「……」

「ヴィヴィ!」

「……はっ! 大丈夫じゃ!」


 ヴィヴィは気が付くと、腕を組む。


「やはり、耐え切るのは難しいのじゃ」

「そりゃ魔狼王の咆哮だからな。並みではない。強い冒険者でも大概無理だぞ?」

「……わふ」


 フェムは照れているのか、微妙な鳴き声を上げる。


「じゃが……わらわは魔王軍四天王も務めた身。毎回役立たずになるわけにはいかぬのじゃ」

「そんなこと、気にしなくていいのに」


 毎回のように、咆哮を食らって失神して失禁していることを気にしているらしい。

 気持ちはわからなくもない。だが、今までの敵が強過ぎたのが悪いのだ。


「普通ドラゴンとかめったに、会うもんじゃないし。気にしなくても……」

「何を言うか。今まで何回戦ったと思っているのじゃ」


 そう言われたら、返す言葉もない。


 その時、ティミショアラがやってきた。

 ティミショアラは、ふっと急にいなくなったりするのだ。

 足がしびれるからだろう。

 きっと、素早く遠くに行って竜形態に戻ったりしているに違いない。


「りゃっりゃ!」

「おお、シギショアラ。叔母さんに会えてうれしいか」

「りゃ」

「おお、そうかそうか」


 そういいながらティミはシギを抱き上げる。

 優しい手つきでシギを撫でながら、ティミは言う。


「ふむ。咆哮耐性を鍛えたいのであるな?」

「……そうなのじゃ」

「精神抵抗だからのう。鍛えにくいかもしれぬ」

「そうなのじゃな」


 ヴィヴィが、しょんぼりした。

 それをみて、ティミがヴィヴィの肩に手を置いた。


「うむ。普通はそうじゃ。だが、我がおる。案ずるな」

「え?」

「特訓は厳しいぞ? それでもやるか?」

「やるのじゃ!」


 ヴィヴィの返事を受けてティミは満足そうにうなずいた。

 そして、周囲を見回す。


「そうだな。ここでは難しい。極地に行こう」

「わかったのじゃ」


 ティミは転移魔法陣のある倉庫へと歩いていく。


「今から行くのか? もう夜ご飯だぞ?」


 そろそろ日没だ。日没になれば、クルスたちやヴァリミエたちがやってくる。

 そして夕食だ。


「とりあえず、要点だけでもな」

「そうか」


 ティミについてぞろぞろ向かう。

 倉庫の入り口で、ティミが言う。


「アルラ。そなたは待っているがよい」

「え? なんで?」

「そなたは鍛えなくてもいいだろう。我の咆哮をくらっても何ともないくせに」

「それはそうだけど……、どんなことやるのか気になるし」

「気持ちはわかるが待っているがよい」


 ティミにはっきりと言われた。


「わかったよ、気をつけてな」

「うむ。危ないことはしない」


 そう言って、ティミはシギを抱いたまま、ヴィヴィとモーフィを連れて極地へといった。

 ティミたちが極地に向かった後、フェムが言う。


『ティミの配慮だぞ』

「なにが?」

『ティミの訓練なんて、ヴィヴィは絶対失禁するのだ』

「……かもしれないな」

『だから、ティミはアルにはついて来るなと言ったのだぞ』

「そうだったのか」


 そう言われたら、確かにそうだ。

 フェムに諭されるとは。


『アルがついて行こうとしたときはどんびきしたのだ』


 フェムは呆れた表情でこちらを見つめてくる。

 そんなフェムに俺は言う。


「フェムは行かなくていいのか?」

『フェムは魔狼王だから、古代竜の咆哮ぐらい何ともないのだ』

「へー」


 フェムは、結構ビビっていたと思う。

 特にシギの母ジルニドラの咆哮を食らった時、かなりビビっていた。

 尻尾を股の間に挟んで、吐いていた。


『なんなのだ、その眼は! 何か言いたいことがあるのか』

「いや、別にー」

『ぐぬぬ』


 フェムが古代竜の咆哮を食らってビビっていたのは事実ではある。

 だが、気を失わなかったし、震えながらも戦えていた。


「フェムは立派だと思うぞ」

『いったい何なのだ。嫌味なのか、嫌味なのだな!』

「いや違うよ」


 憤慨しているフェムをとりあえず、撫でてやった。



 ヴィヴィたちが帰ってきたのは二時間後だった。

 すでにクルスたちやヴァリミエも帰宅している。


「もっもー」

「りゃあ」


 モーフィの背に乗せられて、ぐったりした様子のヴィヴィが運ばれてくる。

 ヴィヴィの横にはシギが寄り添って、頭を撫でてやっていた。


 慌てた様子で、ヴィヴィの姉、ヴァリミエが駆けよる。


「ヴィ、ヴィヴィ! 大丈夫なのかや!」

「大丈夫なのじゃ」


 ヴィヴィは引きつった笑顔で返事をする。

 かなり疲れ切っている様子だ。過酷な訓練だったのだろう。

 俺はティミに尋ねる。


「何やったの?」

「秘密だ」

「じゃあ、聞かないけど。大丈夫なんだな?」

「うむ」

「これからも訓練は続けるのか?」

「まだ、しばらくかかるな」


 それを聞いて、ヴァリミエが言う。


「ヴィヴィに無理をさせるでないのじゃ」

「姉上、わらわは無理していないのじゃ」


 ヴィヴィがやる気なら止めるべきではないだろう。


「無理はするなよ?」

「わかってるのじゃ」


 そういって、ヴィヴィは笑った。

ヴィヴィの特訓は続いているようです。

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