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40話 夢と危険察知

 あれから、何週間経っただろうか。いや、実際にはそんなに経っていなかった。十一月の終わり頃、約一ヶ月後だった。(たく)は同じクラスの内海(うつみ)とはまちまちだった。お互い挨拶程度はするもののあまり深く関わっていない。卓の覚えている過去でもそうだった。戻る前と同じ距離感。あの時の事を内海に聞いてみたが、惚けているのだろうか、それともすっかり記憶が無くなっているのか。はたまた何か訳があるのだろうか。内海は知らないと言った。なぜ、そんな事になっているのか卓は分からなかったが、どうしてかそうなったのかを考える事が少なくなかった。

 一方、(てる)瑠里(るり)との距離はというと、全くなくなったといえばそうでもなかった。卓はあの後の数日間は輝と瑠里には会わなかった。避けられていたが正しいのだろうか。

 二人の気持ちの整理がついた後に今後のことを聞いてみた。それからはというもの普通に話が出来ていた。

「く、たく! 卓、聞いてるのか!」

 突如、卓の耳に届いた大きな声とともに卓は頭を叩かれる。

「痛っ!」

 卓は声を上げ、叩かれた頭を摩った。

「ちょっと叩かなくてもいいんじゃない?」

「いや、大事なことを聞いていないのが悪い」

「だからって、」

 そんな会話の横で卓はまだ頭を摩っていた。相当、力が強かったらしい。

「卓、聞いてるのか? 俺たちにとって、これで最後の話し合いになるかもしれないんだ。ちゃんと聞け」

「は、最後? なに言ってるんだよ」

 卓は輝の言葉の意味が分からなかった。

「輝の言ってることは本当だよ」

 瑠里が代わりに答えるかのように口にする。どうやら、話を察するに卓は輝と瑠里と話をしていたようだ。だが、卓はぼーとしていたようで、やっと振り向いた時には二人が真剣な表情をしていた。

「な、なんだよ。そんなに重要なことなのか?」

 卓は二人の真剣な顔に戸惑いつつ質問をした。

「ああ、あの日に言っただろ」

 輝は卓の質問に相槌をする。あの日とは輝と瑠里が卓の家に行った日だ。その日は先に内海も卓の家にいた。

「まさか。まだ先だろ?」

 卓は輝の言葉に何かを察し確かめるように問い掛ける。しかし、輝と瑠里は卓の少しの期待を裏切るような表情をし首を横に振る。その表情を見て卓は肩を落とした。

「まあ、なんとかなるだろ」

「そうだよ。決まった、わけじゃないんだし、」

 後から付け足すように二人はフォローするが、苦笑い気味だったせいか、卓は信じることが出来なかった。

そのあと三人は真剣に話し合いをし、一先ずといったところだろう、いつもより長い時間で今後について話を終えた。


 翌日から卓はいつも通り学校に行き、逆戻りの時間の慣れた頃とほぼ変わらない日が何日か経った。ただ『(ゆう)』については少しずつ思い出しているが、ほぼ記憶がないままだ。思い出そうともするも何も思い出せなかった。無理に思い出そうとすれば、また頭痛が襲ってくるかもしれないと卓は頭の片隅で思っていた。

 そんな中、タイミング悪くそれは襲ってきた。それは卓がいつものように眠りについた時だった。卓はある夢を見た。

『おはよう。いよいよ明日だよ』

『そうだな』

『一緒に回ろうね』

 少しの間だったが、卓が少女と楽しそうに会話をしている夢だった。

 次の日、卓は朝起きると見た夢を思い出す。そんな事をせずとも頭の中で映像が浮かぶほどにはっきりと覚えていた。そして、朝食を済ませ学校に行く。いつもと同じ。しかし、それはいつもと違っていた。卓はぼーとしたままの状態で学校に向かっていた。それが悪かった。

「危ない!」

 突然、卓は誰かに腕を掴まれ後ろに引っ張られた。次の瞬間、目の前で車が通り過ぎていった。卓は我に返ると、視界には赤信号が映っていた。ちょうど手前で危機一髪だった。ぼーとしていた事により気付かなかったのだろう。引っ張られていなければ、今頃どうなっていたのか容易に想像出来る。

「君、大丈夫か?」

 卓は声のするほうへと振り向く。三十代くらいだろうか、男が心配しているような顔を向けていた。

「は、はい。ありがとうございます」

卓は咄嗟に答えて御礼の言葉を口にした。そこへ(こう)が駆けつけてやってきた。

「卓、なにやってるんだよ! 急に飛び出そうとして。びっくりしたぞ!」

 どうやら今の状況を見ていたのだろうか、駆けつけると叱責を浴びせている。

「君、この子の友達かい?」

 男は昂を見るや否や問い掛ける。

「はい!」

「そうか。なら、よかった。危険だから一緒についていってくれないか? あ、もうこんな時間だ。じゃあよろしく頼むよ」

 昂が答えると、男は安心した顔を浮かべて更に問い掛けた。その後、返事も聞かずに直ぐその場を去ってしまった。

「卓。もしかして、同じ死に方したかったのか? いや、憂とは違うか。自ら突っ込もうとするなんて憂が悲しむだろ」

 昂は男の人が立ち去ると卓に向かって悲しそうに言った。この時、卓はその言葉の意味が理解出来なかった。

作者のはなさきです。ここまで読んでくださりありがとうございます。

最後の話し合いの意味とは…?そして、また始まった記憶が呼び起こされる夢で卓は…

次話更新予定日は来週4月21日(土)お昼の予定です。※予定変更の可能性あります。

良ければご感想、評価、ブックマーク、アドバイスなど頂けると嬉しいです。

では、またの更新を。

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