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49話 思い辿る場所と思いも寄らない登場

 数日後、(たく)たちが通っている学校は夏休みに入り、それぞれ夏休みを楽しんでいた、はずだった。ただ一人、卓だけは違った。それは夏休みに入る前、いや、普通ならば夏休みが終わろうとする登校日。その日に学校である事が起きた。あの少女、(ゆう)が同じクラスであった事とその憂が亡くなったのをクラスで知らされたのだ。知らされた卓は未だに受け入れられなかった。


 数日が経った今現在。卓は夏休みに入ると、家でぼんやりと過ごしていた。しかし、ぼんやり過ごすという事も意味が無いように、憂が亡くなったという知らせに納得がいかなかった。ずっと頭がグルグル回るような気分だった。結局、気を紛らわすためにと外に行こうとした、まさにその時だった。

「どこ行くの? 今夜、お通夜に行くんでしょ。それまでに戻ってきなさいよ」

 卓の様子に気付いた美琴(みこと)が不意に卓にそう声を掛けてきた。

「は?」

 卓は美琴の言っている意味が分からず、思わず言葉が口に出てしまった。

「は? じゃないでしょ。憂ちゃんが亡くなって、(たけ)を除いてみんなでお通夜に行こうって決めたじゃない。というか卓が行きたいって言ってたじゃん」

「俺、一言も言ってないはずだけど」

 美琴の言葉に卓は答えると、美琴はぽかんと口を開けて暫く動かなかった。数十秒、美琴は動き出して、卓の元から去ってしまった。

「お母さん、お父さん。卓がおかしい」

 卓はそんな事もお構いなしに玄関の扉を開けて外に出て行ってしまった。それから、卓はどこかに向かうこともなくただただ歩いた。その足が無意識にあの場所へ向かったいた。


 十数分後、卓は足取りを止めた。適当に歩いていたせいか、どこに辿り着いたかも知らなかった。だが、見覚えがある光景がそこにはあった。卓は思考を巡らせて思い出そうとした。数分もしないうちに卓は思い出した。

 あの日、誰かも知らない男性に車に轢かれそうになったのを助けてもらった。そして、(こう)が来てその後は……。

 順番を辿るように思い出していった。にも関わらず、こんな事じゃない、もっと重要な何かを忘れていると頭の隅で何かが引っかかっていた。けれど、何一つ思い出せなかった。ただ一つ確かなのはここで何か起こっていた事だと卓は考えた。

 その後、卓は暫くその場所に留まったが、美琴に言われた事を思い出して家に戻った。それからは、卓は何も考えず成すがままに憂の通夜に行ったのだった。


 翌日、といっても卓にとっては逆戻りしているため、前日。昨日の憂の通夜は状況に頭が追いつかず、ほとんどぼーとしていたせいか記憶が曖昧だった。友人達が居たのは覚えているが、それ以外は覚えていないに等しかった。その日はいつの間にか昼に、夕方に、夜に、というようにあっという間に過ぎていった。

 夏休みだからかもしれないが、卓にとっては何かに引っ張られるような、早くと急かされるようなそんな予感がしたのだ。その予感は当たっていた。それからはというもの、夏休みらしい事は起こらずただ課題というものをひたすらやっていた。

 そんなある日の事だった。憂の通夜といわれる日から十日程経った日の事だった。

 突然、卓の携帯が鳴った。確かめると、友人からの電話だった。

「もしもし。昂?」

 電話は昂からだった。卓は不信になりつつも電話に出た。

「お、卓。今日、何の日か忘れていないだろうな」

 昂は確かめるような言葉を切り出した。何かがあったか確かめるが、直ぐには思い出せない。

「何かあったか?」

 卓は電話越しに考えたが、それでも何も思い出せなかった。

「おい、嘘だろ。みんなで課題終わらせるために集まろうって決めたじゃんか」

 卓の言葉に昂は驚きながら答えた。

「ああ、そうなのか。で、場所は?」

「おいおい、マジかよ。俺の家でだよ。後一時間って約束だろ」

 卓の言葉に昂は益々驚いていた。

「そ、そうだったな」

 昴の言葉を聞いた卓は答えるも、何も心当たりはなかった。取り敢えず、電話を切った後、卓は急いで出掛ける準備をした。主に勉強道具だけの持ち物だったため、準備は直ぐに終えた。

 数十分後、卓は昂の家の前にたどり着いた。直ぐにインターホンを鳴らす。家の扉が開き、昂が卓を待っていたかのように出てきた。

「おう、来たか! もう、みんな来てるぞ!」

 昂が嬉しそうに言う。それから卓は家の中に入り、昂が向かう部屋についていった。

「やっと卓がきたぞ。まあ、待ち合わせ時間より少し早いけど」

「そんなの気にしない、気にしない」

 まだ部屋に入っていない卓の耳にそんな会話が聞こえた。

「おい、なにしてんだよ。早く入れよ」

「みんな、悪い」

 昂は廊下に立っていた卓を急かすと、卓は部屋に入ろうとしたが、申し訳なさそうに頭を下げて謝った。

「大丈夫だって。でも、」

「私、待ってた」

 卓の耳に届いた聞き慣れない声がした。いや、聞いた事はあるが、日常では聞いていない声。顔を上げると、そこには憂が居た。

「ゆ、憂⁉︎」

 居るはずのない憂に卓は驚きを隠せなかった。

作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。

ついに卓の目の前に現れた憂。卓は憂が現れた事に何を思うのだろうか。

そして、普通の日常に…?

✩今回は夏休みに入ったということで8月中旬~下旬です。それといつもより少し長めになってます。

何か気付いた事があればよろしくお願いします。

次話更新予定日は来週6月24日(日)午後の予定です。※予定変更の可能性あります。

良ければご感想、評価、ブックマーク、アドバイスなど頂けると嬉しいです。

では、またの更新を。

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