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118 ゴーレムで収穫しよう

前話のあらすじ:ゴーレムを作った

 昼食を軽く食べると、ゴーレムを連れて収穫に向かう。


「いっも、いっもー」「りゃっりゃー」

 コレットが元気に歌いながら歩いていく。その後ろをシギショアラが、楽しそうに歩いている。

 さらにその後ろを大きなゴーレムが、ついて行く。


 ――ドシンドシン……

 ゴーレムの大きな足音が響く。


「……少し大きすぎたかな」

「……少しどころではないのじゃ」


 ヴィヴィも少し引きつった表情をしていた。

 俺とヴィヴィが作ったゴーレムは同じくらいの大きさだ。

 身長は人の2倍ぐらい。横幅も2倍だ。となると単純に体積は人の4倍である。

 いや、縦と横幅と厚みを合わせれば8倍になるのだろうか。

 実際には、腕や脚が人の比率より太目だったりするので、8倍どころではない。


 その上ミスリル製なのだ。重さは人間の何十倍だろう。


「収穫向けのゴーレムだもんな」

「……そうなのじゃ」

「小さめに作るべきだったな」

「…………これは防衛むけじゃな」


 防衛向けゴーレムならこのぐらいでいい。重さと強さは密接に関係しているのだ。

 だが、収穫の際には大きさと重さは邪魔になる。畑が荒れてしまう。

 細かい作業に向かない。


「弱くていいから、小さくて、細かく動けるゴーレムを作るべきだな」

「……そうじゃな」

「そもそも、収穫用ゴーレムに強さを求めたのが間違いだったな」

「まったくもってその通りじゃ」


 俺は少し反省した。だが、後悔していなければへこんでもいない。

 だが、ヴィヴィは少しへこんで見える。


「もっも」

 モーフィがヴィヴィに頭をこすりつけている。ヴィヴィがへこんだことを察知したのだろう。

 賢くて優しい牛である。


 俺もヴィヴィを元気づけることにした。

「もし収穫作業に使いづらければ、新しいゴーレム作ればいいだけだ。気にするな」

「そうは言ってものう」

「なにか気になるの?」


 ヴィヴィは真剣な表情で言う。

「ミスリルは高価なのじゃ」

「オリハルコンほどじゃないし、気にするなよ」

「オリハルコンと比べるのが、そもそもおかしいのじゃ」

 ミスリルは高い。だが、俺の財布的には大したことはない。

 オリハルコンならもったいない気もするが、ミスリルならまだまだ在庫はある。


 ヴィヴィは顔をしかめる。

「アル。真面目に考えるのじゃぞ。収穫したイモを全部売ったとしても、ゴーレムの片腕分にもならないのじゃ」

「そ、それはそうかもだが……」


 ぐうの音も出ない正論である。ヴィヴィに諭されてしまった。

 費用対効果を考えるなら、人を雇うよりも材料費が安くないと意味がない。


「でもさ、ヴィヴィ」

「なんじゃ?」

「そういうこと言い始めるなら、そもそも、収穫用ゴーレムをミスリルで作ったことがおかしいのでは?」

「そ、それはそうじゃが……」


 俺もヴィヴィもテンション上がって、コストとか全く度外視だった。

 だが、初めてのゴーレムづくりなのだから仕方がないのではないだろうか。


 そんなことを話しているうちに、畑に到着する。


「せっかく作ったんだ。とりあえず、使えるかどうか試してみよう」

「そうじゃな」


 俺とヴィヴィが命令を入力すると、ゴーレムが収穫を開始する。

 動きは問題ないと思う。初めて一人で作ったとは思えないほど滑らかだ。

 巨大な割に細かい作業もこなしている。


 ――ドスドス

 だが、重すぎる。あぜ道が壊れそうだ。


「やっぱり重すぎるのじゃ」

「じゃあ、重力魔法で軽くするか」

「ミスリルゴーレムは重すぎるのじゃぞ、アルの魔力がもたないのじゃ」


 重力魔法は重いものに魔法をかける方が魔力を消費するのだ。

 ミスリルゴーレムはとても重いので、魔力消費が激しいのは事実である。


「まあ、大丈夫だろ」

 俺は二体のミスリルゴーレムに重力魔法をかけて軽くする。


「これは少し難しいな」

「当たり前なのじゃ」


 ヴィヴィは呆れたように言う。

 単純に軽くすればいいというものではない。

 ゴーレムの動作に支障が出ない程度に、かつ畑を荒らさない程度に軽くするのだ。微調整が難しい。

 軽くしすぎると、収穫の動作に支障が出る。だが軽くしなさ過ぎれば、魔法をかける意味がない。


「ベテラン魔導士の意地!」

 俺は繊細な魔力操作でゴーレムに魔法をかけ続ける。


「りゃっりゃ!!」

 それを見て、シギは嬉しそうに羽をバタバタさせていた。

 俺が頑張っている姿を見せられてよかった。子は親の姿を見て育つのだ。

 シギには俺の頑張ってる姿を見習ってほしいものである。


 俺は魔法をかけながらゴーレムを観察する。

「いい動きだよな」

「わらわのゴーレムも、アルのゴーレムもいい動きなのじゃ」

「動きは互角だな。細かい作業も問題ないし」

「そうじゃな」

「とりあえず、できる限りゴーレムで収穫しよう」

「無理はしたら駄目じゃぞ」

「わかってるって」


 俺は無理しない程度に頑張った。結局、最後までゴーレムで収穫できた。

 イモの収穫が終わるまで二時間だ。

 結構広めの畑である。二時間で終わったのは優秀だと思う。


「疲れた」

 秋だというのに、俺は汗だくになった。

 久しぶりに魔力をかなり消費した気がする。余裕はほとんどない。魔力を使いすぎたかもしれない。

 だが、魔人騒動も終わったし大丈夫だろう。


「信じられないのじゃ」

「そうか?」

「二時間重力魔法をかけ続けるだけでもおかしいのじゃ」

「確かに疲れたぞ」

「しかも二体同時。それもミスリルゴーレムじゃぞ」

「確かにミスリルゴーレムは重かったぞ」


 もう一度、呆れるようにヴィヴィは言う。

「信じられないのじゃ」


 ミレットが俺に冷たい水を持ってきてくれた。

「ミレット、ありがとう」

「アルさん。お疲れ様です」

「おっしゃん、すごい」


 俺はコレットの頭を撫でながら畑を眺める。

 俺たちの畑は綺麗に収穫できた。その向こうには他の畑が広がっている。


「ミスリルゴーレムを使っての収穫は体力が持たないな」

「当たり前なのじゃ」

「軽くて小さいゴーレム作ろうか」

「そうじゃな。軽くて安い金属がいいのじゃ」

「軽い金属は高いんだぞ。……軽くはないけど、安いとなると鉄かな」


 鉄はミスリルより重い。だが小さくすれば大丈夫だろう。

 なにより鉄はミスリルよりずっと安い。


 コストを考えると石が一番だ。だが、ヴィヴィは石で作ろうとは言わない。

 俺も石で作ろうとは思わなかった。石は魔力伝導率が低めで難易度が高いのだ。

 なにより、なんとなく石のゴーレムはワクワクしないのだ。

 鉄もいまいちワクワクしないが、石よりはましである。


 ヴィヴィも同じ気持ちだったようだ。ぽつりとつぶやく。

「鉄は、いまいちワクワクしないのじゃ」

「気持ちはわかる。だがワクワクする金属って、ミスリルとかオリハルコンとかだろ。高いぞ」

「そうじゃな。鉄で手を打つのじゃ」


 だが、魔法の鞄にも倉庫にも鉄の在庫はあまり入っていない。

 俺たちは鉄を買いに行くことにした。

巨大なミスリルゴーレムは収穫には向かないようです。

金属と石(ヴァリミエがよく使っている種類)の関係は、おおまかに


値段

石<鉄<<<<<ミスリル<<<<オリハルコン

魔力伝導率

石<<鉄<<<<ミスリル<<オリハルコン

重さ

鉄>ミスリル>>石>>オリハルコン

ゴーレムの作成難度は

石>>鉄>オリハルコン>>ミスリル

となります。一応ミスリルは初心者向けではあったのです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そこでアルミやチタン…というのはファンタジーでは野暮ですね。
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