3話 再確認
翌日、午前七時過ぎ。卓は目覚ましの音で目が覚めると目を擦りながらも真っ先に携帯画面を見た。そこに映っていたのは予想していなかったものだった。
『九月×日の水曜日』卓は一瞬目を疑った。しかし、昨日の異変から間違いではなく確信のものに変わった。-時間が巻き戻されている、と。
卓は起き上がると朝ご飯を食べる為に階段を降りて一階のリビングへと向かった。リビングにつくとそこにはテレビを観ているある人物の背中が卓の視線に入った。
「あ、卓か。おはよう。学校頑張れ」
ある人物は近付いてくる足音で卓のほうを振り向いた。
「父さんがいるって事は今日ってやっぱり水曜日?」
「何を言ってるんだ? 水曜日だけど、大丈夫か?」
どうやら、ある人物とは卓の父である充だったようだ。それよりも卓は自分の部屋で携帯画面で曜日を確認したにも関わらず再確認するように聞いた。
「おい、大丈夫か? 学校休むか?」
「あ、大丈夫。母さんは?」
黙っていた卓に心配の眼差しで問いかける充。その問い掛けに卓は答えると母が居るか質問する。
「まだ、病院だが。昨日休みだったはずだけどな」
充は卓の質問に頭を掻きながら苦笑いして答えた。充が言う『昨日』というのは火曜日のことだ。
「あ、そっか。ごめん」
卓は充の言葉にある事を思い出した。卓の父と母は病院で共に働いている。父は医者、母は看護師。母は火曜日、父は水曜日が休みのことが多い。だからか卓は今日が休みの父と会ったわけだ。
時間が逆戻りだということに頭が混乱する卓は再確認するかように問いかけたのだった。
「本当に大丈夫か? 無理なら休んでもいいんだぞ」
「大丈夫だってば!」
充の心配に卓は少しばかり不機嫌になりつつ学校に行く準備をして家を後にした。
卓が学校につき教室に入ろうとすると、珍しく卓の席に輝が座っていて、ちょうど卓の前の席が昂だったこともあり輝は昂と話をしていた。いつもならこの時間、輝は同じクラスの瑠里と一緒にいるはずだった。
「おはよう」
卓がそう言うと、輝と昂は卓に気付いた。
「おはよう、卓!」
「随分、ギリギリだな」
昴と輝がそれぞれ口にする。
「輝がいるなんて珍しいな」
卓は持ってきていた教科書を鞄から机の中に入れながら言った。
「それが卓に聞きたいことがあるんだと」
昂が輝の代わりに説明するように言った。
「?」
頭にハテナマークを浮かべる卓。
「卓、昨日の夜メッセージ送ったんだけど見たか?」
「いや、きてないけど」
「そうか」
卓の言葉を聞いて何故か曇った表情をした輝が卓には理解が出来なかった。そこで予鈴が鳴った。それを聞いた輝が立ち上がり、自分の教室へ向かう為去ろうする。
「ごめん、あとでもう一度メッセージ確認してみる」
去ろうとする輝の後ろ姿に卓が言葉を口にする。すると、輝は振り返って「よろしく」と言った。
教室の辺りを見渡せば、別クラスの人達もそれぞれの教室へ、同クラスの人達は自分の席にそれぞれつき始めた。あっという間に朝のホームルームが終わり長い授業の時間が始まったのだった。
数時間後の事だった。
「やっぱり、メッセージ届いてなかったけど」
「そうか、送ったと思ったんだけどな」
昼休みにいつものように休憩室に集まっていた卓とその友人たち合わせた計五人。あの後、卓は携帯画面を開いてはメッセージを確認した。輝からのメッセージは届いてなかった。その事を報告していた卓。
「待って。それ、そんなに重要な事なの?」
「それもそうだな。メッセージを送ろうとしていた事なんて今言えばことじゃないか?」
話を聞いていた稀と昂が疑問に思った事を口にする。
「それともなにか言えない事だったりして」
稀が続けて言った。
「…………」
その瞬間、空気は凍りついた。その原因は、休憩室に来てから輝が黙っていたからだ。それに隣にいる瑠里も顔を俯かせ元気が無さそうな表情だったのもある。
「輝と瑠里元気無いな。何かあったか?」
凍りついた空気を何も無かったように卓が輝に向かって問い掛ける。
「いや、何でもない」
輝は立ち上がって休憩室を後にしようとする。
「待って! 私も行く」
立ち上がって輝の後についていったのは瑠里だった。その他の皆はその場に残った。ただ、卓の頭には輝の言葉や行動にどこか引っかかっていた。
昨日の更新だったのが遅れてしまいました。
なるべく予定日には更新出来るようにします。
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