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4話 何も知らない

「ねえ、(こう)はどう思う?」

「どうって何が?」

瑠里(るり)(てる)の様子。最近、私達に何か隠していると思わない?」

「どうしてそんなこと思うんだ?」

「なんだろう。変でいつもの二人じゃないような、」

「確かに変だったな」

 二日後の月曜日の放課後。いつもなら金曜日だ。だが、一人の人物には今日が月曜日だ。そんな事も知らず、ある二人は会話をしている。

 その場所が昇降口の前の三年生の下駄箱。ほぼ三年の生徒は部活を引退し帰宅しようとする生徒が少なくない。その中で誰の視線も気にすることなく話していた。

「なにが変だって?」

 そこへ(たく)がその話を聞いてやってきた。その人物こそ今日が月曜日を過ごしている人物であった。

 本当は帰るために下駄箱に寄った卓だった。だが、会話にも興味があった。

「最近さ、輝と瑠里が変だって話」

話していた人物はまさに卓の友人の(こう)(まれ)だった。昴は卓の姿を目にすると、答えた。

「確かに」

 卓は納得する。今でもあの時の重たい空気を覚えていた。

「やっぱり、卓もそう思うの?」

「ちょうど二日前の時も二人の空気重かったよな」

「二日前? その日は土曜日で学校が休みで会ってないけど、」

「会ったのか?」

 昂と稀が卓のほうを興味あり気に卓を見て口々にする。

「あっ、違う日だったかな」

 卓はある事を思い出すと、誤魔化そうと苦笑いをした。自分だけが時間が巻き戻されている事を一瞬だけ忘れていた。しかし、二人の言葉に気付かされた。もし、気付かなかったら誤魔化せずにいただろう。

「ふーん。それよりどこ行く?」

「え」

 突然の昴のふとした言葉に卓は驚いた表情になって思わず声に出てしまった。すると、昂と瑠里はお互い見つめあって笑い合っていた。そして、卓を見て笑い続けた。

「え、何? 俺、悪いこと言った?」

「卓が言ったじゃん。私達のお祝いとしてどこかで奢るって」

「そうだっけ? ってお祝いって?」

 卓は二人の『祝い』が過去にあったか、それが何かを考えた。それでも、思い当たる節がなかった。

「あれ、五日前くらいに言ったはずだけどな。俺たち付き合い始めたって」

 昂はそう言うと稀の手を握った。稀は嬉しそうな表情をしている。

「そうなのか。ん、え?」

 突然の言葉に卓の頭の中は混乱する。卓は過去を思い返してみてもいくら二人の仲が良くても今まで付き合っていることは聞いたことがなかった。

「あれ、言ってないんじゃない?」

「確かに言ったはず! だよな、卓?」

 動揺していて一言も話さずいた卓の反応に二人は不思議に思った。

「聞いてないが、まあいい。どこかに行くなら行こう」

 卓は開き直って二人を置いて歩き出し昇降口を出た。

「待てよ!」

 昂は稀の手を引いて卓の後についていった。外へ出ると、後輩達が部活に励む声が聞こえた。その声たちは三人が門を出た校外でも響き渡っていた。


 数分後、卓と昂と稀は駅にある馴染みのファーストフード店に来ていた。ファーストフード店は二階の建物になっており、一階にはカウンターと僅かな席、二階にはテーブルと椅子の席が多くも少なくもない二十ほどあった。

 店にはそれほど多くないが、何人かお客がいた。子供連れやカップル、卓たちのような学生もいた。それぞれがお喋りしながら寛いでいた。久々にきていた卓たちもメニューに迷いつつもカウンターでやっと注文を終えてようやく席についた。

「なあ、本当にここで良かったのか?」

「だって高校生にはここがお財布にも優しいでしょ。仕方なくここを選んだの」

 稀の言葉に卓は苦笑いした。確かにここなら高校生にちょうど良い場所だ。

「それで卓は何か知ってるか?」

「知ってるって何のことだ?」

 突然、昂は真剣な顔で卓に問いかけた。卓の質問に昂ではなく稀が呆れたような溜め息をついた。

「さっきの話。瑠里と輝について!」

 あまりにもの大きな声だったせいか周りのお客が驚き振り向いた。

「知らないな」

「嘘、何か知ってる顔してた!」

「何も知らないってば!」

 稀の言葉に卓も大きな声を出していた。辺りは卓と稀の二人に注目していた。それを見兼ねて昂が二人に割って入った。

「やめろよ。迷惑だろ!」

昂はそう言って稀の腕を掴んだ。

「昂、何するの! 私帰る」

 稀は昂のほうを振り向くと掴まれた昂の手を振り払って立ち上がった。

「落ち着けって」

 稀は昂の言葉を無視して階段のほうへ向かって歩いていく。稀の姿が見えなくなると、昂が立ち上がって卓のほうを向いた。

「卓、こんな場所まで付き合わせて悪い。俺、稀を追いかけるからあとお願いする」

「いいって。俺こそ悪かった」

「本当に悪い」

 それを最後に昂は稀のあとを追った。そして、周りは人がいるも独り残された感覚を覚えた卓。二人の仲を裂いたような罪悪感だけが卓の心に残った。

いかがだったでしょうか?今回は台詞が多く表現にかけたかなと感じた回でした。

感想やレビューお待ちしてます。何かアドバイスがあればそちらもお待ちしてます。

次更新は8月5日の土曜日の予定です。

よろしくお願いします。

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