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41話 大丈夫の言葉

(たく)。もしかして、同じ死に方したかったのか? いや、(ゆう)とは違うか。自ら突っ込もうとするなんて憂が悲しむだろ」

 卓は(こう)の言葉を聞いて最初何を言っているんだろうと思った。しかし、以前に『事故』で亡くなったと知った事を思い出した。

「あ、そういうことか」

 卓は一人で納得していた。

「おい、何がそういうことか。だよ!」

 不意に耳に届いた昂の声に卓は我に返った。昂が心配そうに見ていた事に気付く。

「なんでもない」

 卓は言うが、昂の表情は変わらなかった。それから、卓と昂は学校に向かった。その二人の姿を遠くで誰かが見てるとも知らずに。


 何分か経った頃、卓と昂は無事に学校に辿り着いた。

「じゃあ、何かあったらいつでも言えよ。憂のこと、」

 下駄箱で靴を履き替えた昂が卓に何か言おうとした時だった。

「あ、そうだ! 昂、(てる)たちが、」

 突如、稀が現れて昂の言葉を遮ったかと思うと連れ出した。

「は? え? なぜ、(まれ)がここに居るんだよ」

 余りにも突然過ぎて昂が動揺を見せる。稀が目で合図を送る。その合図に昂はムスッとする。それからとはいうものの昂と稀はその場から居なくなり、卓は独り取り残されてしまった。

「よ、卓。さっきは大丈夫だったか?」

「え?」

 独り取り残されたと思ったのも一瞬の事のようで卓は不意に現れた人物に驚かされた。その人物は輝だった。

「……」

「おい、なんだよ。そんなに驚かなくてもいいだろ」

 卓が驚きと言うべきなのか、無言で固まっていたせいか輝がツッコミをいれた。

「いや、急に現れたから呆気にとられてさ。それにあの一件があっただろ。急に現れて何か企んでるでもしたらさ」

 卓は輝の姿を見て、冷静さを取り戻し答えるように言う。その一方で、まだ少しだけ不信感を抱いていた。なにしろ、輝の彼女の瑠里が関係しているのだから無理もない。

「悪い。安心しろと言っても無理かもしれないが、もう何も企んでいない。さっき車に轢かれそうになっただろ。歩いてたら、偶然見てたんだ。大丈夫だったか?」

 輝は謝ると、安心させるように口にする。卓には輝の表情が以前より柔らかくなっている気がした。『さっき』とは言葉の通り車に轢かれそうになった数分前の出来事だ。それを見ていたのは輝だった。

「あ、大丈夫」

「本当かよ。まあ、いいや。瑠里が待ってるから先行くわ」

 卓の返答に再びツッコミを入れるように言うと、その場から離れていってしまった。

「お、おう。またな」

 卓は輝の背を眺めてハッと我に返り、教室に向かった。教室に着くと、いつも通りの授業を受けた。


 数時間後、お昼休みの前の授業のはずが何か様子がおかしい教室内に卓は難しい顔をする。

「おーい、席につけ!」

 突然、男の担任が教室に入ってきて生徒達に呼び掛けた。

「は? 授業じゃないのかよ」

「教室間違ってますよ!」

「もしかして、自習なんじゃ! やっほーい」

 口々に生徒達が声を出して言った。嬉しそうに言う生徒になぜか卓も顔が綻ぶ。

「おーい、文化祭終わったからって浮かれるなよ。この意味分かるかお前ら」

「えー」

「委員でやればいいじゃん」

「確かに。決定!」

 担任の言葉でまたまた生徒達は口々にするが、なにやら納得していない一同。一方、卓は何のことか分からずポカンとしている。担任が教室中に響き渡るくらいの大きさで生徒達に向けてこう言い放った。

「そんな勝手に決めるな。お前ら喜べ。体育館片付け掃除だ!」

『えー』

 生徒一同は一斉に怠そうな声を上げた。卓は益々訳が分からなくなっていた。不意に卓は瑠里(るり)と目が合った。だが、瑠里はニッコリと笑みを浮かべるだけだ。

 担任と生徒達は体育館へと移動し始めた。卓もその後についていく。生徒達は半ば怠そうな表情をし続けている事に卓は不思議でならなかった。

 体育館に着くと、そこには壇上に向かって椅子が多く並んでいた。

「よし、早く終わらせるぞ!」

 担任が合図をするように声を掛けると、卓の周りにいる生徒達は椅子を片付け始めた。卓は唖然とした。さっきまで怠そうにしていたクラスメイト達がテキパキと動いているからだ。恐らく、早く終わらせたいのだろうが、卓にとっては不思議でならなかった。そこへ瑠里が近付いてきた。

「卓、文化祭の片付けだよ。実は振り替え休日の前に二日間文化祭だったんだよ」

 瑠里は卓に向けて笑顔でそう言った。卓は過去を思い出そうと頭を巡らせた。その時だった。

「痛っ」

 突如、頭痛が卓を襲った。不意の痛みに思わず声が出て頭を抱えた。

「大丈夫?」

 卓の様子に気付いた瑠里が心配そうにしていた。

「大丈夫」

 卓は苦笑い気味に答えて生徒達と同様に椅子を片付け始めた。今朝の夢の出来事を頭の隅に残しながら。

作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。

卓が車で轢かれそうになったあとの学校では文化祭の片付けが待っていた。そして、来週文化祭が。

次話更新予定日は来週4月28日(土)お昼の予定です。※予定変更の可能性あります。

良ければご感想、評価、ブックマーク、アドバイスなど頂けると嬉しいです。

では、またの更新を。

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