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6話 協力者とともに

 日曜日の午前十時半。ここは(てる)の部屋。そこに(たく)は急に輝に呼び出された。瑠里(るり)も加わり話し合っていた。しかし、三人の間には重たく冷たい空気が流れていた。

 それは、卓の『巻き戻されている』日常が輝や瑠里にも起こっていた衝撃な事実もあるのだが、それだけではないようだ。いつもの日常に戻る原因が三人には分かっていないという事にあった。その重たい空気を断ち切ろうと瑠里が輝に視線で合図を送った。

すると、それに答えるかのように輝は首を縦に振った。

「なあ、卓。 原因が分からないけど何か変わった事があれば報告してほしいんだ。俺たちも何か変わった事があれば教える」

 輝の言葉に卓は少しばかり驚いていた。

「それってつまり情報共有だよな? 可能なのか?」

卓の心の中では友人である輝と瑠里が仲間に加わることで、この逆戻りの日常に安心感が出てくる。その一方で本当に信頼していいのか疑心暗鬼になっている。

「そういう事になるよな。問題ないが」

 輝は言い切る前に躊躇った。

「ん?」それに何か察した卓が不思議に思った。

「なんだ、問題あるのか?」

「いや、問題というかなんというか」

 卓は曖昧な言い方をする輝に不快になる。

「卓にメッセージ確かに送ったはずなのに送れてなかったり、俺たちがまだ分からない事もあるんだ。メッセージで連絡は難しいかもな」

「あ、あの時か!」

 輝が言うと、卓は思い出して声を出した。『あの時』とはつい最近、輝からメッセージが届いているか尋ねられた時に確認しても一切送られて来てなかった時だ。

「本当に関係するなら私も送ってみるね。卓、届いてる?」

 瑠里が横入りで卓に訪ねて確認をした。卓はすかさず携帯のメッセージ画面を開くと確認した。しかし、通知もなく届いていなかった。

「届いてないな」卓はこの事実にがっかりしていた。これではどうやって連絡を取ればいいのだろうか。例え身近な友人でも逆戻りの日常の連絡手段は必要だろう。

「本当なんだ。私達は届くのにね。ねえ、輝?」

「そうなんだ。そこが謎なんだ」

 不意に瑠里が不思議に思い、輝のほうを振り向き話しかける。輝は腕を組んで難しい顔をして答えると、卓も難しい顔をした。

 輝と瑠里の間ではメッセージを送ることが可能なのだが、卓との間では送ることが不可能。これが何を意味するのかまだ三人には分からないままだった。

「そういえば、変わった事なんだけどさ。(こう)(まれ)って付き合ってなかったよね? 昨日、出掛けた時に偶然に見掛けたんだけどさ。付き合ってる感じだった」

 突然、思い出したように瑠里が話し出した。

「前からそんなような感じだったから、そう見えただけじゃないのか?」

瑠里の言葉に輝が驚きもせず冷静に話し、問いかけるように言う。

「あ! そういえば、付き合ってたって二人に聞いた。やっぱり付き合ってなかったよな。これって、」

 巻き戻される前から昂と稀を周りから見れば付き合っているように見えた。しかし、二人と仲が良いこの場にいる三人は二人が付き合っていない事を知っている。巻き戻されてからは付き合っていた。

 何か関係する事なのか三人は無言になり始め深く考えた。

「逆戻りに関係するか分からないが、可能性はあるな」

 瑠里がそれに答えるように頷いた。

「あと変わった事はあったか?」

 輝が続けていうと、不意に部屋をノックする音が聞こえた。三人は音がするほうへと目を向ける。

「輝、お昼だよ。呼んだのに聞こえてなかったから。あ、瑠里ちゃんと卓くん、こんにちは。お昼一緒にどう?」

 部屋の扉を開けて一人の女性が入ってきて声を掛けた。

「あ、母さん。今行く」

「お邪魔してます! ぜひご一緒に食べます!」

 どうやら女性は輝の母だったようだ。輝の母の言葉に輝と瑠里はそれぞれ答える。しかし、卓は部屋の掛け時計に視線を移して無言のままだ。

 時計は十二時を過ぎていた。あっという間に一時間半近く話していたんだと悟る。そして、卓は何かを忘れている事に気が付いた。それが何だったかを思い出そうとする。

『それじゃ帰り際に買い物よろしく』

という言葉と一緒にメモを渡された光景が卓の頭に浮かんできた。

(やばい! 美琴(みこと)姉から買い物頼まれてるんだった)

 卓は頼まれている事をやっと思い出す。

「すみません。俺、急用を思い出して行かなきゃ行けないところがあるんです。また今度美味しいご飯食べに行きます」

 卓は立ち上がり誰に向けるでもなく頭を下げる。その姿を見た輝と瑠里が少しばかり微笑んでいた。


 数分後、輝の玄関先で卓の帰りを見送ろうと集まっていた。

「じゃあ、また今度な!」

 輝はやけに元気よく声を出す。その後ろで軽く手を振る瑠里は輝の母に呼ばれて台所へと行ってしまった。

「また今度。気付いた事があれば言うから」

 そう言って卓は輝の家を出ると、もう少し後にでもいい買い物を直ぐにでも済ませたかった気持ちに駆られた。しかし、そんな気持ちとは逆にどこか安心していた。

次話更新予定は8月19日の土曜日です。

今後とも宜しくお願いします。

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