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【web版】最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる  作者: えぞぎんぎつね
5章

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166 前死王のアジトに向かおう

前話のあらすじ:前死王の討伐依頼を受諾した


7/15にGAノベルから発売です!よろしくお願いいたします。

 先代の死王の居場所は、教団の屋敷から数時間ほど歩いたところらしい。

 アジトを作り、ゾンビを沢山配備してあるとのことだ。


 それを聞いて、クルスはがさごそと地図を取り出す。


「この地図で言うと、どのあたりかな?」

「えっとですね……」


 司祭は戸惑っている。

 読み方を知らないと、地図は読めないものだ。

 商人や冒険者、軍人など、特殊な職業の者以外地図の知識はあまり必要ない。


「ここが王都でー。ここがムルグ村なんですよー」

「え? ムルグ?」


 クルスは指をさしながら説明するが、司祭は少し戸惑っていた。

 王都はともかくムルグ村は普通知らない。

 クルスの説明の途中で、チェルノボクがぴょんと跳ねて、地図の上に乗る。


『ここだよー』


 体の一部が細長く伸びて、地図の一点を示している。


「チェルちゃん、地図読めるの?」

『よめるんだよー』


 まだ、王都とムルグ村の場所しか説明していないのだ。

 現時点の場所すら説明していない。にもかかわらず、チェルノボクにはわかったのだ。

 元から地図が読めたのだろう。賢いスライムである。


「すごーい」

「もっも!」

「主上、さすがです!」


 チェルノボクはクルスに撫でられ、モーフィに鼻先でつんつんされまくっている。

 照れているのか、ふるふる震えた。


 はしゃいでいるクルスに俺は尋ねる。


「ここはクルス領?」

「そうなりますね。大体この辺りが境界線なんです」


 そういって、クルスは地図の上に指を走らせた。

 俺たちが今いる教団本部も、前死王のアジトも境界線のギリギリ内側だ。


「クルスの領地、変なの多いな」

「えへへ」


 そんなことを話していると、司祭が心配そうな顔になる。


「あの……もしや、この地の御領主さまだったのでしょうか?」

「そうですよー」

「ご挨拶にも伺わず、申し訳ございません」

「気にしないでくださいー」


 クルスは笑顔で続ける。


「後で税の徴収には来ますからねー」

「ははは、お手柔らかに……」


 司祭の顔は引きつっていた。


 その後、俺たちは前死王のアジトに向かうことにした。

 俺たちを見送る司祭が言う。


「私は死王を倒せば、不死殺しの矢の解呪が叶うかもしれないと言って、討伐に参加してもらおうと考えていました」

「ああ、そうだったんですね」


 そういえば、呪いをかけた前魔王は前死王の眷属だった。

 だからチェルノボクには解呪は難しいと言っていた。


「魔王様はそれを持ち出すまでもなく引き受けてくださいました。ありがとうございます」


 司祭に深く頭を下げられた。

 それよりも魔王と呼ばれてしまった。結構恥ずかしい。


「助けられるようだったら、困った人は助けますよ」

「なんと、徳の高い……」

「それより魔王はやめてください。討伐されてしまいます」


 司祭は少し微笑んだ。


「了解いたしました」

「内密ですからね」

「もちろんです」


 俺たちは司祭を置いて出発する。チェルノボクはクルスの懐の中に入って同行だ。

 建物を出ると門番たちから声を掛けられる。


「おお、お前たちもう帰るのか?」

「少し用事を言いつけられてしまいまして」


 門番はクルスを見て、首をかしげる。


「あれ? お嬢ちゃん……」

「どうしました?」

「胸が……いや、なんでもない」


 チェルノボクが入っているため、クルスの胸は豊満に見える。

 めちゃくちゃ怪しい。だが、門番はスルーすることにしたようだ。


「ではいってきますねー」

「気をつけろよ!」


 門番に見送られて、俺たちは出発した。

 屋敷から離れてから、フェムが巨大化する。そして一気に加速した。


 加速するといつものようにシギショアラが懐から顔を出す。


「りゃっりゃー!」

「シギは高速移動が好きなんだな」

『もっと速く走れるのだぞ!』

「りゃ!」


 シギは羽をバタバタさせている。とてもご機嫌だ。

 フェムは誇らしげだ。さらに少し加速した。


 クルスの懐に入っていたチェルノボクも少し体を出している。

 チェルノボクの場合、どこが顔かわからない。


「チェルノボクって目がないけど、見えてるの?」

『みえるー』

「へー」


 見えるらしい。目がない生物の視界がどうなっているのかとても気になる。


「どんな感じに見えるの?」

『ぜんぶがめだよー』

「なるほど。全身が目みたいなものなのか。死角がなさそうでいいな」

「ぴぎ」


 全身が目というのはどういう感じなのだろうか。

 死角がないのは便利だとは思うのだが、落ち着かない気もする。


 そんなことを話しながら、しばらく走ると、嫌な臭いが漂ってきた。

 歩いて数時間の道のりも、フェムたちの足ならばそう長くはかからない。


「臭いな」

「悪臭被害です! 領主として何とかしないといけないです」

「周囲に人里も街道もないのが不幸中の幸いか」

「そもそも、人里があったら、陳情が上がってくるのじゃ」

「それもそうか」

「ピギ」


 チェルノボクはクルスの肩に上って、ブルブルしていた。

 怯えているのか、武者震いなのか。それともまったく別のブルブルなのか。

 スライムの感情表現はよくわからない。


 さらに走ると、腐臭がさらにきつくなる。

 高い壁とグレートドラゴンのゾンビが目に入った。

 壁でアジトを囲み、ドラゴンゾンビを門番として使っているのだ。

 一応防備を考えているということかもしれない。


「アルさん! どうしますか?」


 俺はちらりとフェムとモーフィを見る。

 快調に走ってはいるが、この臭いの中に長くいるのはきつかろう。


「一気に死王まで突破する。進むのに邪魔な奴だけ切り捨てろ」

「了解です!」


 その返答とともに、クルスはさらに加速した。

相変わらずゾンビは臭いがひどいようです

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